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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2014/10/20
アクティブシニアにみる超高齢社会の介護像

介護は施設から在宅

超少子高齢社会の日本が抱える問題、国の財政悪化と社会保障費の増大を踏まえて2012年介護保険制度の改正が行われました。ポイントは「施設・入院の抑制」と「高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるサービスの提供」の2点で、つまりは「介護は在宅で」ということになります。

平成25年3月末の介護保険第1号被保険者(65歳以上)は3,094万人で前年より3.9%増加しました。要介護(要支援)認定者は前年比5.7%増加し561万人になりました。そのうち、第1号被保険者が546万人(65歳~75歳未満が69万人、75歳以上は477万人)で第2号被保険者(40~65歳未満)も15万人います。
要介護認定者が利用したサービスの内訳は、居宅サービスが71.0%、施設サービスは24.1%、地域密着型サービス9.5%になります。

家族支える介護

「平成25年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によると、介護している人は「要介護者と同居」が61.6%、「事業者」14.8%、「別居の家族等」9.6%です。同居の介護者を詳しく見ると、配偶者が26.2%、子21.8%、子の配偶者11.2%で、性別では男性31.3%、女性68.7%で女性が男性の倍以上介護を担っています。
年代別では40歳代8.0%、50歳代21.4%、60歳代31.0%、70歳代24.8%、80歳代12.9%と50歳代から介護に直面する人が増え、表1からは介護への支援体制が充実していない中で現役の中高年が配偶者や高齢の親の介護を担っている姿が浮かび上がります。
これでは介護離職が増えるのは無理もありません。ちなみに平成25年1年間の離職者数は718万人で、介護・看護を理由に離職したのは約9.3万人でした。

表1 同居の主な介護者と要介護者等の組み合わせ

離職しても介護負担は増す

2013年1月に就労者と介護を機に離職した人(いずれも正社員)を対象にした「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)から介護に直面した人の実情を見てみましょう。

就労者の75%程度、離職者の83%程度が仕事と介護の両立に対する不安を持っており、離職者が持った不安の多くは介護休業制度等の両立支援制度に関するもの(制度がない、利用すると収入が減る、利用しにくい雰囲気、有無や内容がわからない、介護サービスとの組み合わせ方がわからないなど)で、自分の仕事を代わってくれる人がいない、労働時間が長いといったものもありました。

介護離職の理由の1位は「仕事との両立が難しい職場だった」、2位は「自分の心身の健康状態が悪化したため」で、5割強が「働き続けたかった」と思いながら離職。しかし介護の負担が「増した」と感じる人の割合は高く、精神面で64.9%(減った10.5%)、肉体面56.6%(同11.2%)、経済面74.9%(同4.7%)と経済面の負担増が際立っています。こんなことなら離職しなければよかった、と後悔した人も少なくないでしょう。

アクティブシニアが描く明るい介護

「生産年齢人口」減少に待ったをかける政策として、政府は(1)65歳までの継続雇用、(2)25歳~44歳の女性の就業率を2020年までに73%(2012年は68%)に引き上げることを掲げました。これは介護を担う年代と重なり、現状の制度のままでは介護離職の増加は避けられません。国や企業による介護と仕事の両立をサポートする制度の整備は急務です。

個人が実行できる介護離職の予防策としては、介護保険制度や企業の介護休業制度、地方自治体の高齢者福祉政策や介護予防事業、社会福祉協議会や人材センター、生活協同組合、NPO法人、民間会社などの生活・介護支援サービスなどに関する知識と情報を持つことです。配偶者や親に虚弱の影を見たときは要介護の前哨戦と考えて、地域にある高齢者の生活支援の拠点である地域包括支援センターに相談し、介護予防サービスを積極的に利用しましょう。要介護になったときそのネットワークと経験が役に立ちます。

何より重要なのは支援・介護状況にならないことです。家庭内の段差や温度差の解消や福祉用具を使うことを想定したリフォームは介護予防に有効で、要介護になった場合でも介護サービスの導入がスムーズに進み、介護者の負担が軽減します。 また、日々の生活の中で近隣の人とサポートしあえる関係を築いておくことも重要です。通える範囲にある有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅等をいくつか下見しておくと、離職を考えるようになったときに役に立ちます。

2013年4月「希望すれば原則65歳まで雇用継続」となり、2014年5月には政府の経済財政諮問会議が「70歳まで働く人に」と提言しています。2013年の65歳以上の就業者は636万人(前年比6.9%増)、うち雇用者は285万人(前年比10%増)と働く前期高齢者が増えており、これからは60歳代後半で介護離職に悩む人が増えると思われます。リタイア年齢が遅くなっている現在は、還暦や介護保険被保険者証交付などを目安に、意識的に、そして積極的に前述のような介護への準備を実行する必要があります。

介護サービスの知識が介護離職を防ぐ

博報堂「新大人研レポート(XIII)」によると、これからの超高齢社会を築いていく40~60歳代の"新しい大人"たちは、「子供と同居」(10.6%)より「近居」(39.5%)を望み、バリアフリーやユニバーサルデザインの家に住みたいと考え、実際に退職金の一部で自宅のリフォームや建て替えを行っています。
また、定期健康診断を受けたり適度な運動を行ったりと積極的に介護予防を実行し、介護者となったときには「要介護者やケアマネージャー、ヘルパーさんとコミュニケーションをよくとる」「介護付き老人ホームや特別養護老人ホームなどの施設利用を考える」「ショートステイやデイサービスなど外部の介護サービスを利用する」など介護負担を軽くしようと考えています。
アクティブシニアがめざす介護は、家族に頼らない介護、仕事と両立する介護、精神的・肉体的・経済的・時間的負担が軽い介護です。明るい老後を過ごすために老後資金からの先行投資は惜しみません。
アクティブシニアは、仕事と生活が融合・調和した"ワークライフハーモニー"だけでなくその介護版"ケアライフハーモニー"の旗振り役を担っています。それは、次世代が自由で明るいセカンドライフを描くことができる超高齢社会の構築に繋がります。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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