不動産売却ガイド不動産の売却にかかる経費一覧、税金控除、確定申告についての解説

不動産を売却する際にはさまざまな経費がかかります。確定申告や節税のためにも、経費になるものや計算方法などは正確に把握しておきましょう。
この記事では不動産を売却するときの経費一覧や譲渡所得税の控除、確定申告方法などの必要な知識を解説します。

1. 不動産売却にかかる経費や税金の一覧

不動産の売却にかかる経費や税金は、主に以下の①~⑥です。


  • 不動産仲介会社に支払う仲介手数料…売買を仲介する不動産仲介会社へ払う仲介手数料
  • 印紙税…不動産売買契約書に貼り付ける印紙の費用
  • 抵当権登記の抹消費用…売却不動産に住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消登記費用、また、司法書士への報酬
  • 住宅ローン一括返済の手数料…売却資金を住宅ローン一括返済の際には金融機関へ手数料を払わねばなりません
  • その他の諸費用…ハウスクリーニング代や境界確定費用など
  • 譲渡所得税と住民税…売却益を得られた場合、譲渡所得税と住民税がかかります
ポイント

想定外?測量費用がかかってしまった…

土地や一戸建ての売買で、あらためて実測して売買する場合や境界が確定できない場合など、土地の測量が必要になる場合があり、測量費用が発生します。他にも、リフォームしてから売却するケース、古屋を解体して売却するケースなども費用もかかります。
あらかじめ計算にいれておきましょう。

以下でそれぞれの経費の項目について、さらに詳しく解説します。

2. 仲介手数料

不動産の売却を仲介してくれる不動産仲介会社へ支払う手数料です。法律により、上限が定められています。

不動産が売れた価格 仲介手数料
200万円以下の場合 (売却価格×5%)+消費税10%
200万円を超え400万円以下の場合 (売却価格×4%+2万円)+消費税10%
400万円を超える場合 (売却価格×3%+6万円)+消費税10%

多くのケースでは売却価格により計算方法が定められていますが、通常、売却代金の3%+6万円+消費税※がかかると考えましょう。

例)売却価格4,000万円の場合→仲介手数料は138万6千円(消費税込)

仲介手数料の上限額早見表

仲介手数料の上限額を具体的に計算すると、以下の通りとなります。

不動産が売れた価格 仲介手数料(税込)
100万円 55,000円
400万円 198,000円
1,000万円 396,000円
2,000万円 726,000円
3,000万円 1,056,000円
4,000万円 1,386,000円
5,000万円 1,716,000円
1億円 3,366,000円

3. 印紙税

不動産が売れた金額に応じて印紙税がかかります。2024年12月までは以下の「軽減税率」が適用されます。

不動産の売却金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1千円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

4. 抵当権登記の抹消費用

住宅ローンを完済した場合、抵当権を抹消するための抹消登記費用がかかります。
具体的には抹消登記のための「登録免許税」と「司法書士費用(司法書士に依頼する場合)」を払わねばなりません。
登記費用は1つの不動産について1千円、司法書士費用2万円前後が相場となっています。
なお自分でも抵当権の抹消登記はできますが、確実かつスムーズに完了するには司法書士へ依頼するほうが安心です。司法書士は、不動産仲介会社で紹介してくれます。

5. 住宅ローン一括返済の手数料

住宅ローンを繰り上げ返済するには、金融機関へ手数料を払わねばなりません。
具体的な金額や計算方法は金融機関によって異なります。
窓口で申請するかネットで返済するかなどの方法により、金額が変わる金融機関もあります。
だいたい5千円~3万円程度と考えると良いでしょう。

6. その他の諸費用

不動産を売却するとき、場合によってはハウスクリーニング代や境界確定費用、既存建物の解体費用などがかかるケースがあります。
また不動産仲介会社との打合せや買主への挨拶のためにかかる交通費などの諸経費も発生します。
ハウスクリーニング代は建物の広さに応じて高額になっていきます。
境界確定費用は50~100万円程度と考えましょう。
これらの諸費用も、確定申告時には経費に含めることが可能です。

7. 譲渡所得税と住民税

不動産を売却して譲渡益が出た場合、譲渡益に対して所得税や住民税がかかります。

売却代金(譲渡収入)-(購入代金(※減価償却要)+ 購入にかかった諸経費 - 売却にかかった諸費経費)=譲渡所得

売却代金(譲渡収入)-(購入代金(※減価償却要)+ 購入にかかった諸経費 - 売却にかかった諸費経費)= 譲渡所得

つまり土地や建物を売却して得た金額(譲渡収入)から、その不動産の購入代金や購入にかかった経費、さらに売却にかかった経費を差引いた金額を「譲渡所得」と呼びます。

譲渡所得が発生すると「譲渡所得税」がかかり、譲渡所得税がかかる場合には住民税もその分上がります。
譲渡所得税と住民税の金額は、以下のように計算されます。

譲渡所得税+住民税=譲渡所得×税率

適用される税率は以下の通りとなっています。売却した年の1月1日に所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」となって税率が上がり、5年を超えていると「長期譲渡所得」となって税率が下がります。

譲渡所得税と住民税の税率
所得の種類 不動産を所有していた期間 適用税率
短期譲渡所得 所有期間5年以下の土地・建物 39.63%(所得税 30.63% 、住民税 9%)
長期譲渡所得 所有期間5年を超える土地・建物 20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%)

確定申告について

不動産を売却して利益が出たら、確定申告をしなければなりません。申告時期は不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
ただし税額の計算は自主的に行わなければならないので、間違えると払いすぎや不足が生じるリスクも発生します。自信がなければ税理士に相談・依頼しましょう。
なお赤字の場合には申告の必要がありませんが、損益通算や繰越控除を適用するには確定申告しなければなりません。
損益通算や繰越控除については、のちの項目で詳しくご説明します。

8. 不動産売却でかかる税金を安くする方法

不動産を売却する際、譲渡所得税や住民税を安くできる特例がいくつかあるので、ご紹介します。

8-1. 居住用不動産への3,000万円までの特別控除

一定の要件を満たした居住用不動産に関しては、譲渡所得に対し、最高3,000万円までの特別控除が適用されます。その場合、譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得税はかかりません。

8-2. 10年を超えて所有していた場合の軽減税率

売却した不動産を10年を超えて所有していた場合には、一定面積まで長期譲渡所得よりさらに低い軽減税率が適用されて税額が下がります。

8-3. 損益通算と繰越控除

購入価格より売却価格が安くなって「譲渡損失」が発生する場合、一定要件を満たせばその損失と他の所得を損益通算できる場合があります。損益通算が適用されると所得税や住民税を減らせます。

また1年で損失の全額を通算できない場合、3年間までであれば繰越可能です。これを「繰越控除」と言います。

9. まとめ

マイホームなどの不動産を売却したときに経費にできるものは決まっています。
確定申告時には今回ご紹介した諸費用を経費に入れて、賢く節税対策を行いましょう。

自分で対応すると間違えるのではないかという不安がある方は、税理士に任せると安心です。また、不動産仲介会社から税金についての説明を受けたり税理士の紹介を受けられたりもします。困ったときには一度仲介を依頼した不動産仲介会社へ相談してみるのもおすすめです。

マイホームを買いかえたときにかかる税金や確定申告の方法などについて、詳しい情報は国税庁ホームページにてもご確認いただけます。

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