2020年地価公示・全国的な地価の回復傾向の広がりが反映
2020年03月19日
地価の上昇基調が拡大した今回の地価公示を受け、業界トップは次のようにコメントを発表した。
菰田正信・不動産協会理事長 不動産に対する堅調な需要が持続していることが、全国的な地価の回復傾向の広がりとして反映されたものと評価している。人口減少・少子高齢化やデジタル・トランスフォーメーションの進行などの不動産業を取り巻く環境や都市のあり方を的確に捉えたまちづくりを通して、新たな価値を創造し、持続可能な経済社会の実現に貢献して参りたい。
山代裕彦・不動産流通経営協会理事長 わが国経済は、雇用や所得環境の改善等に支えられ緩やかな回復基調を維持してきたものの、昨秋の台風による甚大な被害の発生に加え、日米貿易摩擦や、このところ日々深刻化する新型コロナウイルス感染症拡大の影響が懸念され、国内外にわたり先行き不透明な状況にある。
既存住宅の流通市場においても、東日本不動産流通機構の成約統計では、昨年10月以降、価格は前年を上回って推移しているが、件数は対前年比で減少に転じており、営業現場の取引の動きにも鈍化傾向が見受けられる。今後の金融、価格、消費者動向などマーケットの変化には注意を払う必要がある。
坂本久・全国宅地建物取引業協会連合会会長 三大都市圏や地方四市の堅調な上昇基調に加えて、地方圏の全用途平均・商業地が28年ぶりに上昇となるなど全国的な回復傾向の広がりは歓迎したい。併せて、国交省の地価LOOKレポートにおいても全国主要都市の地価の上昇基調は緩やかに継続している。本会が20年度税制改正で強く要望して実現した「低未利用地の適切な利用管理促進のための特別措置」の活用により、今後も地方圏の一層の回復に期待したい。
原嶋和利・全日本不動産協会理事長 良好な資金調達環境のもと、景気回復や所得環境の改善が続き、堅調な住宅需要やオフィス市場の活況を背景に地価回復や上昇を堅持していると考えられる。一方、今後は更に少子高齢化が加速し、人口が減少していくことは間違いなく、日本全国の平均的な地価は下がっていくことが懸念される。特に、将来を担う子供達の減少は国力低下にも繋がる深刻な問題であり、政府にはその対策と環境整備に尽力願うものである。
吉田淳一・三菱地所社長 今回の発表は景気回復、雇用・所得環境改善の下、堅調な住宅需要、オフィス市場の活況、国内外からの観光客の増加などを背景として、全国的に地価の回復傾向が広がっていたものと感じる。当社ビル事業においても、雇用拡大や働き方改革・生産性向上のための集約・拡張、立地改善やレイアウト変更を伴う移転需要が継続しており、低水準の空室率、賃料の上昇が継続している。
大隈郁仁・東急不動産社長 景気回復や雇用・所得環境の改善、低金利の継続、外国人観光客の増加などを背景に地価の上昇基調が全国に波及しているものと捉えている。外国人観光客の増加で商業施設、ホテルの需要も高止まりしている状況のなか、交通利便性が向上、あるいは国内外の観光客が増加しているエリアでは地価が大きく上昇している。今後については新型コロナウイルスの影響など不透明な情勢を全般的に見極めていく必要があると考えている。
野村均・東京建物社長 優良な開発用地、収益物件が減少しているなか、国内外投資家の収益物件への投資意欲は依然旺盛だ。オフィス・商業等のマーケットは堅調であり、分譲マンションは利便性を重視するパワーカップル、パワーシニア層の需要が底堅い。良質な住宅用地の取得競争は依然として過熱しており、当社では再開発・建替え案件の確保に注力している。
宮嶋誠一・野村不動産社長 首都圏における新築分譲マンションの販売価格は引き続き高水準にあり、特に利便性に優れた都心立地や駅周辺再開発等は高水準が継続している。新築マンションの供給量には減少傾向が見られるものの、一部では中古マンションへのシフトも見られるなど、実需は引き続き堅調な印象である。この傾向は、首都圏のみならず近郊部や三大都市圏、地方中核都市へも波及が進んでいる。
伊達美和子・森トラスト社長 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に注目されているが、安全貨幣である円とともに、安全資産である日本の不動産への投資意欲は事態の収束につれ、改めて見直されるものと考えられる。観光面において政府が掲げる観光目標の達成に逆風が吹いているが、日本の持つ観光ポテンシャルが消失するわけではない。事態終息後の反転攻勢を見据えた振興策として、官民一体となり持続的な観光産業基盤の構築に取り組んでいく必要がある。
(提供:日刊不動産経済通信)
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