マンション市場は需要の強さが継続
2021年11月08日
先日9月度のマンション市場動向と合わせて発表した21年度上半期(4~9月)の指標は、コロナ禍にあっても引き続き堅調な市況を反映したものとなった。
簡単に見ていくと、発売戸数1万2809戸というのは前年同期から40%以上増加しただけでなく、コロナ前の一昨年同期と比べても6.8%上回った。初月契約率は70.6%と2年連続で70%を突破。都区部、神奈川県、千葉県が70%台に乗せており、エリアを問わず高い人気を維持している。また戸当たり価格は6702万円、坪単価は337.5万円にまでアップしており、価格は一層の上昇基調を示している。
価格上昇については建設コストの高止まり、土地価格の高騰などが主な要因ではあるものの、コロナ禍以降の人気の高さが押し上げている側面もあるだろう。そして購入希望者の積極的な動きは在庫数からも見て取ることができる。8月に5889戸とほぼ3年ぶりに6000戸を下回ると、9月には5614戸にまで低下した。
在庫が6000戸を下回って推移するのは15年以来6年ぶりのこととなる。首都圏のマンション人気はコロナ禍を経て新たな住宅ニーズの高まりを受けて一気に回復、その人気は21年度になっても変わっていないことが改めて分かる結果となった。
この市況の回復は郊外の復活によってもたらされたものというのは確かだろう。郊外は高値でも売れ行きが回復し、在庫の圧縮も顕著だ。コロナ以前の郊外は完売前に息切れし、値引きして売り切るという物件が多く見られたものの、昨年の夏以降はほとんどそのような声は聞こえてこない。郊外の回復によって、首都圏のマンション市場がコロナ禍以前とは一変したのは間違いない。
しかし、データを詳細に見てみると違った面も見えてくる。それは都心の人気の根強さである。都心部についてはコロナ禍前から人気は高く、苦戦する郊外とは対照的な状況にあった。しかし23区はコロナ禍で転入超過数が激減、今年に入ってからは人口減少が続いている。
コロナ禍で郊外人気がクローズアップされる中、東京一極集中は転換を迎えるという分析を頻繁に目にするようになった。しかし年度上期の都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)のマンション動向を見ると、そのような分析は何処吹く風と人気回復が鮮明になっている。同エリアの発売戸数は2226戸と前年同期から約2.4倍に増加し、コロナ前の19年度上期に近い戸数を回復。初月契約率は77.0%と、やはり19年度上期の77.6%とほぼ同水準となった。
コロナ禍前から大きく異なっているのは価格である。19年度上期の都心6区の平均価格は8436万円、坪単価415.9万円だったものが21年度上期は1億2484万円、607.9万円にまで上昇している。わずか2年で戸当たり、単価ともに50%近くアップしてもなお、売れ行きが同水準にまで回復しているのは驚異と言えるのではないか。
この価格上昇を支えたのは中央区や渋谷区での大型超高層案件になるが、多くは23年に竣工を迎える。その頃には23区の人口減がコロナ禍での一時的なものだったとして語られているのかもしれない。
しかしながら、この都心の価格高騰については、年度下半期以降に一服する可能性が高い。「HARUMI FLAG」の販売再開の影響は大きく、エリアの価格を押し下げることになるだろう。
一方でオリンピック、パラリンピックを経て同物件の人気は高まっているとのことで、都心の契約率はさらに押し上げられる可能性がある。年度上期に発売された大型超高層案件についても2期以降の住戸が販売されることから、都心人気は非常に高い状態を維持しそうだ。
一方で首都圏全域での秋商戦の動向を見てみると、昨年ほどの勢いはないかもしれない。昨年の秋商戦は一度目の緊急事態宣言中にモデルルームの営業がほぼ止まったことが影響して、春に販売予定だった多くの物件が夏から秋にかけて発売されたことに加え、元々秋に発売予定だった物件も購入希望者がモデルルームに殺到したことから大して遅れることなく販売が開始され、販売中の物件が目白押しという状況となった。
そのような選択肢が多い状況がまた、購入希望者の積極姿勢をさらに後押しするという好循環が生まれた。この秋商戦についてはそのような状況にはない。しかし秋から来春にかけては都心以上に都下、神奈川県、埼玉県、千葉県での目玉物件の発売が相次ぐことから、郊外の購入希望者の動きについては積極姿勢が続くはずだ。
懸念があるとすれば、現行の住宅ローン減税の契約期限が11月末までということだろう。実際のところ、秋商戦の大型物件の発売予定も多くが11月となっており、販売が短期間に集中する可能性がある。しかし先日の衆院選で連立与党が絶対安定多数の議席を確保したことから、住宅ローン減税については速やかに延長されることが見込まれる。
減税幅の縮小などは予想されるものの、それによって今の購入希望者の姿勢が一気に後退するようなことはないのではないか。今後も活況なマンション市場を期待してよさそうだ。
(提供:日刊不動産経済通信)
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