2012/09/07Vol.261
「地価の推移」と「株価の推移」(最近の状況)
景気動向は、欧州危機が依然収束がみられないこともあり見通しのつきにくい状況ですが、地価の動向をみる上で株価は重要な指標の一つであることは従来から指摘されています。今回の報告は当社で独自に調査している首都圏地価動向の推移と株価の推移を比較してみることで、その関係性をみてみようとする試みです。地価と株価の関係を表すひとつのデータとしてご覧ください。
株価と地価の関係について、2年半前に本欄で取り上げたところですが、その後東日本大震災やヨーロッパ金融不安などがあり改めてその後の推移を提示しておきたいと思います。株価は景気に敏感に反応する資産であり、逆に地価は景気に対して遅行性があるといわれてきましたが、意外に敏感に景気変動をとらえて変化していることがみてとれました。
下のグラフは、当社が独自に実施している地価変動率の推移(四半期に一回の調査)を使って、地価と株価の関係を、改めて時系列で追いかけてみたものです。株価としては「日経平均株価」の毎月末終値を採用して、地価の変動率グラフをバブルのピークを概ね合わせた位置(株価のピーク水準よりやや低い位置)にプロットしています。
■図:株価の推移と地価の累積変動率の推移
地価のグラフのボトム(2004.4時点で指数値で37.6)から直近のピーク値(2007.7時点で指数値48.5)は1.29倍という変化割合ですが、このミニバブルの後、リーマンショックを経て値下がりをした地価は、現在やや下落傾向にはありますが、長期的にみれば比較的安定した時期にあると言えるようです。
一般に地価の変化は株価の変化に対して比較的ゆっくり動くといえますが、このグラフ全体を見ると、地価と株価の間の連動性は高いものと言えるでしょう。ここで取上げた当社独自調査の地価データは、首都圏の各エリアの平均変動率の平均値をプロットしたものですので、個別地点の変化より緩やかに変化している点、平均的な変動を表していると考えられます。10年タームでの推移としては株価は短い期間ではダイナミックな変化をしており、その変化がひとつの先行指標となって地価は変化しているとも読み取れます。このことから、直近の2年間の動きをみると、相対的な水準としては地価は株価に対してやや高い水準を維持していると言えるのかもしれません。
この当社独自調査の地価推移グラフは東京近郊住宅地を対象としたサンプル調査からの動きであり、全国の傾向やミクロなエリアでの変動に対しては異なる動きをしているケースもある点に注意してください。
(担当:池田 徹)
※日経平均株価グラフはNIKKEINETのデータを当社で加工した
企画・編集:野村不動産ソリューションズ株式会社 流通事業本部 営業企画部 企画課
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