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老後の暮らしとお金のコラム人生を豊かにする老後のマネー

2015/01/26
どこに住む?老後もアクティブに趣味を満喫するために

住みかえたい場所は「郊外・田舎」より「都心・市街地」

博報堂 新大人研究所のレポートXIII「余生を静かに過ごす高齢者から"ライフスタイルを創る新しい大人"へ」によると、40~60代は住みかえ先として「郊外・田舎」より「都心・市街地」を選ぶ人が多く、都心居住者の約7割、郊外・田舎居住者でも約4割が「都心・市街地」を志向しています。

家庭菜園や趣味を楽しむ、夢を実現するなど、積極的にセカンドライフを楽しむアクティブシニアはどこに住もうとしているのか、実例を通して考えてみました。

実例1 生活の利便性を求めて転居

首都圏に住む60代以上のシニアを対象に矢野経済研究所が2013年に行った「シニアの住まいに関するアンケート調査」によると、5割強の人が「現在住んでいるマイホームから住みかえたくない」と答えています。ということは、5割弱は住みかえ思考を持っていることになります。住みかえると仮定した場合の住みかえ先の条件トップ3は、1位...駅・病院・役所・買い物などの場所が近く利便性が良い場所(61.0%)、2位...耐震性が強いなど防災性に優れた住まい(29.8%)、3位...現在の居住地と同じエリア(26.0%)です。

築30年超えの戸建て住宅に住む60代後半のA氏は、「家のリフォームも考えたが、生活の利便性が悪いこともあり、駅に近くスーパーや専門店、飲食店、娯楽施設、地域のコミュニティ施設、病院などが整っている隣の駅のマンションに引っ越すことにした」と、前出の転居条件トップ3すべてを満たす住みかえを実行しました。転居前の活動も継続しながら新居での地域活動に積極的に参加しています。

実例2 高齢者施設入居で自由と安心を確保

10年弱の介護生活が終わり自宅でひとり暮らしする70代前半のB氏は、「5年後をめどに自宅を売却して、高齢者施設に移る予定。生活時間の自由度が増えるだろうから、趣味や旅行などを楽しみたい。いろいろな施設をじっくり見学・体験入居して決めようと思っている」と言います。

加齢とともに、栄養バランスの取れた食事を整えるのが難しい、戸締りや掃除・買い物・ゴミ出しが負担になってきたなど、日常生活の様々な面で支障を感じるようになってきます。ひとり暮らしならではの不安も募ってきて、趣味を楽しむ時間や心の余裕が次第に失われていく、それは高齢者施設に入居のサインのひとつと言えます。

50代の現役独身サラリーマンが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を利用することも珍しくありません。食事の提供、高い防犯性、館内温度が一定で快適、郵便物や宅配品の受取りサービスなど日常生活の様々なサポートに満足している様子です。「食事の支度から解放されたい」と考える高齢女性も増えています。高齢者施設は、老いていく身体能力を補い快適な日常生活をサポートし安心を与えるだけでなく、余暇時間を増やす場所でもあるのです。

実例3 マンスリーマンションを利用して趣味三昧

リタイア後の数ヶ月間は、自分へのご褒美として大都市でコンサートや演劇、美術展、グルメなどを堪能したいと考える地方居住者がいる一方で、山登りやサーフィン、魚釣りなど大自然相手に趣味三昧の生活を楽しみたいと考える大都市の居住者がいます。

地方に住む70代で完全リタイアをしたC氏は、「田舎ではなかなか希望する展覧会やコンサート・演劇を楽しむことができない。ただ、山登りも楽しみたいので、半年間マンスリーマンションを借りることに。おかげで充実した日々が送れた。来年は他の地域に住んでみようと思っている」と、都会のロングステイで心身ともに満足の休養をとれたようです。

主要都市には、家具や調理器具付で長期間レンタルできるマンスリーマンションや長期滞在型ビジネスホテルが、また、海や山には貸別荘があります。マイカーに布団や楽器、登山道具、本、好みの椅子などを積んで移動すれば、そこはあなたの馴染みのマイルームになりなります。滞在中に体験したいこと学びたいことを絞り込み、交通網も考慮して最適な場所を探してみましょう。セカンドライフのスタートが知的満足を充たすロングステイというのも素敵です。

実例4 レンタルで楽しむ趣味と家庭菜園

10数年前は家庭菜園を楽しむために近郊の家庭菜園付住宅に転居する人が多くいました。ですが、現在は市民農園や企業が運営する貸農園、クラインガルテン(滞在型市民農園)、農家が小規模に区分けして貸し出す農地といった、転居しなくても楽しめるレンタル家庭菜園が数多くあります。2014年3月末時点の市民農園の数は全国に4113区画あり、うち約3割を農業者および企業・NPOなどが運営しています。

定年退職を数年後に控える首都圏近郊に住むD氏は蕎麦打ちが趣味。自分で育てた蕎麦で蕎麦を打ちたいと、耕作放棄地になりかけていた近くの畑を格安で借り受けて休日農業を楽しんでいます。「多くの作物を育てることで天候や土、種子、肥料などの関係がわかってきた。日々これ勉強だ」と退職する日をワクワクしながら待っています。

家庭菜園はお天道さま次第で苦楽が共存している世界です。また、想像以上に体力を要します。まずはレンタルで体験してみて、より深めたいと考えるようになってから田舎に転居するという選択もあります。その場合に活用したいのが地方自治地の移住支援策です。移住・交流推進機構の「知らないと損する全国自治体支援制度2922」には、住まい・子育て・仕事に関する情報が集まっています。NPO法人ふるさと回帰支援センターは、毎年東京や大阪で「ふるさと回帰フェア」を実施するなど、「田舎暮らしや故郷への回帰」を考えている人に向けて様々な情報を発信しています。

後の住まい選びは所有から利用・シェアの時代へ

加齢とともに身体能力や健康状態、好奇心、行動力、嗜好、老後に対する生活イメージなどが少しずつ変化し、家族やプロのサポートを必要とする頻度も高くなっていきます。それらの変化に合わせて快適で充実した日々を送り、セカンドライフを二毛作・三毛作で楽しむには「基盤として住む場所」の選択が重要です。時代は所有から利用・シェアへと移っています。最新のサービスや製品をレンタル・シェアすることで快適な日々を過ごすことを考えると、それらが利用しやすい地域であることも住まい選びのひとつの条件になりそうです。

執筆者:大沼恵美子

専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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