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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2013/10/10
豊かな老後をおくるための3大要素

 織田信長は「人生50年......」と謳いましたが、平成24年の男性50歳の生存率は約96%(「平成24年簡易生命表」厚生労働省)です。83歳でも約50%が生存し、人生100年も夢ではありません。長寿社会の到来に足並みを揃えるように、定年退職年齢が55歳から60歳に、そして65歳へと延長され、仕事や人間関係のしがらみから解放されて長年の夢を実現するご隠居期間は、逆に短くなりつつあります。

 さて、あなたは老後をどのように過ごしたいですか?海外移住してゴルフ三昧、ボランティア活動三昧、料理教室を開業、経験を生かして起業、など十人十色ですが、これらを実現するために必要なものは「健康」と「生きがい」と「お金」の3つです。これらは密接に影響し合い、高齢になればなるほどその影響度は増します。ではその重要性を1つずつご紹介します。

「健康」だからこそ夢や希望を実現できる

 どんなに潤沢にお金があっても、心身が不健康な状態では夢や希望を体験・実現することは困難です。豊かで自由な老後には、一つ目の要素「心身の健康」が必須です。

 身体の健康は、栄養バランスの取れた食事と適当な運動、そして長すぎず短すぎない睡眠が培います。例えば、予防栄養学研究者の家森幸男氏が推奨する健康に良い食材「大豆などの豆類、ゴマ、米、わかめや海草、野菜、魚、しいたけなどのきのこ、芋類、ヨーグルト」に果物を加えた食事や、早足や山歩きなど中強度の定期的な運動が、メタボリック症候群や脳血管障害、認知症、ある種の癌、認知症などの発症リスク低減に貢献することがわかっています。

 心の健康はストレスのない楽しい人間関係が培います。現在問題になっているのが、リタイア後のうつ病です。夫は社会的肩書きの喪失や人間関係の変化、持て余す自由な時間など、妻は一日中家にいる夫への対応や一人で過ごす時間の喪失などが、その大きな要因と考えられています。長い老後を共に生きるパートナーとの関係は特に重要です。

 退職前から、例えば山登りやゴルフなど一緒に楽しむ趣味を持ちながらも、互いに一人で過ごす時間を尊重するように心がけて、緩やかに支え合う夫婦関係を育む地道な努力が必要です。夫には精神的自立と妻を家事から解放する意識、妻には職場から家庭へと回帰する夫が抱える不安に対する辛抱強い理解とサポートが望まれます。

健康に大きな影響を及ぼす「生きがい」

 2つ目の要素「生きがい」は、ワクワクしたり夢中になるものを持っていますか?と言うことです。自治会やボランティアの活動、家庭菜園、資格取得、カラオケ、お稽古事などを、一人あるいは仲間と楽しみ、そして社会と繋がる、それで十分です。

 「生きがい」は時間と共に変化してもいいのです。退職後1年間は庭いじり、その後の3年間は地域のカラオケ同好会への参加、今は植樹ボランティアというように、その時どきに「胸がときめく、行動する意欲が湧く」ことが重要なのです。

 東北大学社会医学講座公衆衛生学分野が行った「生きがいと死亡リスクとの関連について」の調査で、生きがいの無い人は生きがいのある人に比べ脳血管疾患や心疾患、循環器疾患などでの死亡リスクが高くなることがわかりました。また、東京都老人総合研究所の追跡調査「TMIG-LISA」(1991年~2006年)では、高齢者が社会参加を続けると要介護状態になるのが33~40%抑制される、という結果が出ています。このように「生きがい」は「健康」に大きく影響を及ぼしています。

「お金」は健康で生きがいのある人生を過ごすための土台

 3つ目の「お金」は、豊かな老後の土台となる最も重要な要素です。これがしっかりしていなければ、いくら健康でも生きがいがあっても人生を満喫することはできません。あなたに必要な老後資金はいくらでしょう。算出に必要なデータは、あなたの手の中にあります。

 収入は、公的年金や企業年金の支給開始年齢と金額、退職金、現在保有している資産から算出します。支出は、現在の生活費とリタイア後に実現したい夢に必要な費用を数値化して算出します。この収支決算の結果によって、貯蓄額を増やす、生活内容を見直して支出を削減する、優先順位の低い夢をあきらめる、など様々な対策を検討することができます。

 早めにリタイアメントプランを立てて老後資金の過不足を明確にすることで、豊かな老後への道が開かれることは確かです。その際に、老後資金に大きな影響を与える「終の棲家」について夫婦や家族で話し合うことを忘れないようにしましょう。

 超高速で進む少子高齢化の日本が抱える問題のひとつに、高齢者関連の社会保障費の膨脹があります。経済的基盤を持ち、健康で死ぬ直前までピンピンと活動しコロリと逝く(=PPK)高齢者が増えて互いに助け合えば、社会保障費の増加を避けることができるかもしれません。

 さらに短時間でも社会に参加してそれ相応の負担をすれば、現役世代に偏っている負担の軽減と閉塞感が払拭されるかもしれません。「健康・生きがい・お金」は、個人の豊かな老後だけでなく、高齢者を社会的弱者ではなく貴重な人的資産として受け入れ、共に生きる豊かで明るい日本へのキーワードでもあります。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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