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特集 コロナ禍の地価【都心住宅地】

2021年03月30日

今回の地価公示では、繁華街での大幅な下落が目立った一方、マンション適地では地価の動きは全国的に堅調だった。特に東京都心の高額マンションは富裕層の買い増し需要が旺盛なほか、DINKSの購入予算がコロナ以前よりも上昇するといった傾向もみられ、在庫は減少。株価や金利など経済環境の大幅な変化がない限り、この傾向はしばらく続きそうな気配だ。

三井不動産レジデンシャルは新築の分譲マンションについて、ここ最近は「パワーカップルの購入金額が増えており、高額物件の進捗が良い」とする。2月に売り出した大規模複合タワーマンション「パークタワー勝どきミッド」の1期2次(96戸)はほぼ完売に至った。最多価格帯が2億円超の高額物件「パークコート千代田四番町」(東京・千代田区、168戸)は1期1次で130戸を売り出し、238組の申し込みが入った。「パークホームズ日本橋本町」(東京・中央区、129戸)と近接する「パークホームズ日本橋時の鐘通り」(同、122戸)も年明けからの集客で、既に計513組が来場するなど好調な滑り出しだ。

三菱地所レジデンスの担当者も「都心在住のDINKSの負担力が上がった」と口を揃える。以前なら1億円は、明確な予算上限ラインとなっていたが、「1億2000万~1億3000万円の新築物件も購入するようになり、最も活発なのは1億円前半の物件」(同)。要因は様々だが、コロナ禍で交際費などが減少し、預貯金も増えたほか、家族で住まいについて話す機会が増えたことも背景にあるとみられる。

一方で、都心用地の取得は引き続き厳しい状況だ。用地の取得競争ではかつてはホテル事業者と競合していたが、最近では、「ロードサイドなら賃貸マンションを、環境の良い立地なら有料老人ホームを開発した方が収益性が高くなるケースがある」(三菱地所レジデンス)ため、分譲マンションを開発するより、他のアセットタイプが優先される場合もあるという。都心マンションの新規供給は引き続き絞られ、需給はタイトな状況が続きそうだ。

麻布、青山、赤坂の3Aエリアなどを中心とする都心高額マンションは中古も好調な取引が続く。リビタがNTT都市開発とともに手掛けたマンション「オパス有栖川」(港区南麻布)内のリノベーション物件は、販売が順調だ。両社は複数戸を取得しており、販売額が7億円超ともみられた著名インテリアデザイナーが手掛けた住戸は、象徴的な意味合いもあり積極的な販売を行っていないが、その他の3億5000万~5億円の物件は販売が順調に進んでいるという。

三井不動産リアルティは、3Aに広尾や六本木、番町などを含めたエリアの都心高額帯専門の仲介店「リアルプラン」の取り扱いで、成約件数は今期第2四半期(2Q、7~9月)が過去15年間で最高、3Qもそれに近い件数まで伸び、成約価格も3Qは過去最高を更新した。野村不動産アーバンネットも、全社の成約件数が20年度下期は前年同期比1割増の水準のなか、都心では2割増となり好調さがうかがえる。都心高額帯専門の仲介店「グランタクト」を展開する東急リバブルも、実需を中心に成約件数が高い水準で推移。住友不動産販売も市況を「都心高額帯の方がより好調なのではないか」とみるなど、同エリアでは好調さが続いている。

3Aエリアでは、富裕層や資産家による買い替えの実需と買い増し、相続税対策や投資としての需要が混在する。購入層はパワーカップルや会社経営者、資産家など。実需では1億円台前半がよく動き、実需以外では2億円前後の取引が多い。資産家が複数物件をまとめて数十億円で購入するのも珍しくない。

コロナ以前はインバウンド需要が強く、中華系外国人が市場を牽引し、「坪単価1000万円超えの物件は外国人の購入がメインだった」(三井不リアル・青山リアルプランセンター・川村康治所長)。コロナ禍で購入層は日本人となったが、外国人の潜在需要は強くコロナ収束後はさらに活況となる可能性もある。

また、物件の希少性から買取再販業者の強気の仕入れも目立つ。市場価格の2、3割安で仕入れてリノベーションし、市場価格に合わせて販売するのが一般的だが、「今は1割安か市場価格ジャストで買い、リノベーション費を乗せて販売する業者が多く、価格を引っ張っている」(リバブル・グランタクト事業部・村林修部長)。

価格の上昇は顕著で、08年竣工の赤坂の物件が新築分譲時の2倍以上の坪単価700万円超で成約した事例や、新築分譲時に9000万円に満たなかった赤坂の物件(14年竣工)が1億5000万円超で成約した事例なども出ている。いずれもコロナ禍以降の取引で価格が落ちる気配はない。概ね築10年の物件で分譲時より5割上昇し、2、3年の築浅物件でも2割増となるケースも稀ではない。

在庫の少なさから、数年間動かなかった物件がコロナ禍以降に成約するケースも出ている。売り主側が様子見しているのは、コロナ禍での中古価格の上昇が一般的に認知されていないことに加え、「価格がさらに上がるとみて売り時を待っている人もいる」(野村不ア・流通事業本部都心営業統括部・木村州宏部長)ため。ただし、「1億5000万円を超えると実需層が厳しくなる」との指摘もある。

(提供:日刊不動産経済通信)

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