上半期のマンションが好調
2021年07月26日
今年上半期の首都圏・近畿圏のマンション市場動向がまとまった。首都圏は発売戸数が1万3277戸となり、前年同期との比較では77.3%増と大きく伸ばした。しかし昨年は最初の緊急事態宣言中にほとんどのモデルルームの営業が止まり、上半期としては調査開始以来最少の7489戸にとどまっていたので、この増加幅はその反動によるもの。
一昨年上半期の供給1万3436戸との比較では、今期は僅かながら下回っている。一方で近畿圏を見ると、今年上半期の供給は8373戸。前年同期比58.0%増と大幅増となったのは首都圏と同様であったが、一昨年上半期の7514戸との比較でも11.4%上回った。市場は首都圏についてはコロナ前と同水準、近畿圏はそれ以上に回復したと言えるだろう。
しかし首都圏の今期と一昨年同期を比較してみると、今期は昨年下半期からの好調が継続している一方、一昨年は多くの物件で契約が進まずに販売が長期化し、必ずしも市況は好調とは言えなかった。
実際に19年上半期の初月契約率は66.5%に過ぎず、今期の72.5%と比較すると6ポイントも低かったのだが、今期の供給戸数がその一昨年上半期に届かないというのは、市況が好調であるが故に意外に思える。
その要因としては、まず定借物件の供給が増えている点が挙げられる。今期の首都圏での定借の供給413戸を発売戸数に足すと1万3690戸となり、同様に定借を加えた19年上半期の戸数1万3669戸を上回ることになる。しかしその差は僅か21戸に過ぎず、まだエンドユーザーの積極的な動きに対して供給の伸びは目立っていない。
やはりもう一つの要因である用地不足の問題が大きいのだろう。2~3年前からマンション用地の取得は地価の高騰などから難しくなっており、コロナ禍を経た今もそれは変わっていない。
市況が好調だからとこの後に売り出す予定の物件を前倒しして販売すると、多くのデベロッパーは来年以降に販売する物件を確保できなくなってしまう。そのために売り急がず、決まったスケジュールを守って販売を続け、好調な市況の割に発売戸数の伸びは限定的なものになる。
その結果として首都圏では在庫の圧縮が進む。上半期終了時点の在庫数は6395戸と前年同期比では13.4%も少なくなっている。
価格面でも首都圏と近畿圏とでは異なる動きとなった。近畿圏の価格を見ると、戸当たり価格4360万円、単価73.3万円は前年同期比8.3%、7.8%といずれもアップしており、単価は73年の調査開始以来最高となった。
大阪市のシェアは35.4%と、前年同期比10.2ポイントも低下したにも関わらず単価が最高値を更新したのは、大阪市や神戸市の中心部でタワーマンションの供給が積極的に行われたため。また全般的な地価高騰の影響もより大きくなってきている。
その一方で首都圏は価格が下落した。戸当たりは6414万円で前年同期比3.9%ダウン、単価も96.2万円で同比6.7%ダウンとなった。戸当たり、単価ともに上半期としては実に9年ぶりのダウンである。これについては郊外部のシェアが伸びていることが大きく影響している。
また前年同期には都心で大型タワーマンションの供給が行われており、その反動で落ち込んだという側面もある。20年年間との比較では戸当たり、単価ともに高くなっていることから、決して首都圏が価格下落の局面に入ったわけではない。
はたして首都圏・近畿圏のマンション市場は下半期も順風なのだろうか。まず近畿圏については、引き続き大阪市内のタワーマンションの発売が市場をけん引する。それによって価格はさらに上昇する可能性があるものの、上半期の勢いが失われることは考え難く、好調な市況に大きな変化はないだろう。
一方、首都圏については当初オリンピック・パラリンピックの開幕に合わせて人の移動を極力抑えるという動きがあり、もしオリンピックが有観客で開催されていれば大会期間中は多くのモデルルームの営業に制限が掛かっていただろう。そうなっていれば7月下旬からお盆休みを挟み9月上旬までの2カ月弱、販売が縮小することも考えられた。
しかしオリンピックは無観客での開催となり、影響は大きく低下することになる。各デベロッパーのホームページなどを確認すると、開会式当日の23日に休んだモデルルームは一部あったようだが、今のところはほぼすべての物件が大会期間中もコロナ禍における通常営業となっている。
8月24日からのパラリンピックは有観客となる可能性はあるものの、観客数は制限が掛けられる可能性が高く、マンション販売への影響は大きなものにはならないだろう。モデルルームは例年通り8月中旬に一旦お盆休みに入り、その後は速やかに秋商戦へと移ることになる。エンドユーザーのニーズにも大きな変化はなく、郊外の人気も高い状態が続きそうだ。
首都圏の下半期の供給見込みは1.9万戸と、市況が急回復した前年同期とほぼ同水準の供給となる。年間供給は3.2万戸と3万戸を超え、首都圏も市況の勢いに陰りは見られない。
(提供:日刊不動産経済通信)
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