購入vs賃貸　新築vs中古の新常識

2012年4月26日

「購入か賃貸か」「新築か中古か」という選択は、マイホーム購入の2大テーマともいえます。いろいろな比較方法がありますが、最近の市場動向や買主の動きを踏まえて、新たな視点で検討してみましょう。

何かのきっかけで住みかえを思いたったとき、誰しも一度は「購入か賃貸か」で迷ったことがあるのではないでしょうか。
比較するときの主な視点は、図1のように整理できます。

住宅雑誌などでは「購入も賃貸も一長一短があり、ライフスタイルや価値観に合う方を選びましょう」といった結論が出ることが多いかもしれませんね。いわば「どっちもどっち」というような痛み分けの結論ですが、こうした見方は、価格や金利が今よりもずっと高かった時代の状況を反映しているからではないでしょうか。
「買うか借りるか」は永遠のテーマともいわれますが、比較の前提が10年前や20年前とは大きく変わってきているのも事実です。

たとえば、買ったときと借りたときで支払額がどう変わるかは、もっとも気になるポイントの一つでしょう。以前は、購入したときの「住宅ローンの毎月返済額」と賃貸のときの「月額家賃」を比べて、同レベルで迷うことはありました。年間支払額で見ると購入するほうが多いため、「購入できる代わりに、多少は生活を切り詰めないといけない」というわけです。そこで「住宅ローンの重い返済に縛られるよりも、負担の軽い賃貸のほうがいい」という見方もでてきました。

しかし、現在では「毎月返済額」と「月額家賃」を比べると、前者の負担が明らかに軽くなるケースが増えています。年間支払額でも、賃貸より購入のほうが少ないのです。

「購入すると簡単に住みかえはできない。賃貸なら気軽に引越せる」というのは、賃貸派を支持する大きな理由の一つです。この点についても、ひと昔前と今では状況が変わってきました。

昭和末期のバブル以降、10年ほど前までは住宅価格がずっと値下がりを続けていたため、「値上がりを期待するステップアップの買いかえはできないから、永住を考えて購入するべき」といった論調が広がっていました。

しかし2002年～2004年頃に底を打ってから、多少の価格の上下はありますが、「買ったら必ず下がる」という傾向はなくなっています。少なくとも、良い物件を選んでおけば、値下がりし続けるといった悲観的な見方をする必要はありません。

また、今では、買いかえることも難しくありません。昔は、一度購入すると10年程度は住み続けるのが一般的でした。数年後の勤務状況がわからないなど、不確定な要素がある場合には、「購入を見合わせて、とりあえず賃貸にしておこう」という選択もありました。しかし、最近では購入後2～3年で買いかえるケースも珍しくありません。

また、2005年～2007年の不動産ミニバブルで価格が高騰する前に分譲された立地の良いマンションの中には、買った当時よりも価格が上がり、売却益が発生するケースもあります。こうした物件を売って、より広いマンションへ、あるいは、より利便性の高いマンションに買いかえる人もいます。

「買っても気軽に住みかえられる」と考える人は着実に増えています。以前とは常識が変わってきたといえるでしょう。

かつては"住宅すごろく"という言葉があり、人生における住みかえのステップは、アパートからスタートして一戸建てでゴールを迎えるのが理想とされていました。これに対して現在は、親元からの独立と同時に購入したり、購入した後に売却せずに買い増ししたり、自宅を貸して住みかえたり、実に多様な住まい方が実現しています。単純に「購入派」と「賃貸派」という二者択一の価値観ではなくなっているといえるかもしれませんね。

もちろん、こうした多様な住まい方を実現するためには「値下がりしにくい物件」「売却した後にローンが残らない物件」「ローン返済額より高く貸せる物件」を選んでおく必要があります。言いかえると、購入の仕方、物件の選び方さえ間違わなければ、購入しておいたほうが住まい方の選択肢が増えますし、場合によっては得をすることもあると言えるのではないでしょうか。