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国税庁、20年分路線価5年連続で上昇

2020年07月02日

国税庁は7月1日、20年分の路線価を公表した。全国の平均値(標準宅地の評価基準額の対前年変動率の平均)は1.6%の上昇となり、前年の上昇率1.3%を上回った。上昇は5年連続となったが、コロナの影響が織り込まれておらず、土地取引の時価と乖離するおそれが出ている。国税庁は、コロナにより年の途中で地価が大幅に下落することを想定。初となる路線価を補正する手段の準備を進めている。

最高路線価が上昇した都市は38都市(19年は33都市)に増え、横ばいの都市は8都市(13都市)に減少。下落した都市は昨年から変わらず1都市(水戸、△2.2%)。上昇率が最も高かったのは沖縄県の+10.5%(+8.3%)。都道府県庁所在都市の最高路線価は、東京・中央区銀座5丁目の「中央銀座通り」(鳩居堂前)が35年連続のトップとなった。1m2当たり4592万円(前年比+0.7%)で、最高路線価を4年連続で更新した。

首都圏は東京都+5.0%(+4.9%)、神奈川県+1.1%(+0.9%)、埼玉県+1.2%(+1.0%)、千葉県+1.2%(+1.0%)となり1都3県は上昇が継続。近畿圏は、京都府+3.1%(同)、大阪府+2.5%(+1.9%)はプラスを維持したが、兵庫県が△0.1%(+0.0)となりマイナスに転じたほか、奈良県△0.3%(△0.3%)などで下落が進んだ。

相続税・贈与税の申告で土地の評価額の判断に用いられる路線価は、毎年1月1日を評価時点として、時価の80%程度になるよう設定される。しかし年の途中で地価が大幅に下落すると、路線価が時価を上回ることになる。この場合、納税者は不動産鑑定士に依頼し、鑑定評価額を個別に用意して申告する手法が従来からあり、実際にバブル崩壊時に活用された例がある。

国税庁は今年、コロナの影響で大幅な地価下落が起きた場合、従来手法に加えて、新たな補正方法を用意する方針だ。最も簡易な方法としては補正率を設定し、「路線価×補正率」とするものが考えられるが、詳細は今後詰める。大幅な下落とは「20%以上の下落」を想定。国土交通省の都道府県地価調査(例年9月公表)や地価LOOKレポートの確認に加え、国税庁も独自に地価動向の調査を行うなど今後の地価の動きを注視。10月以降に補正手段を公表する。

20年分路線価に対し、業界からは次のようなコメントが寄せられた。

菰田正信・不動産協会理事長 内需の柱である住宅投資の活性化や都市・地域の活力を高めるための都市再生の強力な推進等によって、新型コロナウイルス感染症の影響により加速している社会構造やライフスタイルの変化を的確に捉え、国民の暮らしを豊かにするまちづくりや住生活の実現に向け取り組んでいくことが求められる。

とりわけ、デフレリスクを払拭し経済の力強い回復を妨げないためにも、固定資産税評価替えが来年度に予定されている中、安定的かつ確実に固定資産税の負担軽減を図ることが不可欠だ。

坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 路線価の評価には、新型コロナウイルス禍の影響が反映されていないことに留意が必要だ。直近の国土交通省の地価LOOKレポートは地価上昇の傾向が鈍化、全宅連不動産研究所の土地価格DI調査では価格下落への先行き懸念の声が多く聞かれている。不動産市況や地価にどのような影響を及ぼすかは未知数でもあり、来たる7月1日が評価基準日となる都道府県地価調査の結果を注視したい。

原嶋和利・全日本不動産協会理事長 路線価の基準時は新型コロナウイルスが国内で蔓延する以前であり、国土交通省の地価LOOKレポート第1四半期によれば、4地点でおよそ6年ぶりに下落の値を示したほか、上昇率の鈍化傾向が表れている。地価の健全な上昇は日本経済の発展を牽引する大きな要素の一つであり、政府にはこれまで続いた上昇基調を堅持し経済全体の浮揚を期するため、是非とも積極的な政策を打ち立ててほしい。

吉田淳一・三菱地所社長 今後は、新型コロナウイルスとの共存を踏まえ、引き続き感染防止対策を講じながら、当社グループとしてまちづくりを通じた社会貢献を継続していく。ビル事業においては今後も様々なテナントニーズを踏まえた生産性向上・付加価値創出に資するオフィス空間を提供していく。住宅事業においては、共働き世帯増加に伴う堅調な都心居住ニーズから、テレワーク活用に伴う郊外居住ニーズに至るまで、入居者のライフスタイルやニーズに対応した商品開発・サービスを展開していく。

(提供:日刊不動産経済通信)

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