中古マンションは立地の選択肢が幅広いのがメリット。その良さを活かすには、立地条件の良し悪しを見分けることも大切です。「立地」の見分け方、また、都心が注目される理由などについて考えてみます。
マンション選びで「立地がもっとも重要」といわれるのは、住み心地と資産価値の両方に関わるからです。では、「良い立地条件」とは、どのようなものなのでしょうか?
時間 | 交通利便性 |
---|---|
都市機能 | 生活利便施設・教育施設・医療機関 |
環境 | 自然環境・街並み |
安全 | 防犯・防災性 |
立地条件には、表1のように4つの要素が関わります。なかでも、もっとも重視されるのが交通利便性でしょう。都心部に近いほど通勤時間や主要ターミナル駅への所要時間は短くなりますが、土地の価格は高くなります。つまり、交通利便性の高い立地を選ぶことは「時間を買う」と言いかえることもできます。
たとえば、通勤時間が片道30分の都心部のマンションと、同1時間半の郊外の一戸建てでは、1日(往復)で2時間の違いになります。
商店・金融機関・教育施設・医療機関など、生活利便施設の充実度も立地条件の一つです。
順位 | 行政区 | 医療機関1件当たりの人口 |
---|---|---|
1 | 千代田区 | 121.2人 |
2 | 中央区 | 273.5人 |
3 | 港区 | 328.4人 |
4 | 渋谷区 | 402.1人 |
5 | 新宿区 | 534.5人 |
6 | 豊島区 | 638.0人 |
7 | 文京区 | 794.7人 |
8 | 台東区 | 847.7人 |
9 | 目黒区 | 850.5人 |
10 | 品川区 | 855.5人 |
教育施設や医療機関については、都心部が充実している傾向があります。図2は、23区内の医療機関の充実度ランキングです。医療機関1件でどれだけの人口をカバーしているかを示したもので、数値が小さいほど手厚い体制といえます。千代田・中央・港の都心3区を始め、山手線内側の区が上位に並びます。
順位 | 行政区 | 人口1人当たりの公園等面積 |
---|---|---|
1 | 千代田区 | 27.7m2 |
2 | 江戸川区 | 15.4m2 |
3 | 江東区 | 11.1m2 |
4 | 渋谷区 | 10.8m2 |
5 | 台東区 | 7.7m2 |
6 | 港区 | 6.9m2 |
7 | 新宿区 | 6.3m2 |
8 | 足立区 | 6.1m2 |
9 | 板橋区 | 6.0m2 |
10 | 品川区 | 6.0m2 |
自然環境や街並みの美しさなども立地条件に含まれます。図3は、人口1人当たりの都市公園などの緑地スペース面積のランキングです。「緑豊かな閑静な住宅地」といえば準都心・郊外エリアを思い浮かべることが多いでしょう。ただ、誰もが憩える都市公園などのスペースの多さでは、一般的なイメージとは必ずしも一致しません。
まず、まさに都心の千代田区が1位となっています。皇居駅前広場や北の丸公園などの広大な皇居外苑を擁するからです。さらに、4位に渋谷区、6位に港区が入っています。都心部が意外に健闘している様子がわかるでしょう。
もっとも、都心部の「憧れの住宅地」といわれるような街にも、イメージとギャップのあるエリアもあります。イメージにとらわれず現地を歩いてみると意外な発見があるかもしれません。
立地条件の中で、もう一つ見逃せないのが「安全・安心」という観点です。
都心の中の都心、「3A地区」と呼ばれる「麻布・青山・赤坂」の中でも「プレミアム」が付くような超一等地は、単に歴史が古いというだけではありません。多くは高台にあって低地よりも地盤が良く、豪雨でも浸水しないなど、自然災害に強いという条件も備えています。
順位 | 行政区 | 交番等1件当たりの人口 |
---|---|---|
1 | 千代田区 | 2,042.3m2 |
2 | 中央区 | 5,407.7m2 |
3 | 港区 | 5,877.9m2 |
4 | 台東区 | 6,129.2m2 |
5 | 渋谷区 | 8,024.3m2 |
6 | 新宿区 | 8,770.2m2 |
7 | 文京区 | 9,882.7m2 |
8 | 豊島区 | 9,900.4m2 |
9 | 墨田区 | 10,342.2m2 |
10 | 葛飾区 | 11,805.7m2 |
セキュリティ面の「安心・安全」についてはどうでしょうか?
あくまでも参考指標の一つですが、図4は1つの交番や駐在所でどれだけの人口をカバーしているかを示したものです。1件あたりの人口が少ないほど、治安態勢が整っているということもできます。
やはり都心3区が上位3位を占めています。都心部は行政庁や外国公使館、要人の公館も多いため、警備の人員が多く配されており、その周辺部の住宅地も、その恩恵に浴しているといえるでしょう。
なお、安心・安全についても、実際に現地を歩いてみて、夜道の街灯がきちんと整備されているか、女性が歩くのに不安を感じないか、周辺道路の交通量が多くて子どもに危険ではないかなど、目で見て確かめましょう。
建物は改装や建て替えによって改善できますが、場所は変えられません。
ただし、住所は変えられなくても、「住環境」についてはマンションの力で変えられる可能性があります。住宅地としての「格」が少し下がる場所でも、一定の規模と開発力があるタワーマンションなどの場合、超一等地の低層マンションよりも人気が出て、評価が高くなることが珍しくありません。
都心の第一種低層住居専用地域に立つ低層マンションは、戸建て並みの独立性と格式を持ち、築年数が古くなっても「ヴィンテージ」と称され、人気を保っているケースがよくあります。その一方で、容積率が限られるため共用施設を豊富に取ることが難しく、駐車スペースも限られがちです。築年数が古いと棟内の段差も残り、バリアフリー仕様にはなっていません。
それに対して、比較的新しく開発された大規模なタワーマンションであれば、敷地にゆとりがあり、駐車台数も豊富で、棟内の共用施設も充実しています。バリアフリーも標準です。戸建てや低層マンションにはない眺望も期待できます。マンションのエントランスから各住戸までのアプローチ(動線)も、住環境として重要です。つまり、総合点では、タワーマンションは一等地の立地を凌駕するケースもあるのです。
注意したいのは、別の開発によって価値が下がるおそれもあることです。隣にビルが建って眺望が損なわれてしまえば、評価は落ちるでしょう。隣接する敷地の環境や将来性が確定しているかどうかは重要なポイントになります。
以上のように、「立地の良さ」を見極めるポイントは多岐にわたります。立地条件のうち何を重視するかによってマンションの選び方も変わるでしょう。実際に街を歩き、ライフスタイルや将来設計に照らしながら眺め、ホンキで「ここに住みたい」と思える場所を探してみてはいかがでしょうか。
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