2004/06/22Vol.118
管理費等の請求権、5年で時効
昨今、管理費等を滞納する無責任な区分所有者増加しています。
管理組合の管理費や修繕積立金に関しての消滅時効期間は、5年とする説と、10年とする説がありました。このたび最高裁で毎月定額を支払うものであることから定期給付債権だとして管理費等の請求権は5年で消滅時効にかかると判示しました。
国交省の平成15年マンション総合調査では4割以上の管理組合で管理費等の滞納のトラブルを抱えています。管理費等が引き落とし口座の残高不足で未納となり、その後も長期にわたり滞納し続けるケースが増加しているようです。未払いのままマンションを売却することも多く、実際買主が滞納金の存在を知らないとトラブルとなりますので、仲介業者には管理費等の納入状況や累積残高の通知が義務付られているのはご承知のとおりです。
さて、先ごろこの滞納管理費等に関して重要な判決がありました。管理組合が区分所有者に対して有する管理費や修繕積立金の請求権が何年で時効消滅するかが争われた訴訟です。最高裁は債権の種類を(家賃などと同じ)毎月決まった方法で支払う債権である「定期給付債権」に当たるとして、5年で時効消滅するとの判断を示しました。一審二審とも「一般債権」(時効期間は10年)としていたものです。従来からこの問題については各裁判所や実務家の中でも異なる見解が示されていました。どちらかといえば、定期給付債権ではなく一般債権として民法167条により10年であるとする見解が主流であったものです。
今回この最高裁判決でこの問題に決着を付けた訳でその意味では意義がある判決といえます。裁判官全員一致の判決ですが、「管理費と修繕費は実態的に一体で現行法では5年で時効だが、管理費と異なり修繕積立金は必要不可欠。(修繕積立金については)不誠実な滞納者が支払いを免れる結果にならないよう、立法措置を含め検討されるべき」との補足意見が付されています。
◆管理費滞納の事項に関する判例
事例概要:売主Aが6年4か月分の管理費を滞納後、区分建物を売却し、買主Bが管理組合から滞納管理費の支払を提訴された事例 |
東京高裁 平成13年(ネ)第3618号 |
原審判決:買主Bは民法第169条の定期給付債権であるから5年の短期消滅時効にかかると抗弁、東京高裁は管理費は毎年要する経費の変化に応じて金額を定めるもので、毎年の額が定額になるものでないから定期給付債権に当たらないと判示。 |
最高裁判決:管理料も毎月定額を支払うことで他の定期給付債権と変わりがないとして消滅時効期間は5年間。 |
最高裁 平成14年(受)第248号平成16年4月23日 |
なお、今回の事例は特定承継人※が承継した債務の請求であり、滞納した本人が当事者である場合や管理費だけ修繕積立金だけの場合では異なる結論もあり得るとの指摘もあります。しかしながら今後は管理組合の管理費等定額の債権は5年の時効と考え、その期限内に回収を図る努力や「時効の中断」手続き等、管理組合はより細やかな運営の必要がでてきました。
ほか管理費等の判例で、所有者が頻繁に変わった場合の中間取得者の滞納支払い義務に関するものでは、特定承継人はその負担を支える区分所有権を現に有する特定承継人に限られると解するべきであるとの大阪地裁判決があります。
※特定承継人とは、一般承継人が被承継人の地位を一般的・包括的に承継する者であるのと異なり、被承継人の地位の一部・特定部分を承継する者という概念です。
企画・編集:野村不動産ソリューションズ株式会社 流通事業本部 営業企画部 企画課
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