「その情報発信、意味ないです!」よくある企業のSDGsページをSDGs専門家が指摘!

SDGsへの取り組みによって企業価値が向上するという情報をさまざまな場所で目にするようになりました。そのため、自社WebサイトでSDGs関連のページを作って、世間にPRすることで、企業価値の向上を目指す企業が増えています。
しかし、情報発信をしたものの実際に企業価値の向上を実感している企業は、残念ながらほとんどないでしょう。なぜなら、多くの企業のSDGs発信にはある落とし穴が存在し、それによってステークホルダーからの共感が十分に得られていないからです。
今回は、SDGs時代だからこそ企業に求められる効果的な情報発信のあり方を紹介します。

Ⅰ.効果の薄いSDGsページの特徴

筆者はSDGsコンサルタントという仕事柄、これまで多くの企業のSDGs関連のページを見てきました。そのため、それらのページをぱっと見ただけで、その企業のSDGsへの取り組み度合いをおおまかに把握することができます。

実際にそれらのページから読み取った情報をもとに、その企業の担当者に取り組み状況をヒアリングしても、予想と実情が大きく外れることは少なくありません。SDGsページのデザインにこだわって綺麗に作ったとしても、見る人が見れば本質的にSDGs推進を実行しているかどうかは、わかってしまうのです。

ここでは、筆者が避けるべきだと考えるSDGs関連のページの特徴を3点お伝えします。

①カラフル過ぎるSDGsページ

SDGsの取り組みをPRするために、ページのさまざまな箇所にSDGsロゴを掲載する企業があります。ここ最近、サステナビリティ経営に取り組みを開始した企業のWebサイトによく見られる傾向です。このようなページは、色が多くカラフルな印象を受けます。

地球環境戦略研究機関(IGES)が2023年3月に発行した『SDGs進捗レポート2023』によると、1社につき10個程度のSDGs目標に貢献していることが分かりました。これはつまり、SDGsロゴの色が目標によって異なるため、SDGs関連のページに10色以上の色が使われていることを意味します。

SDGsロゴをたくさん掲載する企業は、たくさんのSDGs目標に貢献していることが、ポジティブなことでありPRになると考えています。しかし、残念ながらこれは勘違いです。どのガイドラインにも、たくさんのSDGs目標に貢献することが高い評価に繋がるとは書かれていません。

ちなみに、昔よりサステナビリティを意識した経営を営む企業のWebサイトを見てください。Webサイトはシンプル、かつSDGsロゴの登場シーンも相対的に少ないことが分かります。

②コピペに見えるSDGsページ

初めてSDGs関連のページを作成する担当者は、作成の過程で参考情報として競合他社などのSDGsページを調査するでしょう。自社とも重なる部分は取り入れた上で、これまで行ってきた自社の取り組みをSDGsの目標の内容に合わせて整理して発信することで、自社のSDGsに関する発信ができるようになると思われがちです。

このような方法でSDGs関連の発信をしている担当者の方に、試してもらいたいことがあります。

それは、制作したSDGs関連のページから自社の社名を取り除いても、それ以外の発信内容から自社のSDGs関連のページだと伝わるのかどうか考えることです。

もし、他社のページに掲載されてもSDGsへの取り組みの発信として、違和感がなければそれは自社らしさを表現した発信とは言えません。他社と似ている、極端に言えばコピペに見えるようなSDGs発信は、ステークホルダーへの訴求効果が低く共感を得られにくくなってしまいます。

③社長が顔出ししていないSDGsページ

企業による本質的なSDGsへの取り組みには、事業を通して社会課題の解決を図ることで自社の経済価値も創出してくことを目指す姿勢が見られます。そのため、SDGsへの取り組みは単なる社会貢献活動とは分けて考えることが自然です。

このような性質から、筆者はSDGsの取り組みは企業の中長期的な経営戦略に含まれるため、経営層が取り組みを牽引していく必要があると考えています。これまでの経験上、自社のSDGs関連のページに社長が自ら顔を出していない・取り組みへの理念を語っていない企業の多くは、社長がまだSDGsへの取り組みに共感していないケースが多いです。

とはいえ、SDGs関連のページに社長が顔を出しているすべての企業が、SDGsに取り組むことに前向きというわけでもないため、その点は注意が必要です。企業によっては担当者が社長の語る言葉を代筆しているケースもあるからです。ページを見ただけではその見極めは難しいですが、このようなケースもあるということを知っておきましょう。

SDGsウォッシュになる危険性も

ここまで見てきた3点のようなSDGs発信を続け、取り組みの実情と合わない状況にあることで、ステークホルダーからSDGsウォッシュだと指摘される危険性があります。SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるような発信・PRをしているものの、実は実態が伴っていない状態を指します。

SDGsの認知度が高まり取り組むことが当たり前になっていくことで、ステークホルダーが企業のSDGsへの取り組みを判断する目が厳しくなってきています。そのため、表面的なSDGsへの取り組みや実態が伴わないSDGsウォッシュは見破られる可能性が高まっています。

もし、あなたの企業が行ってきたSDGs発信が上記のような状況にあれば、ぜひ発信内容を見直してください。

Ⅱ.SDGs時代だからこそ求められる情報発信とは

最後に、SDGs時代に求められる筆者オススメの企業による情報発信と好事例を紹介します。ここでオススメする方法を実践している企業はまだ少ないですが、とても効果があるためぜひ活用してみてください。

オススメの方法とは、「志は大きく描くが、できないことは素直に開示する」ことです。

漫画ワンピースの主人公ルフィは「海賊王に俺はなる!」と大きな志を叫びます。しかしルフィは海賊として必要なスキルである航海術を持ち合わせていなければ、料理や治療もできません。しかし、できないことを素直に周囲へ開示し、ルフィに代わり、それぞれの役割を担うキャラクターを仲間に加えることで、大きな志の達成を目指しています。

筆者は企業のSDGs推進もこのようなスタンスで臨むべきだと考えています。「カーボンニュートラル経営に取り組む!」という宣言と合わせて、自社だけではできないことを素直に開示すれば、志に共感したステークホルダーが協業の話を持ちかけやすくなります。そこから、取り組みが進めば今よりは一歩、達成に近づくことでまた新たな景色が見えてきます。

繰り返しになりますが、大きな志を描き、自分ではできないことを素直に開示することが、達成へ近づくポイントです。次に好事例として紹介する2社は、筆者が昔から取り組みを観察してきた企業で、その時々にできないことを素直に情報公開している点が共通しています。

Allbirds

サンフランシスコ発祥のライフスタイルブランドである「Allbirds」は、世界一快適なスニーカーとして、今多くの消費者から人気を集めています。同社が発行した2021年サステナビリティレポートでは、製品ごとのカーボンフットプリントを減らすポジティブな取り組みが書かれている一方、事業成長に伴い温室効果ガス排出量が増加しているネガティブなことも開示されています。そのような状況を真摯に受け止め、2030年には2020年の42%以下の排出量に削減することを目指すことを目標として掲げています。

※カーボンフットプリントとは、
商品やサービスにおける原材料調達・製造・物流・使用・廃棄に至る
ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス排出量をCO2に換算して、
商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み。

ひかり味噌株式会社

長野県に本社を構える味噌を中心に取り扱う日本の食品メーカーであるひかり味噌株式会社。同社は、毎年SDGsレポートを発刊し、自社で決定したサステナビリティ課題の進捗実績を開示しています。
取り組みの1つであるCO2排出量の削減が、同社のレポートでは毎年目標が未達成である事実がそのまま報告されています。結果だけ見るとうまく進んでいないように思われますが、SDGsレポートを読み進めると、同社は難しい挑戦に取り組んでいることが理解できるようになっています。
同社のCO排出量が増えている原因は、生産量が増加してそのぶん工場が多く稼働するためエネルギー利用量も合わせて増えることです。つまり売上を伸ばしながら、CO2排出量は減らすという難しいトレードオンに挑戦していることが読み取れます。

Ⅲ.まとめ

記事の紹介したような企業の情報発信で、自社のマイナスな結果を扱うことには勇気が必要です。しかしSDGs発信においては、きれいな部分だけを開示してもステークホルダーから共感や信頼は得られにくくなってきています。
このような時代だからこそ、勇気を持って誠実に情報を開示するほうがステークホルダーから応援や大きな志を目指そうという共感が得られやすいです。応援や共感によって自社だけでは困難であったことも、協業などの機会が生まれることで新たな進展が見込めます。
今回紹介した内容が、自社のSDGs関連のページやこれまでの発信内容を見直すヒントになれば幸いです。

玉木 巧(たまき こう)

合同会社波濤 代表 兼 株式会社Drop SDGsコンサルタント

1988年12月生まれ 大阪市出身。 SDGsコンサルティングを手掛ける株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。事業部責任者として、これまで大企業から中小企業のサステナビリティ推進を支援。それらの経験をもとに、これまで40万人以上のビジネスパーソンにセミナーも実施。 株式会社Dropのメンバーとして働きながら、企業のサステナビリティ推進をより加速すべく、2022年9月に自身の会社として合同会社波濤を設立し、現在は二足の草鞋を履いて活動中。 他にもYouTuber・Voicyパーソナリティー・Schoo講師など、SDGs を軸に多角的に活動を広げる。

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