2024年の首都圏平均は28.93、前年から2.93ポイントの大幅上昇
マンションPERが最も低かった駅は「稲毛海岸」の14.58、最高駅は「白金高輪」の53.07
2024年における新築マンションPER(=マンション価格が同じ駅勢圏のマンション賃料の何年分に相当するかを求めた値)の首都圏平均は28.93と前年から2.93ポイントの大幅上昇を示しており、コロナ禍を境に5年連続で水準が押し上がる結果となった。
算出対象駅(103駅)における新築マンションの平均価格(70m2換算)は前年比+17.7%の10,288万円、分譲マンションの平均賃料(70m2換算)は+3.2%の284,192円といずれも上昇したが、平均価格の上昇率の方が大幅に上回ったことで回収に要する期間は3年近くも長期化している。
各駅のマンションPERを色分けした路線図を見てみると、青色(18未満)や緑色(18以上20未満)に該当する駅は「稲毛海岸」のみとなっており、これまで分布してきた東京都下や神奈川県、埼玉県からも完全に姿を消している。
青色と緑色の合計シェアは2015年まで10%を上回っていたが、2016年以降は4%台~6%台とやや低い水準で推移していた。
コロナ禍になると郊外ニーズの高まりを受けて割安な物件が増えたために、2021年には9.1%まで持ち直していたが、その後はアッパー層への販売ターゲットのシフトを反映する形で5.2%→3.1%→1.0%と急激に縮小してきている。
また、比較的割安感がある橙色(20以上22未満)に該当する駅についてもJR武蔵野線以遠や「横浜」以西の郊外エリアに散見される程度しかない。これまでの首都圏平均をやや上回る赤色(24以上26未満)は16駅(シェア15.5%)で駅数・シェアともに最も大きく縮減した。
一方、賃料見合いで強い割高感を示す茶色(26以上)は68駅(同66.0%)と駅数・シェアともに大きく増大、その多くは前回まで赤色だった駅が販売価格の高騰によって茶色に変わったケースとみられる。
首都圏で最もマンションPERが低かった(割安感が強かった)駅はJR京葉線「稲毛海岸」の14.58で、賃料換算での回収期間は首都圏平均に比べて14年以上も短かった。
事業集積地の千葉市中心部にも近いことから、供給される新築マンションは都心部のみならず近隣エリアへ通勤する一般的な購入層などを含めた幅広い販売ターゲットを想定している。
さらに、今回対象となった物件が最寄駅から徒歩10分以遠の臨海エリアで供給されていたこともあり、平均価格(70m2換算)は3,021万円と首都圏の中でも非常に値頃な水準となっている。
ランキング上位の多くがJR武蔵野線以遠やミニ都心の横浜市以西といった郊外エリアに位置する駅で占められている中、東京23区内からも2駅が登場している。
第17位の「石神井公園」では対象となった物件が最寄駅から徒歩20分と離れていたため、第19位の「葛西」は千葉県に隣接している立地条件から、それぞれの平均価格は値頃な水準に抑えられていた。
一方、最もマンションPERが高かった(割高感が強かった)駅は都営地下鉄三田線「白金高輪」の53.07で、賃料換算では首都圏平均と比較して回収に24年以上も余計にかかる計算となる。
次点の「表参道」をはじめ、「白金台」「麻布十番」「神谷町」「渋谷」といった都心一等地に位置する駅では非常に高額な新築マンションが供給されていることもあり、これらの駅におけるマンションPERの水準はランキング下位の中でも群を抜いている。
「白金高輪」において対象となった物件は港区南麻布に立地する大規模タワーマンションで、周辺には有栖川宮記念公園や各国の大使館などがある閑静な住宅街ということもあり、平均価格(70m2換算)は31,238万円と非常に高額であった。
平均賃料(70m2換算)も490,515円と首都圏の中では高い水準を誇っているものの、急騰する販売価格に対して遅効性や粘着性といった特徴を有する賃料の動きは完全に後れを取っており、表面利回りも2%を割り込んでしまっている。
ランキング下位駅のほとんどがJR山手線エリアやその周辺に位置している中、近郊~郊外エリアからも3駅が登場している。第13位の「調布」は人気住宅地であり、駅近かつ第一種住居地域という希少性が高い立地で供給された新築マンションが対象となっていた。
同じく、第16位の「亀有」や第19位の「北浦和」における対象物件も駅近という高い立地優位性を背景に、強気の販売価格が設定されてマンションPERも高い水準になったとみられる。
築10年中古マンションで最もマンションPERが低かった駅はJR常磐線「北小金」の18.64で、賃料換算での回収期間は首都圏平均に比べて10年以上も短かった。ランキング上位駅の分布状況は前出した新築マンションと同様で、基本的には東京都下や周辺3県の郊外エリアに位置している。
東京23区内からも「一之江」が第19位に入ってきているが、新築マンションでのランキング上位に登場していた「葛西」と同じく、千葉県に隣接している立地条件により平均価格(70m2換算)は4,680万円と割安な値付けが為されている。
一方、最もマンションPERが高かった駅は東京メトロ半蔵門線「半蔵門」の67.92で、賃料換算では首都圏平均と比較して回収に40年近くも余計にかかる計算となる。
「半蔵門」で対象となったのは2グループで、それぞれのマンションPER(55.54、80.93)にはかなりの隔たりが認められるが、大きな差が生じたのは価格・賃料のサンプル対象となった物件のグレードが異なっていたためである。
仮に価格のサンプルとなった"番町アドレス"に立地する高級レジデンスと同じグレードの物件から生じた賃料を基にマンションPERを算出すると、その水準は50ポイント前後まで低下するが、首都圏の中でも割高感が非常に強いという事実は変わらない。
ランキング下位駅の分布状況は新築に比べて一段とJR山手線エリアへ収斂しており、都心部からやや離れている第12位の「用賀」に関しても世田谷区で人気の閑静な住宅地ということから平均価格(70m2換算)は1億円以上を維持している。
また、ランキング下位の7駅は新築マンションの方にも登場していたが、このうち「麻布十番」「神谷町」「東池袋」「渋谷」「月島」の5駅では中古マンションPERの方が高い数値となっていた。
いずれの駅でも経年によって新築の賃料水準を下回っていたが価格水準自体の差はほとんどなく、むしろ新築の価格水準を上回っているケースすら見受けられる。
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