小規模宅地の評価減『特定事業用宅地等』

提供:税理士法人タクトコンサルティング 株式会社タクトコンサルティング 2014年11月4日

1.特定事業用宅地等

 小規模宅地等の評価減の特例の対象となる宅地等はその宅地等の用途により「特定事業用宅地等」「特定居住用宅地等」「貸付事業用宅地等」等に分かれ、それぞれ適用上限面積と減額割合が定められています。

 このうち「特定事業用宅地等」とは、被相続人等の事業(不動産貸付業等を除く。以下同じ。)の用に供されていた宅地等で、相続又は遺贈によりその宅地等を取得した親族がその事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き保有し、事業を継続していた場合が該当します。

 では事業を引き継いだものの相続税の申告期限までに転業していたらどうなるでしょうか。

2.被相続人の事業の用に供されていた宅地

<ケース1>被相続人甲が飲食業を営んでいた宅地を相続人Aが相続し事業を引き継ぎましたが、相続税の申告期限前に飲食業を全部廃業して小売業に転業しました。

 その宅地等が被相続人の事業の用に供されていた宅地等である場合の特定事業用宅地等の要件は、宅地等を相続又は遺贈で取得した親族が(1)相続開始時から相続税の申告期限までにその宅地等の上で営まれていた「被相続人の事業を引き継ぎ」、かつ、相続税の申告期限まで引き続き「その事業を営んでいる」こと、(2)相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有していること、です。

 ケース1の場合、甲の営んでいた事業(飲食業)は継続されていないので(1)の要件を満たさないこととなり、特定事業用宅地等に該当しないため小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けることはできません。

3.生計一親族の事業の用に供されていた宅地

<ケース2>被相続人甲の所有する宅地で、甲と生計を一にする相続人Bが飲食業を営んでいました。この宅地をBが相続しましたが、相続税の申告期限前に飲食業を全部廃業して小売業に転業しました。

 被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた宅地等である場合の特定事業用宅地等の要件は、宅地等を相続又は遺贈で取得したその親族が(1)相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を「自己の事業の用に供している」こと、(2)相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有していること、です。

 ケース2の場合、Bは甲の生前中から営んでいた事業(飲食業)は廃業しましたが、新たな自己の事業として小売業を営んでいます。「自己の事業の用に供している」という(1)の要件(及び(2)の要件)を満たしているので、特定事業用宅地等に該当し小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けることができます。

4.「事業継続要件」

 特定事業用宅地等には2種類あります。1つは被相続人が事業を営んでいた宅地等、もう一つが被相続人と生計を一にしていた親族が事業を営んでいた宅地等です。

 被相続人が事業を営んでいた宅地等の場合は、被相続人の事業を全部廃業又は全部転業してしまうと引き続き「被相続人の事業」を営んでいないことから特定事業用宅地等に該当しないことになります。

 一方、被相続人と生計を一にする親族が事業を営んでいた宅地等の場合は申告期限まで引き続きその親族の「自己の事業」の用に供していればよく、相続開始前に行なっていた事業と同一の事業を引き続き行うことは要件とされていません。

 特定事業用宅地等に該当すれば、400m2まで80%の評価減を受けることができるので注意が必要です。
(租税特別措置法69条の4第3項1号)

5.複数の事業のうち、一部を廃業等した場合

なお、被相続人が営んでいた事業の一部を他の事業に転業した場合や、被相続人が複数の事業を営んでいた場合において、そのうちの一部の事業を廃止又は転業した場合には次のように取り扱われます。

 (1)相続税の申告期限までにその宅地等を相続又は遺贈で取得した親族がその宅地等の上で営まれていた被相続人の事業の一部を他の事業に転業している時であっても、被相続人の事業を営んでいるものとして取り扱う。

 (2)その宅地等が被相続人の営む2以上の事業の用に供されていた場合において、その宅地等を相続又は遺贈で取得した親族が相続税の申告期限までにそれらの事業の一部を廃止した場合には、その廃止に係る事業以外の事業の用に供されていたその宅地等部分はその他の要件を満たす限り特定事業用宅地等に当たるものとする。(租税特別措置法通達69の4-16)

事業用不動産に関する
ご相談・お問合せ

お電話から

野村不動産ソリューションズ
法人営業本部
03-3348-8114
営業時間:
9時~17時40分(定休日:土日祝日)
[an error occurred while processing this directive]
  1. 投資用・事業用不動産サイト「ノムコム・プロ」
  2. コラム・レポート
  3. 最新の税務レポート
  4. 小規模宅地の評価減『特定事業用宅地等』