相続税は、相続人のその後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
換金性の低い財産であっても課税対象になるので、「遺してくれた預貯金を上回る税額」となることは珍しくありません。また、税率が累進的ですので、多くの資産を持つ方の場合、税額が億単位になることもあります。遺産分割で現金を渡さなければならない場合は、必要な現金はさらに多くなります。
平成27年より、「相続税の基礎控除の縮小」「最高税率の引き上げ」といった改正が行われました。これにより、従来は相続税がかからなかった人が課税対象になったり、資産家の方の負担すべき税額がさらに増したりします。相続税対策は、今後ますます重要性が高まります。
現金等が1億円しかないのに、税金が3億8,500万円かかってきます。
また、子供のうち2人に法定相続分3億4,000万円を現金で用意することになると、6億8,000万円が必要です。
税金と合わせると10億円を超え、土地すべてを失うことにもなりかねません。
相続税の計算における価格(相続税評価額)は、利用形態によって変わってきますので、人為的に引き下げることも可能です。
例えばマンションを建てることで、評価額はおよそ2割下がります。
相続税の納税は現金で一括して行うのが原則ですので、多額の現金が必要になります。
しかも「10ヵ月以内」の申告期限がありますので、早い段階で現金を用意しなければなりません。
多くの場合、土地の売却で対応しますが、思ったほど価格がつかない、申告期限までに買い手が見つからない、といったこともありえます。
納税資金をあらかじめ用意しておくというのも、重要な対策となります。
親がせっかく残してくれた財産をめぐり、兄弟間の関係が悪化するのは非常に不幸なことです。
遺産分割協議がまとまらない場合、土地を「共有」するケースが見られますが、将来、売却等を行う際、全員の合意が必要になり、トラブルのもとになりかねません。
あらかじめ「分割しやすい形にする」といった対策も必要になることがあります。
配偶者が遺産を相続した場合、相続額が1億6千万円までであれば配偶者に相続税はかかりません。仮に1億6千万円を超えても、法定相続分(全財産の半分)までであればやはり税金はかかりません。
したがって、配偶者の相続分を大きくした方が、全体での相続税額も少なくなります。
しかし、配偶者の相続分が大きいということは、配偶者が亡くなったときの相続税額も大きくなるということです。配偶者が亡くなったときの相続を「二次相続」と言いますが、二次相続まで考慮して遺産分割するのが賢明な方法と言えます。
活用がうまくいって、収益が順調にあがるようになると、資金が蓄積されていきます。
ただし蓄積された資金も相続財産になります。したがって、相続税額は活用前より増えることもあります。
そのため、「収益性が高いと相続対策としての意味がない」「相続発生時に借入がたくさん残っているほうがいい」というような論調が見受けられます。
しかし、収益性が低い物件を残された家族はどうなるのでしょうか。借入をして建物を建てたような場合、その返済に家族が苦労することになります。
これでは、「国に払うお金(相続税)が減った代わりに民間(銀行)に払うお金ができてしまった」だけで、全く意味がありません。
活用が成功した場合、相続税額は増えても「納税資金の確保」が達成され、その後もご家族の安定収入につながる「優良資産」として機能します。相続対策とは言っても、税額を減らす(増やさない)ことにとらわれてはいけません。