経営者や役員など、成功者やお金持ちの住まいが「郊外の一戸建て」から「都心のマンション」へと大きくシフトしています。いわゆる「億ション」に住むような人は、なぜその住まいを選ぶに至ったのか、ステータスや資産性だけではない、その合理的な理由と大胆な買い方を紹介します。
成功者やお金持ちの住まいといえば、かつては、大田区の「田園調布」や世田谷区の「成城」など、全国的に著名な一戸建て中心の高級住宅地でした。
ところが、この十数年の間に、そんな常識が崩れています。東京商工リサーチの「社長の住む街」(町村別)ランキングの変化に、それが表れています(図1参照)。
2003年の1位から3位までは、いずれも一戸建て住宅地です。また、東京以外の地方都市もトップ10に入っていました。それに対して東京都心は、「港区南青山」だけがランクインしています。
2012年の調査では、地方都市がトップ10に入らなくなり、「田園調布」と「成城」がそれぞれ6位と7位に一気にランクダウンしました。代わって、都心エリアが数多くランクインし、トップ10のうち8つを占めるようになりました。
さらに2017年になると、「田園調布」と「成城」がトップ10から姿を消し、江東区亀戸以外はすべて都心部で占められています。いずれも一戸建てよりもマンションの比率が高いエリアです。
つまり、「社長の住む街」が、地方都市から東京へ、そして東京の中でも城南の一戸建てエリアから都心のマンション中心のエリアへと、シフトしていることがわかるでしょう。
では、なぜ多くのエグゼクティブたちが、都心のマンションを選ぶようになったのでしょうか。一番大きな理由は、「時間がもったいない」ということです。
特に、外資系の証券会社や投資銀行、IT系ベンチャー企業などのエグゼクティブの方は、「1分1秒の無駄」が莫大な損失につながるという価値観を持っています。
「職住」が近接していれば、ジムに通ってトレーニングするなど、仕事以外の時間も確保しやすくなります。
また、図1の「社長の住む街」が「田園調布/成城」から「赤坂/六本木」へシフトしたのはマンションそのものの変化も関係しています。
かつて「赤坂/六本木」は商業施設が中心のエリアで、経営者クラスが満足できるような広いマンションは多くありませんでした。実は、都心に大型のタワーマンションが出来始めたのは2000年代の前半ごろからなのです(図2参照)。
都心部のマンションは30m2のワンルームから200m2を超える4~5LDKまで、多彩です。一戸建てに負けないゆとりある空間も選べますし、タワーマンションなら一戸建てでは得られない眺望が手に入ります。
都心のマンションに住むといっても、最初から「億ション」に住む人はまれです。自身のキャリアアップとそれに伴う年収アップにつれて、ステップアップして住まいを買いかえていくわけです。
住まいのステップアップというと、まず思い浮かぶのは、次のように賃貸マンションから始まって最後に一戸建てでゴール、というケースではないでしょうか。
※以下、すべての事例中の価格は購入当時のものです。現在の相場とは異なる場合があります。
【事例1】外資系金融エリートのAさん
○Step1 20代の頃、中目黒の賃貸マンション
○Step2 30歳になり、広尾で2LDKの中古マンションを7,000万円で購入
○Step3 30代半ばに、元麻布の1億1,000万円の新築マンションに買いかえ
○Step4 40代になって西麻布で4億円の中古一戸建てに買いかえ
最近は、賃貸を経ずに中古マンションを購入し、買いかえ先も中古マンションという例も増えています。図3のように、都心で同じ広さのマンションに住む場合、賃貸よりも購入のほうが、月々の負担は軽くなるのが一般的だからです(※維持経費・税等は別)。
また、ある程度のクラスの都心のマンションであれば「数年で価格が大きく下がる心配はない」という認識を持つ方が多くなっています。そのため、若い時にマンションを購入することに抵抗感がないのでしょう。次のBさんは、独身時代に都心の1LDKの中古マンションを購入しました。
【事例2】IT企業で役員になり、その後、自分で会社を興したBさん
○Step1 バリバリ働く独身時代。西麻布の60m2・1LDKを6,000万円で購入。
○Step2 結婚して部長に。赤坂の76m2・2LDK、1億2,000万円のマンションに買いかえ
○Step3 会社を設立。三田の90m2・2LDK、2億円の新築マンションに買いかえ
独身時代に住んでいたのと同じエリア内で、結婚後に広いマンションに住みかえたケースもありました。オフィスに近いことが必須条件で、さらに、子供の教育環境としても好ましいエリアだったため、そのまま住み続けることを選択されています。都心マンションは間取りプランが多彩なため、こうした買いかえがしやすいわけです。
【事例3】「オフィスから歩ける距離圏で探したい」と広尾エリア限定で買いかえた外資系証券会社のCさん
○Step1 とにかく会社に近ければ広さは問わないと、約40m2・1LDKのコンパクトマンションを6,500万円で購入
○Step2 結婚して子どももできたので中低層マンションに買いかえ。90m2・2LDK、1億6,000万円。将来の教育環境も良いと気に入る。
同じような状況になっても、決断が遅れればほかの人の手に渡ってしまうのが「掘り出し物」です。そうならないためにも、希望に合う物件を事前のリサーチで綿密に見極めておき、「探し始めたら妥協せず、あれこれ迷わない」という姿勢が大事です。
もうひとつは、仲介会社に来店されるタイミングです。経営者をはじめとしてエグゼクティブは、あえて平日に空き時間を見つけて来店されることが珍しくありません。
実はここにも、優良物件に出会うコツがあります。新しい売り出し物件の情報は、週末に売却依頼を受けて週明けにレインズや物件情報サイトに登録します。そのため平日、特に週の前半のほうが新しく売り出された物件情報に出会う確率も高まります。
平日に休みが取りにくいサラリーマンの方でも、事前に綿密なリサーチを行ったうえで、時間を調整し、平日を狙って不動産会社の店舗に立ち寄っていただくことが、意外な優良物件と出会うコツといえるでしょう。
物件を買う
物件を売る
エリア情報