特集 21年地価動向(2)・東京郊外マンション
2021年09月28日
21年都道府県地価では、全体として商業地に比べ住宅地の回復が先行している傾向がみられた。東京圏の住宅地の平均変動率は+0.1%の上昇で、前年調査(△0.2%)と21年3月の地価公示(△0.5%)で続いていた下落の傾向から転換した。分譲マンションなどの住宅需要が堅調なエリアがけん引役となり、特に千葉県、埼玉県、神奈川県のうち東京23区に隣接する市の上昇が目立った。
東京に隣接するエリアのマンション販売が好調なのは、都心物件の人気が根強く、価格上昇が続いていることが背景にある。都心で広い新築住戸を手に入れようとすると1億円を超えてしまい、当面は都心価格の低下も期待できない。
そこで、アドレスや多少の通勤時間には目をつぶる代わりに、広い間取りと高い生活利便性、都心では得られない周辺環境を、手の届きやすい価格で得ようとする都内居住者がコロナ禍を契機に増えた。実際は都心物件を購入する収入はあるが、コロナ禍の影響を受け、予算面で保守的になった層の受け皿にもなっているようだ。
三菱地所レジデンスなどが販売する千葉県浦安市の「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」(528戸)はバス便物件だが、海に近く、リゾート感のある住環境が評価されている。浦安は分譲エリアであるため近隣で賃貸物件に住む一次取得者が少ないこともあり、来場者の6割は都内在住者が占める。
特に湾岸エリアに当たる東京・江東区や同中央区の居住者が目立つという。「さいたま新都心と海浜幕張の大型物件を比較するなど中広域で検討している層もいる」といい、「販売担当者は離れた様々なエリアと比較して説明するようになった」(同社販売責任者)と営業手法にも変化がみられる。
ただ、東京隣接エリアならすべて好調というわけではない。重視される要素の一つに「駅力」がある。最寄り駅から東京都心エリアに快速などでアクセスでき、駅舎も比較的新しく、周辺で生活が完結できる駅の物件は「地縁のない若い層も入りやすい街」(三菱地所レジデンスの販売責任者)として人気だ。
都心物件と同様に「駅近」「再開発」「複合」「タワー」などもキラーワードだ。野村不動産が11月から販売を開始する埼玉県川口市の「プラウドタワー川口クロス」(地上28階建て・481戸)は、東京駅まで20分の京浜東北線・川口駅徒歩3分の複合・再開発・タワー物件。
これまでの物件エントリーは3500件に上り、うち40%は市内在住者、35%は都内在住者と、地元と都内からの反響数が拮抗する。販売価格は未定だが、3LDKで7000万円台中心と都内のタワマンと比べれば割安感がある。「比較的広い面積のプランが多く、コロナ禍で増えた在宅時間を理由に広い間取りや間数を求める層に注目してもらっている印象」(野村不動産)という。
東京隣接エリアからさらに入った郊外型マンションも好調だ。横浜市緑区で相鉄不動産と伊藤忠都市開発が共同で分譲する「グレーシア横浜十日市場」(256戸)は、10月1、2日に第1期の登録を受け付け、100戸の大型供給を開始する。JR横浜線・十日市場駅から徒歩5分の立地。
東急東横線沿線など広域から注目を集め、来場数は300組と想定を上回る。横浜市の公募で選ばれた事業で、子育てと地域コミュニティ醸成の持続的な取り組みや、周辺を含めた新しいまちづくりに期待が寄せられている。平均坪単価は230万円で、販売中の周囲の物件より約1割ほど高額な設定だが、大規模物件ならではの多彩なシェア共用部や、賃貸住宅の賃料を活用したエリアマネジメントなど充実したサービスも支持を集めている。
総合地所が千葉県市原市で分譲する「ルネ市原八幡宿」(219戸)の第1期第1次販売では、供給した20戸が即日完売した。現在までに30戸を供給し、25戸が契約済み。平均坪単価は155万円。JR内房線・八幡宿駅から徒歩8分の立地でRC造14階建て。
19年の台風被害の影響もあり、住戸内に一時避難が可能な廊下など災害耐性を高め、共用施設も豊富な新たな住生活を訴求する。担当者は「単身者も含めた賃貸住宅からの住み替え需要などを獲得した。市原市はゴルフ場やグランピング施設などレジャー施設が多く、想定外に都内からセカンド需要の契約もあった」と話す。
郊外マンションは、「過去に物件の供給実績があり、近年は供給がなく、加えて駅利用者の人数など関係人口が見込める条件が揃ったエリアが有望」(長谷工不動産・濱本彰二執行役員)とされる。長谷工不動産が10月に販売開始を予定する「ブランシエラ四街道駅前」(68戸)は、四街道市内では13年ぶりの新築マンションで、資料請求は約300件、来場は約90組と想定以上の反響を得ている。平均坪単価は約210万円を予定。
JR成田線・四街道駅から徒歩2分の立地で、RC造14階建て。地元に加えて都内から千葉駅にかけて総武線沿線の反響も2割弱に上り、消費者の検討エリアの広域化を捉える。一方で、郊外物件は建築コストの高止まりなどの懸念から、「客だまりを意識し、明確な強みのある用地の選別が必要だ」(同)。
(提供:日刊不動産経済通信)
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