業者の底地買取価格が相続税で時価と認められなかった事例

提供:税理士法人タクトコンサルティング 株式会社タクトコンサルティング 2013年7月8日

1.はじめに

底地を保有する地主さんにとって気になる事例が出てきました。相続直後に底地を買取業者に売却した時の金額が、相続税を計算するうえで時価になるのかどうかを巡って審査請求で争われた事例で、国税不服審判所(以下審判所という)は平成24年11月21日、時価と認めない裁決を下していたというのです。

2.事案の経過

納税者兄弟のXさんとYさんは、およそ600m2の底地7筆(A底地)とやはり600m2ほどの6筆(B底地)を各々相続しました。この相続では当初、国税庁が決めている財産評価基本通達(以下通達という。)に基づいて申告していました。兄弟は、相続の後、底地をまとめて更地価格の12%程度で専門の底地買取業者(本件業者)に買ってもらうことにしたうえ、この売却価格が相続税の計算上、底地の「時価」になると考え、平成23年1月、税務署に対し底地の評価額を引下げてもらおうと「更正の請求」をしました。しかし税務署に認められず兄弟らは最終的に平成23年12月に審判所に「審査請求」をしたものです。なお、審判所の審理が進む中、平成24年1月までに本件業者は3物件を除く底地を借地権者に譲渡したり借地権と一部交換したりしていました。

争点はA底地とB底地の相続税評価について、通達によらないことが正当と認められる特別の事情があるか否か、でした。

3.兄弟の主張

兄弟は本件業者の買取証明書のほか、別の買取業者2社からもらっていた底地の査定金額の書面(業者Cによる査定額=A底地2570万円、B底地2620万円)や、買付証明書(業者Dによる買付金額=A底地、B底地とも2800万円)を審判所に提出しました。さらに鑑定評価書も提出しました。そして概ね次のような主張をしました。

・売却価格が時価であるかどうかは、1.ほかの売買事例との比較2.不動産鑑定士等の精通者からの意見聴取によって課税実務上判断することになるが、本件においては売却価格が時価であることを査定書等や鑑定評価書により証明している。通達によらないことが正当と認められる特別の事情がある。

・本件A、B底地と同地区内の底地の取引事例は買取業者から借地権者へ転売したものについては、その売買価額は相続税法22条及び基本通達1(2)の時価とは異なる限定価格であり、そもそも取引事例として採用すべきではないから鑑定評価書でこれらの事例を採用しなかったのは合理的である。

4.審判所の判断

審判所はまず、時価について「当該財産を取得した時において、(中略)不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち客観的な交換価値をいうものと解される」と大原則を確認。その上で審判所は実務上、国税庁が決めた通達で画一的に評価することにしているのは「課税の適正や納税者間の公平を図ることが合理的」だからと通達の立ち位置を認めています。

また、底地価額が通達で借地権価額控除方式により評価されている理由について、審判所は「底地価額は単なる地代徴収権の価額にとどまらず(中略)借地権を併合して完全所有権とする潜在的価値に着目して価額形成されているのが一般的であると認められる」からだとしました。もっとも審判所は通達によらないことが正当と認められる特別の事情がある場合には、評価においては必ずしも通達に縛られないことを示しています。

事例に即した「あてはめ」では、審判所は底地の本件業者による「借地権者への売却又は交換によって概ね完全所有権とすることが実現している」こと、実際その底地売買でも通達に基づき底地割合の基準を30%とされている点を指摘、底地の評価を通達の「借地権価額控除方式により評価することとした趣旨が妥当する」として特別の事情は認められないと判断しています。鑑定評価書については、審判所は要旨「不動産業者が利潤を確保するために取引価格は仕入価格となり借地権者が底地を取得する場合の価格より低くなる。鑑定価格はA、B底地をまとめて売るという売却方法における価額を求めたものに過ぎない」から「時価を証明するものと認めることもできない」と納税者の主張を退けています。

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