21年都道府県地価調査、2年連続で下落
2021年09月22日
国土交通省は21日、都道府県地価調査(21年7月1日時点、基準地数2万1443地点)を公表した。全用途平均は前年比△0.4%(20年△0.6%)となり、2年連続で下落した。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした地価の下落傾向は、依然として商業地に色濃く出た。一方で、三大都市圏で名古屋のみV字回復をみせるなど、新たな動きもみられた。
全国的に地価下落は継続したが、用途別でみると、住宅地の全国平均は△0.5%(△0.7%)で、下落幅は昨年より縮小している。堅調な住宅需要により都心部の希少性が高い住宅地では上昇が継続し、昨年より上昇した地域の範囲も拡大した。
コロナの影響が初めて大きく表れた昨年の同調査でもプラスを維持した地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)は、住宅地が+4.2%(+3.6%)となり、昨年より上昇の勢いを強めている。
特に、札幌市の住宅地は+7.4%(+6.1%)に上昇し、地方四市内だけでなく、全国の県庁所在都市の住宅地で最も高い上昇率となった。札幌市の住宅地は、鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心に需要が堅調。中央区とその隣接区のほか、相対的な割安感のある手稲区、厚別区などの周辺区にも需要の広がりがみられる。
住宅地で変動率がプラスになった都道府県の数は7(北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、福岡県、沖縄県)で、20年の5から増えた。このうち住宅地で最高となったのは沖縄県で+1.6%(+4.0%)。上昇率は落ちたが沖縄は6年連続で住宅地の都道府県別トップとなった。
底堅い需要に支えられ、エリアによっては上昇度合いを高めている住宅地は、コロナの影響は軽微だったといえる。対して、商業地の全国平均は△0.5%(△0.3%)で、昨年より悪化した。東京圏の商業地は+0.1%(+0.7%)でかろうじてプラスを維持したものの、大阪圏は△0.6%(+1.2%)でマイナスに転落している。
コロナ禍直前までインバウンドで活況にあった大阪圏は特に反動が大きい。大阪市道頓堀地区の商業地「中央5-3」(なんば駅230m)は、m2当たりの地価が1900万円で、△18.5%。商業地で全国1位の地価下落率となった。観光客の激減でテナントの撤退が相次ぎ、物販や飲食店舗の収益性が大きく低下したことが影を落としている。
このほか大阪圏では京都市伏見地区の「伏見5-1」(稲荷駅50m)がm2当たり45.6万円で△10.6%。ホテルや飲食店が集積する地域で需要減退が続き、先行きの不透明感が漂う。
商業地で変動率がプラスの都道府県の数は昨年の10から6(宮城県、千葉県、神奈川県、愛知県、福岡県、沖縄県)に減少した。コロナの影響を大きく受けるなかでも都道府県別で全国トップとなったのは福岡県で+2.7%(+2.1%)。中心部の福岡市は+7.7%(+7.5%)であり、県庁所在都市でも全国1位。「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」の二つの大規模再開発が進む博多地区・天神地区を中心とする地域でオフィス需要が堅調だった。
地価の下落基調が続くなか、名古屋圏の回復が目立っている。三大都市圏のなかで名古屋圏だけが、全用途平均・住宅地・商業地の全てでマイナスを脱し、プラスに転じた。
商業地のプラスは、「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」の運用開始によって、名古屋の中心であるこのエリアの容積率が緩和されたことが背景。緩和により再開発が進展し、投資活動が活発化して地価が上昇した。住宅地は、名古屋中心部から東の豊田市まで、プラスのエリアが広がった。
特に自動車産業が盛んな豊田市・岡崎市などの西三河地区は、「愛知県全体の人口増加率を上回る人口増がみられ、住宅の需要に結びついていると思われる」(不動産・建設経済局地価調査課)。
コロナの影響が初めて表れた昨年の都道府県地価調査では、名古屋は三大都市圏のなかで唯一、住・商ともマイナスとなった。今回、V字回復となった裏側には、「当時はまだコロナの影響が出だした頃で、今後どうなるのか分からない状況のなか、製造業の占めるウェイトの大きい名古屋の将来予測が悲観的となって出た部分があるかもしれない」(同)と振り返る。
(提供:日刊不動産経済通信)
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