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2019.06.04

お買い得な住戸を見分ける!「m2単価」でとらえるマンション価格

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ご存知の方もいるかもしれないが、不動産業界では、マンションの価格や地価などを「坪単価(1坪=約3.3m2あたりの価格)」で語る場合が多い。マンションの面積は「m2」で表示されるのに、なぜ「坪」なのかという疑問には、業界の慣習としか答えようがないが、重要なのはどの単位を使うかではなく、「単位面積あたりの価格」でマンション価格を捉えるということだ。

そして、価格を面積単価で考えることは、プロ(不動産業者)だけでなく住宅購入を検討する一般の人にとっても、実はかなり有用である。本コラムでは、その効能を解説していくが、面積の単位には一般的になじみがある「m2」を使って、話を進めていくことにする。

マンションの平均価格が下がっても相場下落とは限らない

首都圏で新築マンション価格が目立って上昇し始めたのは2013年。以降、数年にわたって上昇トレンドが続いているわけだが、今年1月に不動産経済研究所が発表したデータによると、2018年の年間平均価格は5,871万円で、前年の5,908万円から▲0.6%と、わずかながら下落に転じている。

この数字だけを見れば、「東京五輪前後のマンション価格下落説」を聞いたことがある人などは、ついにマンション価格上昇が終わりを迎えたか、とざわついても不思議ではない。

出典:不動産経済研究所

しかし、同じ発表資料をよく見ると、2018年の平均m2単価は86.9万円/m2であり、対前年比1.2%上昇とある。平均価格は下落しているのに、平均m2単価は上昇しているというのはどういうことか。

ここではデータを割愛するが、地域別の供給戸数を見ると首都圏では相対的に価格が安い千葉エリアの供給割合が高まっており、そのことが平均価格を押し下げたと見ることができる。

その一方で、神奈川エリア以外はm2単価が対前年比で上昇しており(都区部は5.1%も上昇)、首都圏全体では平均m2単価が上昇しているという結果となっている。

「m2単価」で見る習慣が、気づきにつながる

これらのデータを見る限り、平均価格が下がったのは、価格が相対的に安いエリアの供給割合が高まっただけで、エリアごとの価格相場自体は下がっていないと受け止めるのが妥当だろう。

平均m2単価が下がった神奈川にしても、推測だが県内で地価の水準が安いエリアの供給割合が高まった(または高いエリアの供給割合が低下した)だけかもしれない。というのも、冷静に考えてみれば、首都圏の地価は上昇基調にあるし、建築費の相場が下がったという話も聞こえてこないわけで、今のところ新築価格が下落する材料は見当たらないからだ。

こうした分析は、マンション価格を「m2単価」で見る習慣があるからこそ可能になる。もちろん、不動産関連の報道資料を詳細に確認する必要はあるが、そこまでしなくても「m2単価はどうなのか」という視点をもつだけでもいい。それだけで「マンション価格が対前年で下落」と短くまとめたニュースの見出しだけを見て、現実の価格トレンドを見誤ってしまうことは、少なくとも避けられるはずだ。

割安な住戸がひと目でわかる指標

マンション価格を「m2単価」で見る意味は、ほかにもある。「m2単価」は文字通り面積条件を固定した価格なので、複数の物件や住戸を検討する際に比較しやすい。マンションは同じ建物内でも、住戸ごと価格も面積も微妙に違うケースが多く、たとえば70m2で5,000万円の住戸と75m2で5,500万円の住戸では、どちらが割安か即座には判断しにくい。

しかし、これらをm2単価で表せば、前者は71.4万円/m2、後者は73.3万円/m2となり、前者のほうが割安なのが、ひと目でわかる。ただし、同じ建物内の場合、m2単価の高低には必ず理由があり、例で言えばm2単価が高い後者のほうが、方角であったり、階数であったりの条件がよいはずだ。その意味では、同じ建物内で比較検討する住戸のm2単価に差がある場合、その理由を確認することで、価格に影響する諸条件の違いを明確にしたうえで選べるようになる。


「m2単価」の差は、資産価値の差に通じる

また、異なるエリアで、設備仕様等が同等のm2単価が100万円/m2と150万円/m2の新築マンションがあった場合、両者のm2単価の差は、面積の差異は考えなくてよいので、ほぼエリアの人気の差によるものということになる。要は、m2単価が割高な後者のほうが、相対的に人気が高いエリアにあることを意味するわけだ。ここで注意しなければならないのは、エリアの人気差は将来売却する際の資産価値に影響を及ぼすということだ。

どういうことかと言えば、たとえばm2単価が100万円/m2のエリアは10年後の価格維持率が新築時の8割水準に下落し、150万円/m2のエリアは人気の高さから新築時の9割水準を維持するというような、価格維持率に格差が生じる可能性があるわけだ。この場合、m2単価上の目減りは、前者は20万円/m2、後者は15万円/m2となり、同じ面積であれば新築時に割安だった前者のほうが、金額ロスが大きくなってしまう。

要は、割安なほうを選んだほうが、結果的に実質負担額が大きくなるという逆転現象も起こりうるのがマンションであり、m2単価で価値を測っておかないと、こうしたことに気づくのが難しくなるのだ。

マンション購入を検討する場合、価格(業界ではグロス価格という)がいくらなのかは、住宅ローンの借入額を左右するという点で重要な要素には違いない。しかし、その点を除けば、マーケットのトレンドを知るにしても、比較検討する物件の価値を測るにしても、面積という変数を考慮しなくてよい「m2単価」のほうが使い勝手がいい、というのが筆者の意見だ。

「m2単価」をプロ(不動産業者)だけの指標にしておくのはもったいない。一般のマンション購入検討者にとっても極めて有用な物差しとなるので、ぜひ上手に活用していただきたい。

山下伸介(やました・しんすけ)

山下伸介(やました・しんすけ)

住宅ライター
1990年、京都大学工学部卒業、株式会社リクルート入社。2005年より住宅情報誌「スーモ新築マンション」「都心に住むbySUUMO」等の編集長を10年以上にわたり務め、2016年に独立。現在は住宅関連テーマの企画・執筆、セミナー講師などを中心に活動。財団法人住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー」運営委員も務めた(2005年~2014年)。株式会社コトバリュー代表

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