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物流施設の動向と展望戦略 ~第2回:物流不動産市場の展望と戦略~

第1回では、物流施設を取り巻く環境変化として、EC市場拡大や施設供給の変化、空室率、利回り等の動向を概観し、主要な物流施設の事例分析として、近年の投資家の動向や取引のトレンドを見ました。
第2回では、売買動向に影響を与える要因分析等を通じて、物流施設の現在の課題について記述し、物流施設の今後の展望と戦略を考察します。
【サマリー】
- 物流施設の売買動向は、経済・市場要因、技術革新、政策・規制、社会要因の4つに大きく影響を受けます。金利やインフレといったマクロ経済環境の変化、技術革新による施設の機能向上、環境規制や土地利用制約、さらにはEC市場の成長や労働力不足といった社会的要因が複雑に絡み合い、物流不動産市場を形成しています。
- また物流施設は、EC市場の成長やサプライチェーンの変化により、その重要性がますます高まっています。しかし、急速な発展の一方で、建設費の高騰、物流施設の立地と用地確保の困難さ、労働力不足と人件費の上昇、環境負荷の増加と脱炭素対応、物流ネットワークの最適化と効率化の問題など様々な課題が生じており、これらの課題に適切に対応することが求められています。
- 物流施設市場における今後の展望と戦略ですが、市場はECの拡大や消費者ニーズの多様化により、今後も堅調な成長が予測されています。特に、EC市場の拡大に伴い、物流施設の需要は増加しています。物流施設への投資は、安定した収益源として注目されていますが、市場の変化やリスクを踏まえた戦略が必要です。企業側の戦略としては、物流拠点の最適化、テクノロジーの導入による効率化、データ分析による戦略的な意思決定、人材育成と組織体制の強化などを行い、競争力を高めることが必要でしょう。
Ⅰ.物流施設の売買動向に影響を与える要因
物流施設の売買動向は、多くの外的要因に影響を受けます。特に、経済・市場要因、技術革新、政策・規制、そして社会要因の4つが大きな役割を果たしています。本稿では、それぞれの要因について詳しく説明します。
ⅰ.経済・市場要因
物流施設の取引市場は、マクロ経済の動向に大きく左右されます。特に、金利動向、インフレ、投資利回りなどは、投資家の行動や施設の価値に直接影響を及ぼします。
(Ⅰ)金利動向と物流施設
物流施設は、投資資産として機関投資家やREITから高い関心を集めます。金利が低い局面では、借入コストが低下するため、物流施設への投資が活発化します。反対に、金利が上昇すると、資金調達コストが増大し、投資利回り(キャップレート)が上昇するため、物件価格が下落する可能性が高くなります。2022年以降、米国の金利上昇が世界市場に影響を与えていますが、日本国内でも長期金利の動向によって物流不動産市場の流動性が変動する可能性があります。
(Ⅱ)インフレと建築コスト
インフレが進行すると、建築資材費や労務費が上昇し、新規物流施設の開発コストが増加します。その結果、新規供給が抑制され、既存施設の価値が上昇することがあります。また、物流施設の賃料は、インフレに対して硬直的とされますが、賃料交渉の影響も無視できません。
(Ⅲ)投資利回りと資金流入
近年、物流施設は安定したキャッシュフローを提供する資産クラスとして注目されてきました。特に、コロナ禍以降のEC市場拡大により、物流施設の需要が急増しました。しかし、物流施設の利回りが低下しすぎると、他の資産クラスと比較した際の投資妙味が低下し、資金が流出するリスクもあります。海外投資家の動向も、日本の物流市場に影響を与えており、円安や地政学的リスクが投資判断に影響を与えています。
ⅱ.技術革新
物流施設の運用効率向上や投資価値を高めるために、自動化技術、スマート物流システムなどの技術革新が進んでいます。
(Ⅰ)自動化技術と施設の価値
物流センターにおける自動化技術の導入は、労働力不足の解決策として注目されています。例えば、AGV(無人搬送車)やロボットアームを導入することで、入出庫作業の省人化が可能になります。また、自動倉庫システム(AS/RS)は、高密度保管を実現し、限られた土地での効率的な運用を可能にします。こうした設備投資を行った物流施設は、他の物件と比較して競争力が高まり、売買市場でも高い評価を受けます。
(Ⅱ)スマート物流システムの進化
IoTやAIを活用したスマート物流システムも、物流施設の価値向上に貢献しています。例えば、リアルタイムでの在庫管理や予測分析によって、物流の最適化が可能になります。また、温度・湿度管理が重要なコールドチェーン施設では、センサー技術の進化によって品質管理が強化され、投資対象としての魅力が増しています。
(Ⅲ)技術投資と物流施設の選別
最新技術を導入した物流施設は高い評価を受ける一方で、旧式の施設は競争力を失い、売買市場での価格下落リスクがあります。そのため、物流施設の投資家は、技術トレンドを把握し、将来的な設備更新のコストを見越した投資戦略を立てるでしょう。
ⅲ.政策・規制
物流施設の開発・運用には、環境基準や土地利用規制が大きく関わります。
(Ⅰ)環境基準の厳格化
近年、カーボンニュートラルの推進に伴い、物流施設の環境性能が重視されるようになっています。例えば、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得した施設は、投資家やテナントからの評価が高まります。また、太陽光発電設備の導入(図表1参照)やEV充電ステーションの設置が求められるケースも増えており、こうした対応を行っていない施設は市場価値が低下する可能性があります。

(Ⅱ)土地利用規制と開発制約
物流施設の立地選定には、土地利用規制が大きな影響を与えます。特に都市部では、住宅地との共存を考慮した開発が求められ、24時間稼働できる施設の開発が難しくなる場合があります。一方で、地方では大規模物流施設の開発が進んでいますが、交通インフラとの整合性が課題となります。
ⅳ.社会要因
物流施設の需要は、EC市場の拡大、労働力不足といった社会的な変化にも大きく左右されます。
(Ⅰ)EC市場の拡大
EC市場の成長により、物流施設の需要は年々高まっています。特に、ラストワンマイル配送の重要性が増しており、都市近郊型の小型物流拠点が注目されています。また、即日配送や翌日配送の需要が高まる中、在庫拠点の分散化が進み、複数の物流センターを持つ企業が増えています。
(Ⅱ)労働力不足と自動化の加速
物流業界では、ドライバーや倉庫作業員の人手不足が深刻化しています。これにより、人件費が上昇し、労働コストを削減できる自動化施設へのニーズが高まっています。特に、AIやロボティクスを活用した物流施設は、長期的な競争力を維持しやすく、投資対象としての魅力が増しています。
Ⅱ.物流施設の課題
物流施設は、EC市場の成長やサプライチェーンの変化により、その重要性がますます高まっています。しかし、急速な発展の一方で、様々な課題も浮上しています。本稿では、以下の5つの主要な課題について詳しく説明します。
ⅰ.物流施設の建設費の高騰
物流施設の課題の一つとして、建設費の高騰が挙げられます。近年、原材料価格の上昇や人手不足に伴う人件費の増加、環境規制への対応といった要因により、物流施設の建設コストが大幅に上昇しています。特に、再開発が進む都市部やアクセスの良い立地では用地取得費も高騰しており、これが建設費全体にさらに大きな影響を及ぼしています。
また、EC市場の拡大や即日配送などのニーズに対応するため、物流施設にはより高度な設備や機能が求められるようになっており、これもコスト増の一因となっています。結果として、投資回収期間の長期化や収益性の低下が懸念され、事業者にとっては慎重な判断が求められる状況となっています。
ⅱ.物流施設の立地と用地確保の困難さ
近年、EC市場の拡大に伴い、ラストワンマイル配送を強化するために都市近郊の物流拠点が求められています。しかし、都市部における物流施設の用地確保はますます困難になっています。主な理由は以下の通りです。
(1)土地価格の上昇
都市部では住宅や商業施設の開発が優先されるため、物流施設向けの土地が限られています。特に、東京・大阪などの大都市圏では、地価の高騰により物流施設の新規開発コストが増加しています。
(2)土地利用規制の厳格化
都市部では騒音や交通渋滞の問題から、24時間稼働できる物流施設の開発が制限されるケースがあります。また、用途地域の制約により、大規模な物流センターを建設できるエリアが限られています。
(3)交通アクセスの問題
都市近郊に物流施設を設置する場合、高速道路や幹線道路へのアクセスが重要となります。しかし、適切な立地にある用地が不足しているため、物流効率の低下を招くことがあります。
このような状況を受けて、一部の企業は既存の物流施設のリノベーションや多層階化を進めることで、都市部でのスペース活用を最適化しようとしています。しかし、それでも新規開発の制約が大きく、今後も用地確保の困難さが物流施設市場の大きな課題となるでしょう。
ⅲ.労働力不足と人件費の上昇
物流業界では、深刻な労働力不足が続いています。特に、倉庫作業員やトラックドライバーの不足が大きな課題となっています。その背景には以下の要因があります。
(1)人口減少と高齢化
日本では少子高齢化が進み、労働力人口が減少しています。物流業界は肉体労働が多く、若年層の応募が少ないため、人手不足が慢性化しています。
(2)過酷な労働環境
物流倉庫での作業は体力的に厳しいものが多く、特に繁忙期には長時間労働が求められることがあります。また、ドライバー不足も深刻で、長時間運転や過密スケジュールが敬遠されています。
(3)人件費の上昇
人手不足が続くことで、物流業界では賃金上昇の圧力が高まっています。特に、最低賃金の引き上げや、働き方改革の影響で労働環境改善が求められ、企業側のコスト負担が増大しています。
この問題に対応するため、多くの企業が自動化やロボット技術の導入を進めています(図表2参照)。例えば、ピッキング作業を行うロボットや、無人搬送車(AGV)を活用することで作業負担を軽減し、省人化を図っています。しかし、初期投資コストの高さや技術導入のハードルがあるため、全ての物流施設で対応できるわけではありません。今後は、人材確保とテクノロジーの活用を両立させることが重要となります。

ⅳ.環境負荷の増加と脱炭素対応
物流施設の運営には、多くのエネルギーが消費されます。特に、冷蔵・冷凍倉庫では電力消費が多く、CO₂排出量の削減が求められています。また、トラック輸送の増加に伴い、環境負荷の問題も深刻化しています。
(1)CO₂排出量の増加
物流業界全体でのCO₂排出量は増加傾向にあり、特にECの成長に伴う配送回数の増加が影響しています。消費者の利便性向上のために即日配送・翌日配送が求められる一方で、非効率な配送ルートによる環境負荷が懸念されています。
(2)脱炭素施策の強化
政府や企業は脱炭素化に向けた取り組みを加速しています。例えば、物流施設においては、太陽光発電システムの設置、LED照明の導入、EVトラックの導入などが進められています。また、グリーンボンド(環境関連の投資資金調達手段)を活用した持続可能な物流施設開発も増えています。
(3)環境対応コストの増加
環境対策を進めるには、大規模な設備投資が必要となります。再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上には、初期コストがかかるため、投資回収の見通しを慎重に考える必要があります。
今後、企業は環境対応を進めると同時に、コスト管理を適切に行いながら持続可能な物流施設運営を模索する必要があります。
ⅴ.物流ネットワークの最適化と効率化の課題
物流施設の運営では、サプライチェーンの効率化が重要な課題となります。特に、EC市場の拡大により、配送センターのネットワーク最適化が求められています。
(1)配送拠点の分散と集中のバランス
EC市場の成長に伴い、消費者への配送スピードが重要視されています。企業は、地方に大規模な拠点を構えつつ、都市部には小型配送拠点を設置するなど、拠点分散型の物流ネットワークを構築しています。しかし、拠点が増えることで運営コストが増大し、効率的な管理が課題となります。
(2)AI・データ活用の必要性
物流ネットワークの最適化には、ビッグデータやAIを活用した需要予測が重要となります。例えば、過去の購買データを分析し、需要が高まるエリアに在庫を事前配置することで、配送時間を短縮できます。しかし、多くの物流企業ではデータ活用のノウハウが十分に確立されておらず、システム導入の遅れが課題となっています。
(3)ラストワンマイル配送の課題
都市部では、宅配便の増加により配送効率が低下し、ドライバー不足が深刻化しています。解決策として、共同配送やロッカー受け取りの普及が進められているが、完全な解決には至っていません。
物流ネットワークの最適化は、今後の物流施設の価値を左右する重要な要素となります。企業は、デジタル技術を活用しながら、最適な拠点配置と配送戦略を構築する必要があります。
Ⅲ.今後の展望と戦略
以下に、市場の成長予測、投資家への提言、企業戦略の3つの観点から、各項目について詳細に解説します。
ⅰ.市場の成長予測
日本の物流施設市場は、ECの拡大や消費者ニーズの多様化により、今後も堅調な成長が予測されています。特に、EC市場の拡大に伴い、物流施設の需要は増加しています。
一方で、第1回で見たように首都圏における物流施設の大量供給により、空室率の上昇が見られます。この上昇の背景には、新規大量供給の継続と開発エリアの拡大により、新築物件の空室消化に時間がかかっていることが挙げられます。
しかし、長期的な視点では、物流不動産の需要は上がり続けると思われます。これは、EC市場のさらなる拡大等が要因です。さらに、政府は「物流2024年問題」の解決に向けて、政策パッケージを策定し、商慣行の見直しや物流の効率化、荷主・消費者の行動変容を促進しています。これらの施策が実施されることで、物流施設市場のさらなる成長が期待されます。
ⅱ.投資家への提言
物流施設への投資は、安定した収益源として注目されていますが、市場の変化やリスクを踏まえた戦略が必要です。以下に、投資家が考慮すべきポイントとリスク管理の視点を示します。
(Ⅰ)投資のポイント
(1)建設コストの上昇トレンドの把握
資材価格や人件費の上昇により、建設コストは継続的に上昇傾向にあります。これにより、開発プロジェクトの利回りが圧迫される可能性があるため、コスト見通しの正確な把握が重要です。
(2)立地選定の重要性
物流施設の価値は立地によって大きく左右されます。主要な交通インフラ(高速道路、港湾、空港)へのアクセスが良好な場所は、テナント企業にとって魅力的です。特に、EC市場の拡大に伴い、都市近郊のラストワンマイル配送拠点の需要が高まっています。
(3)施設の柔軟性と汎用性
テナントの多様なニーズに対応できる柔軟性を持つ施設は、長期的な稼働率を維持しやすいです。例えば、天井高や床荷重、ドックレベラーの設置など、さまざまな業種の要件に適合する仕様が求められます。
(4)環境対応と持続可能性
環境規制の強化や企業のCSR活動の一環として、環境に配慮した施設が求められています。太陽光発電の導入や省エネ設計、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)認証の取得など、持続可能性を考慮した施設は、テナント企業からの評価が高まります。
(5)テクノロジーの導入
IoTやAIを活用したスマート物流システムの導入は、施設の付加価値を高めます。リアルタイムの在庫管理や自動化された入出庫作業は、テナント企業の業務効率化に寄与します。
(Ⅱ)リスク管理
(1)市場の二極化
大量供給により、施設の品質1や立地によって稼働率に差が生じる可能性があります。高品質で戦略的な立地の施設は高い稼働率を維持しますが、そうでない施設は空室リスクが高まります。
(2)労働力不足
物流業界全体で労働力不足が深刻化しており、施設運営に影響を及ぼす可能性があります。自動化技術の導入や労働環境の改善を図るテナント企業を支援することで、リスクを軽減できます。
(3)規制の変化
環境規制や労働関連法の改正など、外的要因によるリスクも考慮する必要があります。特に、労働時間の規制強化は、物流業務全体に影響を及ぼす可能性があります。
投資家はこれらのポイントとリスクを踏まえ、慎重かつ戦略的な投資判断を行うことが求められます。
1ここでの品質が高い物流施設とは、例えば、1.天井高・荷重制限が大きく、2.大型トラックがスムーズに出入りできる設計(トラックバースと車両動線の設計)、3.区画を柔軟に分割でき、1社利用にも複数テナントにも対応可能(マルチテナント対応と柔軟性)、4.太陽光発電やZEB化対応、非常用電源・耐震設計などBCP対策が整っている、などを具備している施設。
ⅲ.物流に関する企業戦略
近年、企業は競争力を高めるために、自社物流施設の活用と最適化戦略に注力しています。以下に、その具体的な戦略を詳述します。
(1)物流拠点の最適化
物流拠点の配置や数を最適化することは、コスト削減やサービス品質向上に直結します。例えば、拠点を集約することで在庫管理が容易になり、分散することで配送リードタイムの短縮が可能となります。企業は自社のビジネスモデルや顧客ニーズに合わせて、集約型と分散型のどちらが最適かを検討する必要があります。集約型はコスト削減に寄与しますが、災害時のリスクが高まる一方、分散型はリスク分散が可能ですが、管理コストが増加する可能性があります。
(2)テクノロジーの導入による効率化
最新の技術を導入することで、物流施設の効率化が図れます。例えば、自動倉庫や倉庫管理システム(WMS)の導入により、在庫管理や出荷作業の効率が向上します。ジョインテックスカンパニーでは、自動倉庫「オートストア」を導入し、保管効率と作業効率を大幅に向上させました。また、WMSと倉庫制御システム(WCS)を活用し、物流管理の最適化を実現しています。
(3)配送ルートの最適化
配送ルートの最適化は、燃料費削減やCO₂排出量の削減に寄与します。UPSは自社開発のデータ解析システムを利用して、配送ルートを最適化し、配送効率の向上と燃料消費量の削減を実現しています。また、Walmartは自社倉庫と物流センターの位置を最適化することで、商品の配送距離を短縮し、配送効率の向上に成功しています。
(4)BCP対策としての拠点配置
自然災害やパンデミックなどのリスクに備えるため、物流拠点の配置を見直すことが重要です。分散型の拠点配置は、災害時のリスク分散に有効であり、事業継続計画(BCP)の観点からも推奨されます。一方、拠点の集約はコスト削減に寄与しますが、災害時のリスクが高まるため、企業は自社の状況に合わせて最適な戦略を選択する必要があります。
(5)アウトソーシングの活用
物流業務の一部を専門業者に委託することで、コア業務に集中し、全体の効率化を図る企業も増えています。例えば、船井総研ロジ株式会社は、物流体制の見直しや戦略策定を支援し、多くの企業の物流効率化を実現しています。
(6)データ分析による戦略的意思決定
物流データを収集・分析し、戦略的な意思決定に活用することが重要です。例えば、Zaraは自社開発の物流システムを利用して、製品の生産・在庫・配送を最適化し、顧客ニーズの変化に迅速に対応しています。これにより、在庫管理の効率化とリードタイムの短縮を実現しています。
(7)サステナビリティへの対応
環境負荷の低減や持続可能な物流体制の構築は、企業の社会的責任として重要視されています。配送ルートの最適化やエコドライブの推進、再生可能エネルギーの活用など、環境に配慮した取り組みが求められています。
(8)人材育成と組織体制の強化
物流業務の高度化に伴い、専門知識を持つ人材の育成や組織体制の強化が必要です。従業員への教育・研修を通じて、業務効率化やサービス品質の向上を図ることが求められます。
(9)顧客ニーズへの柔軟な対応
消費者の多様化するニーズに対応するため、柔軟な物流体制の構築が重要です。即日配送や時間指定配送など、顧客の要求に応じたサービスを提供することで、競争優位性を確立できます。
(10)コスト管理と投資判断
新たな技術導入や拠点整備には多額の投資が必要となるため、費用対効果を慎重に評価し、適切な投資判断を行うことが重要です。また、物流コストの継続的なモニタリングと改善活動も欠かせません。
Ⅳ.まとめ
物流施設の売買動向は、経済・市場要因、技術革新、政策・規制、社会要因の4つに大きく影響を受けます。金利やインフレといったマクロ経済環境の変化、技術革新による施設の機能向上、環境規制や土地利用制約、さらにはEC市場の成長や労働力不足といった社会的要因が複雑に絡み合い、物流不動産市場を形成しています。
また物流施設は、EC市場の成長やサプライチェーンの変化により、その重要性がますます高まっています。しかし、急速な発展の一方で、建設費の高騰、物流施設の立地と用地確保の困難さ、労働力不足と人件費の上昇、環境負荷の増加と脱炭素対応、物流ネットワークの最適化と効率化の問題など様々な課題が生じており、これらの課題に適切に対応することが求められています。
物流施設市場における今後の展望と戦略ですが、市場はECの拡大や消費者ニーズの多様化により、今後も堅調な成長が予測されています。特に、EC市場の拡大に伴い、物流施設の需要は増加しています。物流施設への投資は、安定した収益源として注目されていますが、市場の変化やリスクを踏まえた戦略が必要です。企業側の戦略としては、物流拠点の最適化、テクノロジーの導入による効率化、データ分析による戦略的な意思決定、人材育成と組織体制の強化などを行い、競争力を高めることが必要でしょう。
提供:法人営業本部 リサーチ・コンサルティング部
リサーチ課 米川 誠
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