株式会社が役員の死亡退職金を不動産で給付した場合の税務上の留意点

提供:税理士法人タクトコンサルティング 株式会社タクトコンサルティング 2014年9月1日

1.はじめに

株式会社の役員が在職中に死亡した場合に、会社からその役員の遺族に対し、死亡退職金を支給することがあります。死亡退職金は金銭での支給が一般的ですが、会社の資金繰りの問題で金銭の代わりに不動産等の現物資産が給付される場合があります。この場合においては、消費税、不動産取得税、登録免許税といった金銭による退職金支給の際とは異なる課税がされますので、注意が必要です。

今回は事例に基づき、役員の死亡退職金を金銭に代えて、その役員用の社宅(社宅建物とその敷地)を支給した場合における、退職金を支給した会社側と、受給した役員の相続人側の税務上の取扱いについて整理します。

2.事例に基づく税務上の取扱いの整理

≪事例≫

【問】株式会社R(以下、「R社」といいます。)の代表取締役甲が死亡し、R社は甲死亡の直後の定時株主総会において、甲に対する死亡退職金1億円の支給を決議しました。R社が相続人の了承を得て、甲が社宅として使用していた自社所有の土地と建物(簿価6,000万円・時価1億円)を退職金代わりに引き渡した場合、R社と甲の相続人には、どのような課税が行われるのでしょうか。

【回答】

(1)役員社宅を退職金として給付したR社の税務

1.法人税の取扱い

法人が役員に支給する退職金のうち適正な額までの部分は、原則として、その株主総会の決議等により退職金額が具体的に確定した日の属する事業年度の法人税の計算上、損金の額に算入されます(法人税法34条2項)。なお、R社がその役員社宅を死亡退職金の代わりに甲の相続人に引渡すのは、退職金債務の履行のため役員社宅を譲渡することになり、譲渡益4,000万円(1億円-6,000万円)が生じます。

ただし、退職金の額1億円が不相当に高額でなければ、譲渡益4,000万円は退職金の一部と相殺されることになります。

<R社の税務上の仕訳>

退職金1億円 土地建物(社宅) 6,000万円
譲渡益 4,000万円

2.消費税(地方消費税を含む)の課税

R社が甲の退職金債務の弁済のために甲の相続人に役員社宅を引き渡すことは、R社の消費税の計算上、資産の譲渡等に該当します(消費税法2条1項8号)。このため、役員社宅のうち建物部分に係る譲渡については、消費税の課税対象とされます。

例えば、R社が消費税の課税事業者であり、その役員社宅の建物部分の時価が5,000万円(税抜価格)である場合において、平成26年9月1日に甲の相続人に死亡退職金として役員社宅を給付したときは、5,000万円×8%=400万円の消費税がかかることになります。また、敷地部分に係る譲渡については、非課税売上として、R社の仕入税額控除に係る課税売上割合の計算に影響することになります。

(2)役員社宅の給付を受けた甲の相続人の税務

1.相続税の課税

被相続人甲の死亡により、その死亡後3年以内に支給が確定した退職金を相続人が受取る場合、その退職金は相続財産とみなされ甲に係る相続税の課税対象となります(相続税法3条1項2号)。ただし、原則として、全ての相続人が取得した退職金を合計した額が非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下の場合、相続税は課税されません(相続税法12条1項6号)。

2.役員社宅の取得に伴う不動産取得税・登録免許税の課税

甲の相続人は、R社から不動産を取得することになるので、不動産取得税(地方税法73条の2)や登録免許税(登録免許税法2条・別表一)の納税が必要となります。

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