不動産テックとは?カオスマップ掲載の15領域のサービスと活用するメリットをご紹介!

不動産業界はDX化が遅れており、未だにアナログな商慣習が根強く残っています。それが人手不足といった業界の課題にも繋がっています。旧態依然としたアナログ文化から脱却し、DX化を推進するための取り組みとして注目されているのが不動産テックです。

この記事では、不動産テックとは何かを不動産テック業界のプレイヤーやカテゴリー、関係性を表した業界地図である「不動産テックカオスマップ」に掲載されている企業のサービスを中心にわかりやすく解説します。

Ⅰ.不動産テックとは?

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、VR(バーチャル・リアリティー)など、最先端のテクノロジーを活用した不動産テックのサービスが次々に誕生しています。

ここでは、不動産テックの定義と、一般社団法人不動産テック協会が作成している「不動産テックカオスマップ」について解説します。

ⅰ.不動産テックの定義

不動産テックとは、不動産×テクノロジーの略語です。AIやIoTなどのテクノロジーを活用して、不動産業界が抱える課題や旧態依然とした商習慣を変えるための取り組みを指します。AIチャットボット導入による営業力強化やVR内見などが不動産テックの一例です。

不動産テックに参入する企業は増えており、新しいサービスが次々に誕生しています。革新的なサービスが普及することによって、不動産取引の活性化や業務効率化につながることが期待されます。

ⅱ.不動産テックカオスマップ

不動産テックカオスマップとは、不動産テック業界のプレイヤーやカテゴリー、関係性を表した業界地図です。どのような企業が不動産テックのサービスを提供しているのかが、一目でわかります。一般社団法人不動産テック協会のWEBサイトで公開されており、誰でも閲覧できます。

不動産テックカオスマップを作成している不動産テック協会は、2018年に前代表理事の赤木正幸氏(現顧問・衆議院議員)が中心になって設立されました。当初は4人でスタートし、現在は130社以上の会員を擁しています。

資料:不動産テックカオスマップ(第9版)PDFファイル

Ⅱ.不動産テックの種類とサービス内容

2023年8月時点で、不動産テックは463種類のサービスがあり、15のカテゴリーに分類されます。ここでは、不動産テックカオスマップ(第9版)に掲載されている不動産テックのサービス内容をカテゴリーごとにご紹介します。

ⅰ.VR・AR

「VR・AR」領域では、37種類のサービスが提供されています。ナーブ株式会社が提供する「おうちでVR内見™」は、エンドユーザーの自宅に「VRゴーグル『クルール』」を届けるシステムで、自宅でVR内見をすることが可能です。

外出しなくても自宅で物件を360度リアル体感でき、気になる箇所をしっかりとチェックできます。不動産業者と対面する必要はないため気軽に内見を申し込め、不動産業者はリモートで物件説明ができます。

ⅱ.IoT

「IoT」領域では、27種類のサービスが提供されています。大崎電気工業株式会社が提供する「ホームウォッチ」は、スマートホームを実現させるIoTサービスです。外出先からスマホで家電を遠隔操作でき、帰宅時間に合わせて家の中を快適な空間にできます。

スマートロックやWEBカメラと連携させると、外出先から鍵をかけたりペットを見守ったりすることも可能です。部屋の温度や湿度に合わせて家電を操作できる環境センサーなど、便利な機能を搭載しています。

ⅲ.スペースシェアリング

「スペースシェアリング」領域では、64種類のサービスが提供されています。TIMEWORK合同会社が提供する「TIMEWORK」は、法人向けのワークスペースシェアリングプラットフォームです。

北海道から沖縄まで全国約200ヶ所の施設を、基本料金無料の完全従量制で利用できます。施設にはオープンエリアや個人ブース、会議室などがあり、さまざまなビジネスシーンに対応可能です。新耐震基準やWi-Fiセキュリティなどの基準をクリアした、ワークスペースにふさわしい施設を厳選しています。

ⅳ.リフォーム・リノベーション

「リフォーム・リノベーション」領域では、19種類のサービスを提供しています。株式会社ローカルワークスが提供する「リフォマ」は、地域の安心できるリフォーム会社を紹介するサービスです。

中間業者を介さずに依頼者と施工店を直接つなぐことで、中間マージンを排除した低価格で高品質な施工が実現します。厳正な審査を行っており、厳選した施工店だけを掲載しているため、悪徳業者に騙されるようなことはなく安心です。

ⅴ.不動産情報

「不動産情報」領域では、16種類のサービスが提供されています。株式会社ゼンリンが提供する「ZENRIN GISパッケージ」は、地図情報と物件調査をサポートする機能をパッケージ化したオンライン地図サービスです。調査業務から重要事項説明までをサポートします。

地番や用途地域、最寄駅からの距離、学校区、ハザード情報などがすぐにわかり、地図の買い替えも不要です。検索機能も充実しており、目的の場所を地図上で探す手間がなくなることで業務効率化につながります。

ⅵ.業務支援 集客

「業務支援 集客」領域では、9種類のサービスが提供されています。株式会社UPDATAは「ダイヤモンドテール」という不動産業界に特化したホームページ制作サービスを提供しており、累計200社以上の導入実績があります。

独自の戦略構築とフルカスタマイズ可能なシステムで、事業に貢献するオンリーワンの物件サイトの制作が可能です。ホームページからの集客を増やすことで、新規顧客の獲得や既存顧客の定着に貢献します。

ⅶ.業務支援-顧客対応

「業務支援-顧客対応」領域では、39種類のサービスが提供されています。イタンジ株式会社は「内見予約くん」という24時間365日オンラインでいつでも内見予約ができるシステムを提供しており、約5万1,000店舗で利用されています。

内見予約数は15%もアップし、内見受付の人件費や時間の削減が可能です。従来電話やFAXで受付していた内見予約の機会損失を防止でき、内見予約数や内見受付の効率化に貢献します。

ⅷ.業務支援 契約・決済

「業務支援 契約・決済」領域では、18種類のサービスが提供されています。そのうち、gooddaysホールディングス株式会社が提供する「IMAoS」は、不動産賃貸業向けの電子契約サービスです。

重要事項説明書や賃貸借契約書などの書類を、スマートフォンやパソコンから簡単に電子署名のうえ電子データで交付できます。IMAoSの導入で不動産賃貸業のDXを推進でき、業務効率化やコスト削減に大きく貢献します。

ⅸ.業務支援-管理・アフター

「業務支援-管理・アフター領域では、55種類のサービスが提供されています。株式会社THIRDが提供する「管理ロイド」は、不動産管理会社向けのAI搭載の建物管理クラウドシステムです。1,400社以上が導入しており、効率的な不動産管理が可能です。

「管理ロイド」に搭載されている「既存フォーマットに対応した帳票自動作成機能」を活用すると、帳票を自動的に作成できます。また、「AIによるメーター読み取り自動化機能」を使用すると検針・点検などが自動化でき、業務効率化につながります。

ⅹ.業務支援 設計・施工

「業務支援 設計・施工」領域では、15種類のサービスが提供されています。株式会社アンドパッドが提供している「ANDPAD」は、建設現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型の建築・建設プロジェクト管理サービスです。

ANDPADは、建設業界のDXを推進するクラウド型のプロジェクト管理サービスとして、多くの企業に導入されています。工程表の作成や図面の共有などの業務を効率化することで、現場の負担を軽減し、生産性向上につながります。

ⅺ.ローン・保証

「ローン・保証」領域では、11種類のサービスが提供されています。株式会社スムーズは、賃貸にかかる初期費用を分割払いにできる「smooth」というサービスを提供しており、累計120,000人が登録しています。

賃貸住宅を借りる際はまとまったお金が必要になりますが、「smooth」を利用すると初期費用を分割払いにでき、6回払いであれば分割手数料もかかりません。まとまったお金がなくても賃貸住宅を借りることができ、賃貸不動産市場の活性化に貢献します。

ⅻ.クラウドファンディング

「クラウドファンディング」領域では、34種類のサービスが提供されています。株式会社グローベルスは「大家どっとこむ」という不動産投資型クラウドファンディングサービスを提供しており、1口1万円で不動産投資を始められます。

J-REIT等と違い収益不動産そのものに投資でき、1口1万円で誰でも簡単に大家になることが可能です。収益不動産への投資機会が増えることで、不動産投資市場の活性化に貢献します。

xiii.価格可視化・査定

「価格可視化・査定」領域では、14種類のサービスが提供されています。株式会社DGコミュニケーションズが提供する「家いくら?for Pro」は、マンション査定書を短時間で作成できる不動産業務効率化サービスです。

物件情報を入力すると瞬時に査定価格や周辺環境調査が出力され、圧倒的な早さで即日訪問が可能になります。自社ロゴのパンフレット形式の物件資料を作ることもでき、顧客獲得や業務効率化につながります。

xiv.マッチング

「マッチング」領域では、47種類のサービスが提供されています。株式会社リアンコネクションが提供する「オーナーズガーデンPro」は、不動産営業マン専用のビジネスマッチングツールです。

未公開の売・買ニーズが1,800件以上も掲載されており、非対面でのコンタクトが可能です。気になる物件があれば、チャット形式でやり取りができます。大手・中小のさまざまな不動産営業マンが利用しており、成約手数料などは一切不要です。

xv.物件情報・メディア

「物件情報・メディア」領域で提供しているサービスは17種類です。ハウスコム株式会社はLINEで物件検索ができる「マイボックスでお部屋探し」を提供しています。LINEでAIの質問に答えるだけで希望に合致する物件を検索できます。

「マイボックスでお部屋探し」を利用すると、部屋の内見予約から契約に至るまでのやり取りをLINEで完結させることが可能です。わざわざ店舗に電話をしなくても済むため、気軽に部屋を探せます。

Ⅲ.不動産テックEXPOとは?

不動産テックEXPOは日本最大級の不動産テックイベントで、2022年は東京と大阪で開催されました。2023年は関西展が9月11日~13日の日程で開催され、東京展は12月13日~15日の日程で東京ビッグサイトにて開催される予定です。

数多くの不動産テック企業が参加し、不動産向けIT・IoT・AIなどが出展されます。会場では不動産テックのサービスや製品を実際に体験でき、その場で商談をすることも可能です。

Ⅳ.不動産テックの市場規模

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2020年度の不動産テック市場規模は6,110億円で、前年度比108.6%でした。2025年度は1兆2,461億円に拡大すると予測されており、これは2020年度比203.9%の高い伸びで、不動産テック市場は拡大傾向にあります。

不動産テック市場が拡大傾向にある理由は、不動産市場全体が巨大市場であるためです。また、コロナ禍で不動産取引のデジタル化が進んだことも要因の一つです。

出典:株式会社矢野経済研究所「不動産テック市場に関する調査を実施(2021年)」

Ⅴ.日本の不動産業界が抱える問題点

日本の不動産業界はDX化の遅れや人手不足など、さまざまな問題を抱えています。今後、不動産テックの普及が進むと、不動産業界が抱える問題が解決する可能性が高まるでしょう。ここでは、日本の不動産業界が抱える問題点について解説します。

ⅰ.DX化の遅れ

総務省「令和3年版 情報通信白書」によると、我が国におけるデジタル化の取組状況を尋ねたところ、不動産業・物品賃貸業の76.8%がDX化を実施しておらず、56%が今後も実施する予定はないと回答しています。

DX化が進んでいるアメリカでは、2020年の住宅購入者の97%が住宅購入時にインターネットを使用しており、VR内見やドローンによる空撮などの不動産テックが普及しています。日本の不動産業界はDX化が著しく遅れているといえるでしょう。

出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」

出典:NAR「Real Estate in a Digital Age」

ⅱ.情報の不透明性

日本の不動産業界は、情報の不透明性が問題になっています。不動産情報ネットワークシステム「レインズ」は不動産業者しか利用できず、消費者は過去の取引事例や周辺相場などの情報を入手する術がありません。

消費者は不利な立場に置かれていますが、今後、不動産テックの普及が進むことで情報の不透明性の解決が期待できます。

ⅲ.人手不足

慢性的な人手不足は不動産業界が抱える深刻な問題です。厚生労働省が実施した「令和3年雇用動向調査結果」によると、不動産業・物品賃貸業の入職者数は87.2千人、離職者数90.7千人で、離職者数の方が上回っています。

慢性的な人手不足の原因として業務負担が大きく、過酷な労働環境に耐えられず、他業界へ転職することなどが挙げられます。不動産テックが普及すると業務効率化が図れ、定着率の向上が期待できるでしょう。

出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」

Ⅵ.不動産テックを活用するメリット

不動産テックを上手に活用すると不動産取引が活性化し、業務の効率化が図れるなど、不動産業界の改善につながる可能性があります。ここでは、不動産テックを活用するメリットをご紹介します。

ⅰ.情報の質や双方向性の向上

「価格可視化・査定」や「物件情報・メディア」などの領域の不動産テックを活用することで、情報の質や双方向性の向上につながります。不動産テックが普及すると消費者はさまざまな方法で情報を収集できるようになり、情報の透明性は高まるでしょう。

消費者が質の高い情報を入手できるようになると、不動産業者の優位性は崩れます。不動産業者もさまざまな不動産テックを活用して、積極的に情報を収集することが大切です。

ⅱ.不動産取引の活性化

不動産テックのあらゆる領域は、不動産取引の活性化に大きく貢献します。例えば、不動産に特化したチャットツールが普及すると、電話で問い合わせをすることに抵抗がある消費者も、チャットで気軽に問い合わせができるようになります。

また、VR内見やVRゴーグルを活用すると消費者は現地に行かなくてもスマホで内見ができ、購入意欲が促進するでしょう。不動産テックのサービスの特性を把握し、上手に活用することで成約アップに貢献します。

ⅲ.業務の効率化

不動産テックを活用する大きなメリットは、業務効率化が図れることです。あらゆる書類を短時間で作成できるようになり、人的ミスの軽減にもつながります。契約書や重要事項説明書なども電子化すると業務効率が向上します。

従業員の業務負担が軽減されることで、生産性向上や定着率アップも期待できるでしょう。また不動産テックを活用することは、厚生労働省が推進している「働き方改革」の有効な手段になります。

Ⅶ.まとめ

不動産テックは、DX化の遅れや情報の不透明性など、日本の不動産業界が抱える問題を解決するために有効な取り組みです。不動産テックを上手に活用することで業務の効率化が図れ、人手不足の問題が解決する可能性もあります。

この記事でご紹介した不動産テックのサービスはごく一部です。他にも魅力的なサービスが数多くありますので、ぜひ興味のある領域のサービスを調べてみてください。成約アップや業務効率化につながるサービスがきっと見つかるでしょう。

北浦 章弘(きたうら あきひろ)

大学卒業後、不動産コンサルティング会社に入社。 専業トレーダーを経て、2011年よりフリーランスライターとして活動を始める。 金融や不動産を中心に、さまざまなジャンルにおいて豊富な執筆実績がある。 保有資格:宅地建物取引士

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