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21年度売買仲介、コロナ禍前上回り好調

2022年05月25日

不動産流通主要28社・グループの22年3月期(21年4月~22年3月)の売買仲介実績(表)が出揃った。全社合計で期中の手数料収入は前期比18.4%増、仲介件数は8.1%増、取扱高は19.1%増となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた前期からV字回復し、28社中27社が手数料収入を増やし、2ケタ増は23社に上った。仲介件数は25社が、取扱高は26社がそれぞれ増加。

コロナ禍前の19年度と比較すると、比較可能な27社合計で手数料収入は10.3%増、仲介件数は1.2%増、取扱高は8.7%増となった。23社が手数料収入を、17社が仲介件数をそれぞれ伸ばしており、21年度はコロナ禍の落ち込みからの反動回復だけにとどまらず、旺盛な住宅購入ニーズに支えられた好調ぶりが顕著に表れた。一方、店舗数は28社合計で11店舗の減少。近年は、店舗運営を効率化するため店舗統合の動きなどもみられる。

3指標トップの三井不動産リアルティグループは手数料収入と取扱高が過去最高となり、仲介件数も過去3番目の高水準だった。「取引単価の上昇により取扱高が増加した」(三井不リアルG)。東急リバブルも、リテールとホールセールともに好調に推移し、成約件数の増加と平均取扱単価の上昇で手数料収入も伸び、件数と手数料収入が過去最高となった。

住友不動産販売も中古マンション取引を中心とする仲介件数が過去最高を更新。みずほ不動産販売と近鉄不動産も手数料収入が過去最高となるなど、市況の好調さが際立った。

都心部の高額帯物件の取引も大手を中心に好調で、「希少性の高い物件の価格上昇が継続」(リバブル)。昨春に都心高額帯の中古マンション専門店舗「レアリア」を麻布十番に開設した野村不動産ソリューションズは「都心高額帯の取扱件数が大幅に増加」、みずほ不販は「単価が大きく上昇し1億円以上の成約件数が前年度比で15%増加した」とする。

関西エリアでは、手数料収入が過去最高を更新した近鉄不動産が「買いの反響が旺盛で在庫がはけていく一年だった」とし、阪急阪神不動産も「年間を通して買い顧客の購入意欲が高い状況が続き、成約件数が増加した」と総括。価格上昇は関西エリアも同様で、福屋不動産販売は「大阪市、神戸市、京都市で平均取扱高が上昇した」としている。

今期も購入ニーズが強く売却ニーズが弱い全体的な傾向は続いた。不動産流通推進センターがまとめた全国の4指定流通機構のレインズシステムの活用状況によると、売り物件の新規の登録件数は足元の4月まで前年割れが25カ月続き、総登録件数も22カ月連続で前年を下回った。

在庫不足により価格上昇は以前にも増して強まった。東京カンテイがまとめた中古マンションの売り出し価格をみると、東京都と東京23区の平均は20年7月以降、足元の3月まで前月比での上昇が21カ月も続き、東京都(22年3月・6251万円)と23区(6784万円)ともに1000万円以上も上昇した。首都圏全体(4659万円)でも20年9月以降は概ね上がり続け、1000万円近く上昇した。

三井不動産リアルティの正木条・取締役専務執行役員によると、同社グループの全国平均のリテール単価は19年度比で約15%上昇したという。そのほか、リストインターナショナルリアルティが「在庫不足と価格上昇の動きが加速している状況」とするなど、各社とも価格上昇を実感している。

また、「都市部と郊外で価格が二極化」(大和ハウスグループ)など、立地やエリアによる価格と取引の好不調の二極化を指摘する声も多かった。

昨秋以降は購入ニーズの落ち着きもみられる。東日本不動産流通機構がまとめた首都圏の中古マンションの成約件数をみると、年明けから前年同月比でのマイナスが続いている。「エンドユーザーの需要が一巡した状況」(住友林業ホームサービス)で、「新規購入の反響件数はやや鈍化し、コロナ禍前に戻りつつある」(三菱地所ハウスネット)。

価格上昇の影響も強く、小田急不動産は「価格高騰に伴い様子見する傾向もでてきており、成約まで長期化している」とし、京王不動産も「価格高騰による購入者層の購入意欲の減退がみられる」とした。ただし、各社とも旺盛だった購入ニーズの落ち着きを指摘するが、いまだに購入需要は高い水準にあるとする。三井不動産リアルティグループでは1~3月の仲介件数は前年同期比で微減となったが、19年度比では2ケタ増となっており、「買いの需要は依然堅調」(正木取締役)な状況だ。

一方で、弱かった売却需要は回復傾向で、「売却の問い合わせ件数は増加傾向」(野村不ソリューションズ)、「売却につながる具体的な情報量が増加傾向」(小田急不)などの声が挙がり、リバブルは「購入需要が前年度の顕著な増加からは落ち着いたが堅調で、在庫数の回復には好転の兆しもあり好調な市況が継続する」と今後を見通す。

ホールセールは不動産投資の需要が堅調で、「Jリートの資産入れ替えや事業法人によるセール&リースバックでの売却など、比較的大型物件の成約が市場回復を牽引している」(三菱地所リアルエステートサービス)。コロナ禍の影響で経営方針を見直す企業が多くなり、売却する物件のエリアや種類、手法に関する相談が増えている。ただし市場全体では優良の売却物件数はそれほど多くなく、中央日土地ソリューションズは「売主主導のマーケット環境が当面継続する」とみる。

(提供:日刊不動産経済通信)

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