特集・注目エリアの地価動向【大阪湾岸・神戸】
2019年10月01日
25年の万博開催地に決定し、鉄道の延伸計画もある大阪市の湾岸エリアは、IR誘致の候補地としても有力視されており、住宅地としてのポテンシャルが高まっている。19年の都道府県地価調査では、「調査地点ではないため結果に反映されていないが、大阪市西部の湾岸地域で価格の上昇した取引があったことは確認している」(国土交通省)。
湾岸エリアの咲洲・コスモスクエア地区では住宅の開発計画も進行中で、近鉄不動産らによる大規模新築分譲マンション「大阪ベイレジデンス」(総戸数330戸)が、今秋から販売が始まる。
同物件は、大阪メトロ中央線・コスモスクエア駅徒歩3分の立地で、2LDKで2900万円台から、3LDKで3200万円台からと市内中心部より安価な価格設定もあり、モデルルームへの来場者数は順調に推移。「地元の注目度は高い。今後の期待感とともに上昇が見込める物件であり、徒歩3分の好立地は希少性も高い。同規模の物件開発が可能な隣地があり、エリア全体の将来性を見込んでいる」(近鉄不動産マンション事業本部マンション事業部課長・清水洋介氏)とする。
ただし、湾岸エリアの今後の見通しについては、土地価格が急速に上昇する可能性は低いとする見方が目立つ。大阪市西部は埋立地が多く、交通インフラが整っても「大阪地元の人間からはこれまでと同様に高い評価は得られない」「民泊利用を見込むインバウンドの人気は想定できるが、住宅地としての需要は小さい」とポテンシャルは未知数と捉えるデベロッパーの声もある。
一方で、大阪市内中心部は「坪単価300万円を超えるマンションの販売が順調に進んでいる」(近鉄・清水氏)中で、市内中心部での今後の用地取得は困難な状況。複数の大手デベロッパーは「大阪市の湾岸エリアは、開発が進む前の東京・豊洲と似た状況にある」とみており、将来的に開発地が徐々に湾岸エリアの方向へシフトしていくとする見方もある。
実際に、此花区では数年で坪単価が数倍に上昇した土地取引もあるようだ。ほかに、分譲マンションの開発適地として西九条、弁天町、大規模物件ではコスモスクエア駅やトレードセンター前駅周辺が有望とみられる。夢洲地区では、ホテル需要の増加も見込まれる。中央線やJR桜島線の延伸計画の影響で利便性が上がる湾岸エリアは、今後に向けたポテンシャルの高さが窺える。
神戸市は7月、「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」の一部を改正し、タワーマンション建設規制といわれる規定を盛り込んだ。三ノ宮駅を中心としたエリアに、商業・業務機能など都心機能の誘導を図り、住宅開発を三ノ宮駅南側約22haの範囲は原則禁止。
JR神戸駅からJR三ノ宮駅付近のエリアでは、容積率緩和を撤廃し400%に制限して、タワマン開発を実質的に制限した。神戸市は、条例改正の趣旨を三ノ宮駅前の再整備計画にあるとする。「長期的に神戸市の成長を展望した場合、00年代以後に増えたタワマンの開発よりオフィスや商業施設など都市機能の活性化を優先」(神戸市)する。神戸市は人口減少に転じており、既に推計10万8000戸の空き家対策など、市全体の活性化が急務と捉えている。
こうした中心部の住宅開発抑制にデベロッパーは批判的だ。各社は三ノ宮駅周辺で活発な開発が行われた理由を、「大阪への交通利便性も含め阪神間の住宅ニーズが高かったから」と分析。「今回の規制区域外の市域などで住宅ニーズが見込めるかは不透明。利便性を重視するニーズと逆行している」とする。
新築分譲マンションの供給不足が見込まれるため、中古マンション市場の活性化が期待される。仲介会社からは、「三ノ宮駅周辺の30階以上の高層階の部屋などは、必然的に希少価値が高まる」との声も。
一方で条例施行が20年7月1日であるため、6月末までにタワマンなどの大規模なマンション開発計画の着工があることも予測される。また条例施行後も、住宅開発を原則で禁じた地域でも、富裕層向けホテルレジデンスなど都市機能と融合して市の発展を促進すると認められる住宅については、計画を個別に審査し、市長の許可を得て開発することが可能となっている。
神戸市では、「都心部はグレードの高い住宅に限定し、市内の空き家問題にも取り組み、市全体で持続的な身の丈に合った発展を目指す」(神戸市)としている。
(提供:日刊不動産経済通信)
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