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生涯現役の人を除き多くの人は60歳から65歳前後でリタイアし、20数年の自由な時間を過ごすことになります。その時にこみ上げてくる不安、時間はたっぷりあるがそれを楽しむ余裕はあるのだろうか...。老後を実りある楽しいものにするためには、それなりの基盤=お金が不可欠です。一般に「老後資金は3,000万円」が独り歩きしていますが、これはあくまでも目安です。「私の、我が家の老後資金」を計算する必要があります。
老後資金は、日々の生活費を補填する「生活資金」、万が一の時や夢を実現するための「予備資金」、それ以外の「余裕資金」の3つに区分けすることができます。このうち準備すべきは「生活資金」と「予備資金」の2つです。ここでは、生活資金についてお話します。
従来の老後設計の前提は60歳定年退職です。しかし、平成25年4月「改正高年齢者雇用安定法」の施行により、原則65歳までは働き続けることができるようになりました。これは60~64歳の5年間の生活資金を準備する必要が原則なくなったことを意味します。それはどのくらいの金額になるのでしょう。
総務省が毎年行っている「家計調査報告(家計収支編)」によると、世帯主が60歳以上の無職世帯の1ヵ月の支出は約23万円です。5年間では約1,380万円、「老後資金は3,000万円」の45%程度になります。
では、あなたが必要とする生活資金を計算していきましょう。必要なデータは、現役時代の生活費と老後の期間です。
リタイアすると、現役時代に必要だったお小遣いや背広・靴などの費用、冠婚葬祭等の交際費などへの支出が少なくなるので、一般に生活費は現役時代の70~80%程度に減少します。前出の「家計調査」でも60歳以上で二人以上の勤労者世帯の消費支出が306,164円に対し、高齢夫婦無職世帯((夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)は239,878円。勤労者世帯の消費支出の約79%に相当します。
夫を見送った後の妻の生活費は、夫婦で暮らす期間の生活費の70~80%とします。妻を見送った夫の場合は、夫婦で暮らす期間の生活費と同額、あるいはそれよりアップすることもあるようです。
生活費の内訳は、食費や光熱費、通信費、交通費、医療費、被服費、交際費、教養娯楽費など日々の生活で支出するものです。長期の入院や高額の旅行、法事など特別の支出は含みません。それらは予備資金から支出します。
人間の寿命は予測できませんので、老後資金の計算では厚生労働省が毎年発表する簡易生命表を参考に老後期間を決めるのが一般的です。
「平成24年簡易生命表の概況」によると、65歳男性の平均余命は約19年、女性は約24年です。これは生存者数がほぼ半数になる年数です。長寿の家系や長生きしそうと考える場合は、生存者数が約1/3 になる年数(男性は約22年、女性は約28年)を使うといいでしょう。
老後の生活費を算出する一般的な計算式は
・夫婦期間の生活費=(現役時代の年間生活費×70~80%+税金+社会保険料)×夫の平均余命
・妻が一人の期間の生活費=夫婦期間の年間生活費×70~80%×(妻の平均余命-夫の平均余命)
です。なお、「税金+社会保険料」が支出に占める割合は、公的年金の金額が200~250万円未満の場合は約10%、250~300万円未満は約12%、300~400万円未満は約13%(「平成23年「老齢年金受給者実態調査」(厚生労働省)より」です。
一生涯の公的年金収入を計算します。一般的な計算式は
・夫婦期間の公的年金収入総額=(夫の公的年金額+妻の公的年金額)×夫の平均余命
・妻一人の期間の公的年金収入総額=(遺族年金額*+妻の公的年金額)×(妻の平均余命-夫の平均余命)
・企業年金支給総額=支給額×支給期間
*退職金の一部を年金で受給する場合は、年金額×支給期間を加えます。
です。尚、一定の要件を満たすと、夫の死亡後「夫の老齢厚生年金額×3/4」が遺族年金として支給されます。共済年金も同じです。
では、必要な老後の生活資金を計算しましょう。計算式は「必要な生活資金=(公的年金や企業年金等の受給総額+退職金)-老後の生活費」です。
65歳まで働いて老後期間が平均余命の場合、必要な、生活資金は年金収入と退職金でほぼカバーできるという人が増えています。しかしそれ以上の期間になると、やはり前もって準備する必要があります。表-1「65歳同い年夫婦の65歳以降に必要な生活資金はいくら?」を参考に、ご自身の生活資金の目安を確認してはいかがでしょうか。
生活資金は、日々の生活をつつがなく過ごすためのものです。家のリフォームや旅行、趣味など、老後に実現したい夢のための資金は、予備資金として別途準備します。次回は、予備資金についてご紹介します。
表-1.65歳同い年夫婦の65歳以降に必要な生活資金はいくら?
<条件>
・現役時代の年間生活費は400万円、「税金+社会保険料負担」は年間35万円
・老後期間24年(平均余命・夫婦期間は19年)と老後期間28年(生存者数が1/3になる年数・夫婦期間は22年)で計算
・年金収入275万円(うち妻の年金75万円)、遺族年金93万円、退職金2000万円(うち500万円を10年間年金で受け取る。年3%で運用)
*65歳男の平均余命約19年、女の平均余命約24年(「平成24年簡易生命表の概況」より)。生存者数が1/3になる期間は男約22年、女約28年。
老後期間を平均余命をもとに24年間と考えた場合、生活資金が14万円不足するが、このくらいの不足であれば支出の調整でカバーができる。
老後期間を28年間で考えた場合、生活資金が370万円不足するため、前もって準備しておく必要がある。
専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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