【プロ直伝】中古マンション売却法|流れ・価格の決め方・書類・税金も解説

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【プロ直伝】中古マンション売却法|流れ・価格の決め方・書類・税金も解説

中古マンションを売るときには「人生で初めての経験」という方も多いでしょう。そのため、知識がないまま取り組むと、失敗してしまうケースも少なくありません。不利益を避けるためにも、流れや必要書類などについては事前に把握しておきましょう。損をしないためには、「相場を把握しておくこと」も重要です。この記事では、不動産売却についてマニュアル化し、中古マンション売却の流れ、費用、相場の調べ方など必要な知識をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

目次

1. 中古マンション売却の流れ

中古マンション売却の流れ

不動産流通機構が2023年に行った調査によると、中古マンションの売却活動がスタートしてから、売買契約を締結するまでの期間は、平均で80.1日とされています。中古マンションを少しでも早く高く売却できるよう、以下の流れを確認し、慎重に売却活動を進めましょう。

STEP1】情報収集と準備

マンションの相場を調べたりローン残高を確認したりして、準備を進めます。必要書類は入手しやすいものから集めはじめ、売却活動がはじまる早い段階で揃えておくと、その後の売買活動から売買契約締結、所有権移転までがスムーズに進めやすくなります。具体的な必要書類は、次の項目でご説明します。

住宅ローンを返済中のマンションを売却する場合、売却金から売却経費を差し引いたお金で、今の住宅ローンを一括返済し、マンションに設定されている抵当権を抹消しなくてはなりません。

このシミュレーションを行う際に必要なのが、住宅ローンの残高証明書(もしくは返済予定表や償還表)のような、銀行が発行したローン残高が分かる書類です。

仮に、ローンが一括返済できない安い価格で売却が決まっても、ローンが返済できなければ抵当権が抹消できず、所有権移転ができないため、実質的には売却ができません。売却前に必ず、売却相場金額と残高証明書をもとにしたシミュレーションを行いましょう。

STEP2】複数の不動産仲介会社へ売却査定を依頼

不動産仲介会社が行う売却査定には、以下の2つがあります。

  • 机上査定:過去の取引事例と対象マンションを比較して、データだけで価格を予測する
  • 訪問査定:対象マンションを訪問して、机上査定の結果に補正を加えて価格を予測する

売却査定で利用する過去の取引事例は、どの不動産仲介会社も同じものを参考にするため、どの不動産仲介会社へ査定を依頼しても、出てくる査定金額に大差はないと思われがちです。

しかしマンション価格は、査定時点における類似マンションの需給バランスや、不動産仲介会社の査定方針、査定担当者の感覚などの影響を受けるため、不動産仲介会社によって査定価格にばらつきが出ます。

こういった背景を鑑みると、複数の不動産仲介会社へ査定依頼を行い、査定金額や査定根拠を広く募ったほうが、確実に売れる金額をより正確に知ることができるでしょう。

STEP3】不動産仲介会社を選ぶ

マンションの売却は自分でも行えますが、不動産仲介会社のサポートを受けずに進めると大変ですし、リスクも高くなるため、不動産仲介会社へ依頼するのが賢明です。また、良い条件でスムーズに売却するには、信頼できる不動産仲介会社を選ぶことも重要です。

まずは、売却査定でお世話になった複数の不動産仲介会社のなかから、説明が分かりやすく対応が良かった不動産仲介会社を候補に挙げましょう。売却するマンションおよび周辺エリアでの仲介実績が豊富な不動産仲介会社および担当者であれば、相場や対象顧客層を把握していて、売却戦略に長けています。

試しに、当該マンションの査定金額がなぜその金額になったのかを尋ねて、類似物件の数や比較内容および市場の動向など、根拠がスラスラと言えて説明内容が分かりやすいかどうかを比較してみましょう。会社名や熱意だけで決めず、市場の動向や買主のニーズをどれだけ分かっているのか、しっかり確認することが重要です。

STEP4】媒介契約を締結して売出価格を決める

【STEP4】媒介契約を締結して売出価格を決める

対応してくれた担当者の対応が良く、査定額とその根拠の説明に納得できたら、その不動産仲介会社と媒介契約を締結します。不動産仲介会社と話してマンションの売出価格を決め、売却活動を開始してもらいましょう。

このとき、不動産仲介会社との媒介契約は3種類にわけられます。それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるため、以下の表を参考にして決定しましょう。

専属専任媒介契約

専任媒介契約

一般媒介契約

1社の不動産仲介会社だけに依頼

1社とやり取りするだけで済む)

1社の不動産仲介会社だけに依頼

1社とやり取りするだけで済む)

2社以上の不動産仲介会社へ依頼

(複数社とのやり取りが必要)

自己発見取引できない

(必ず仲介会社が介在する)

自己発見取引できる

(売主が自分で見つけた買主へ、直接売却できる)

自己発見取引できる

(売主が自分で見つけた買主へ、直接売却できる)

媒介契約の最長期間は3ヵ月という定めあり

(媒介期間の自動更新は無効、売主の延長申出が毎回必要)

媒介契約の最長期間は3ヵ月という定めあり

(媒介期間の自動更新は無効、売主の延長申出が毎回必要)

定めなし

(行政指導は最長3ヵ月を推奨)

レインズ登録が必要
媒介契約後「5日以内」

レインズ登録が必要
媒介契約後「7日以内」

レインズ登録は不要
登録する場合でも時期は任意

活動報告が必要

1週間に1回以上

活動報告が必要

2週間に1回以上

活動報告はなくても良い

報告する際も頻度は任意

自己発見取引をすれば仲介手数料の支払いが不要になりますが、不動産仲介会社を排除した個人間売買は売主・買主双方のリスクが大きくなります。知人間であっても直接の売買取引はおすすめしません。

関連記事【『専任媒介契約』の特徴やメリットを知ろう! 「一般媒介&専属専任媒介」とは何が違う?

STEP5】売却活動と売買契約

売却活動では、不動産仲介会社に新聞折込広告の出稿や不動産情報サイトへの掲載を進めてもらい買主候補を探します。買主候補が内覧を希望した場合は、内覧に立ち会い、内覧する候補者からの質問に回答するなど、対応を求められる場合があります。もちろん、内覧時の対応を不動産仲介会社に一任することも可能です。

反響や内覧の数が少なく、売出価格が相場よりも高いことが原因だと考えられる場合は、時期や程度を考えながら段階的に値下げを行い、反響数を増やす工夫が求められるでしょう。

内覧した候補者から購入申込が入ったら、不動産仲介会社を介して買主と売主の間で売買価格や引渡し時期などの条件交渉を行い、お互いに合意ができたら売買契約の締結へと進みます。不動産売買契約では、不動産仲介会社の宅地建物取引士が、買主に対して法令に関する詳しい説明を行います。そして、売買条件や説明内容に問題がなければ、買主から売主へ手付金を渡し、双方が署名捺印を行って売買契約を締結です。

STEP6】決済してマンションを引渡す

【STEP6】決済してマンションを引渡す

売買契約書に定めた日に売買代金の残金を売主へ決済して、マンションの引渡しを行います。マンションの引渡しでは、売主が持っている玄関の鍵と書類一式(建築時の重要書類、設備のパンフレット、保証書、登記に関する書類など)を買主へ手渡せば、マンションの引渡しが完了します。

決裁が終わると同時に、司法書士が書類登記書類を持ってその日のうちに管轄の法務局窓口で登記申請を行い、登記が完了するまでの約2週間を待ちます。マンションの所有権が売主から買主へ問題なく移転したという登記ができれば、中古マンションの売却は完了です。

STEP7】売却の翌年に確定申告をする

マンションを売却して利益が出た場合には、その利益に対して譲渡所得税がかかるため、利益が出た方はマンションを売却した翌年に、税務署へ確定申告をして納税しなくてはなりません。確定申告期間は、原則として毎年216日〜315日までであり、その日が休日や祝日なら翌日が期限日に変更されます。

なお、購入時よりも売却時の価格が高くなったために、売却によって利益が出たというケースはかなり少ないのが実情です。また、利益が出たとしてもその利益金額が3,000万円に満たない場合は、特別控除の特例によって非課税になるため、実際に譲渡所得税を申告・納税するケースはほとんどないと言っても良いでしょう。

むしろ、マイホームの買い替えで売却損が出た場合に「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を使って節税するために確定申告を要するケースがあるため、注意が必要です。

2. 中古マンションを売却するときの必要書類

中古マンションを売却するときの必要書類

中古マンションを売却する際には、以下のような書類が必要です。

書類

入手方法

準備する時期

履歴事項証明書(登記簿謄本)

法務局で取得、有料

売却査定の依頼時

登記識別情報(登記済証・権利書)

購入時の資料を確認

固定資産税納税通知書

(固定資産評価証明書)

家のなか自治体から毎年送られてくる書類を探す

(市区町村役場で取得、有料)

住宅ローンの残高証明書

家のなか金融機関から毎年送られてくる書類を探す(再発行、有料)

リフォーム履歴の確認資料

家のなか実施した場合は控えを探す

本人確認書類(免許証など)

家のなかすでに持っているものを探す

購入時の物件資料

家のなかを探す購入時の資料を確認

売却活動の開始時

購入時の売買契約書

家のなかを探す購入時の資料を確認

購入時の重要事項説明書

家のなかを探す購入時の資料を確認

売却に関する媒介契約書

不動産仲介会社が用意する

マンション管理規約

家のなかを探す購入時の資料もしくは更新された最新版を確認

売買契約書類の作成時

耐震診断報告書(あれば)

アスベスト使用調査報告書(あれば)マンション管理規約

家のなか実施した場合は控えを探す

重要事項調査報告書耐震診断報告書(あれば)

アスベスト使用調査報告書

不動産仲介会社が用意する

印鑑証明書(発行後3ヵ月か月以内)

市区町村役場で取得、有料

残金決裁・引渡し時

住民票(発行後3ヵ月か月以内)印鑑証明書(発行後3か月以内)

市区町村役場で取得、有料

銀行口座の通帳住民票(発行後3か月以内)

家のなかすでに持っているものを探す

上記は売却時の基本的な書類であり、ほかにも個別の事情に応じて追加書類が必要になるケースもあります。分からないことがあれば、仲介を依頼する不動産仲介会社へ確認してみてください。

3. 中古マンションを売るときにかかる諸費用や税金

中古マンションを売るときにかかる諸費用や税金

ここでは、中古マンションを売却する際に、どのような費用や税金がかかるのかについてご説明します。

3-1.仲介手数料

仲介手数料は、売買の仲介を依頼した不動産仲介会社へ払う手数料であり、売買契約が成立した場合にのみ支払う成功報酬です。

マンション売却にかかる仲介手数料の法定上限額は、売却価額が400万円超の場合、取引額の3%+6万円であり、売主・買主の合意があれば上限額を超えない範囲で自由に設定できます。なお、仲介手数料には別途消費税がかかります。

以下で法律の定める仲介手数料の上限額を示します。

【不動産仲介手数料の速算表】

不動産が売れた価格

仲介手数料

200万円以下の場合

(売却価格 × 5%)+ 消費税10

200万円を超え400万円以下の場合

(売却価格 × 4 + 2万円)+ 消費税10

400万円を超える場合

(売却価格 × 3 + 6万円)+ 消費税10

なお、低廉な空き家等(程度が悪く格安な物件)の仲介手数料を増額することで、空き家の流通量や流動性の向上を狙ったルールが新設されています。

低廉な空き家等に限った仲介手数料の上限額

2018年改正

2024年改正

売却価格の区分

400万円以下

・状態が悪い物件

800万円以下

・状態が悪い物件

仲介手数料の上限額

18万円(税抜き)

30万円(税抜き)

適用する報酬の範囲

・売主からの手数料に限る

・売主および買主の双方

寄与する手数料額

・売主18万円

・売主30万円、買主30万円

・合計60万円

関連記事はこちら【不動産売買に必要な仲介手数料とは?計算方法など解説

3-2.印紙代

不動産の売買契約書には、印紙税の課税文書として契約書ごとに収入印紙を貼らねばなりません。印紙代は不動産が売れた取引価格によって変わり、高額で売れればその分高くなります。

印紙額については、2027(令和9)年331日までに作成する文書に関しては、以下の「軽減税率」が適用されます。

不動産の売却金額

本則税率

軽減税率

10万円を超え 50万円以下のもの

400円

200円

50万円を超え 100万円以下のもの

1千円

500円

100万円を超え 500万円以下のもの

2千円

1千円

500万円を超え 1千万円以下のもの

1万円

5千円

1千万円を超え 5千万円以下のもの

2万円

1万円

5千万円を超え 1億円以下のもの

6万円

3万円

1億円を超え 5億円以下のもの

10万円

6万円

5億円を超え 10億円以下のもの

20万円

16万円

10億円を超え 50億円以下のもの

40万円

32万円

50億円を超えるもの

60万円

48万円

3-3.登記費用

不動産登記では、登録免許税という税金と登記を代行する司法書士への報酬がかかります。ただし、所有権移転登記については買主が負担するのが一般的であるため、その費用について売主は払う必要がありません。

一方、住宅ローンの抵当権抹消登記を行う場合には、売主が費用を負担します。抵当権抹消にかかる実費は1つの不動産について登録免許税が1,000円ですが、申請を代行する司法書士への報酬も発生します。

売主が負担すべき抵当権抹消に関する司法書士報酬の相場は、およそ11.5万円です。

3-4.譲渡所得税

中古マンションを売却して利益が出ると、売主に譲渡所得税がかかる可能性があります。譲渡所得税が発生すると、その所得税の増額分によって翌年の住民税も高額になります。

所得の種類

不動産を所有していた期間

適用税率

短期譲渡所得

所有期間5年以下の土地・建物

39.63%

(所得税 30.63% 、住民税 9%

長期譲渡所得

所有期間5年を超える土地・建物

20.315%

(所得税 15.315% 、住民税 5%

譲渡所得税は、以下の計算式で算出します。

課税譲渡所得金額 = 収入金額※1 -(取得費※2 + 譲渡費用※3- 特別控除額※4

※1:マンションの譲渡代金、固定資産税・都市計画税の精算金など

※2:購入時の仲介手数料や登録免許税、司法書士報酬、不動産取得税、印紙税、リフォーム費用

※3:売却時の仲介手数料や印紙税

※4:税額軽減のための特別措置

自己居住用マンション(マイホーム)の場合、課税譲渡所得金額(売却利益)が3,000万円までは譲渡所得税がかからないという特例があります。

上記以外にも、マンションの売却では次のような費用がかかる可能性があります。

3-5.その他費用

例えば、以下のような費用がかかることがあります。

  • 証明書取得費:ローン残高証明書や管理規約、住民票や印鑑証明書など
  • ローン一括返済手数料:住宅ローンを繰り上げ返済した場合に銀行へ支払う手数料
  • リフォーム代:売却前に行ったリフォーム代
  • 引越し代:部屋を空けるための引越し代
  • 仮住まい代:引越した先の賃貸契約金や家賃など

4. 中古マンション売却相場の調べ方

中古マンションをなるべく高く売るには、事前に「相場」を把握しておく必要があります。相場が分からないと、査定価格の妥当性を自分で判断できず、不要な値下げをしてしまうかもしれません。

以下で、中古マンションの相場が決まる要因や調べ方をご紹介します。

築年数やエリアの人気度合いで相場が変わる

一般的な中古マンションの相場は、マンションが建つエリアや築年数によって変わります。例えば築年数が浅い都心の人気エリアなどの中古マンションの場合には、相場は高値で推移しやすいですし、郊外の築年数が古い中古マンションの場合は、相応の価格になります。

築年数やエリアの人気度合いで相場が変わる

東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場2020年」をもとに筆者が作成

ただし、東京都心の超人気エリアのマンション(いわゆるヴィンテージマンション)では、築年数が相当経過していてもむしろ高額のケースがあり、築年数と相場価格は必ずしも連動するものではありません。

人気マンションの条件や特徴

項目

人気の条件・特徴

立地

南向き・人気エリア・人気沿線・人気駅・駅からの距離・周辺環境・治安 など

設備

室内設備

ウォークインクローゼット・バリアフリー・シューズインクローゼット・床暖房・複層ガラス・インターネット無料 など

水回り

追い炊き機能・浴室乾燥機・食器洗浄乾燥機・温水洗浄便座・カウンターキッチン・3口コンロ など

耐震性能

耐震基準、耐震性能や免震設備 など

築年数

一般的に新しいほうが人気になりやすいが、

予算の範囲内で、駅距離重視なので築年数を犠牲にするという場合もあり、古いからダメということはない

共用施設

オートロック・駐車場・防犯カメラ・TVモニター付きインターホン・高速ネット回線

宅配ロッカー・24時間ゴミステーションなど、求められる水準が高くなっている

以上のような知識を持って、マンションの相場価格を調べましょう。

相場の調べ方

相場の調べ方は、おもに下記の3つです。

  • 取引事例を調べる
  • 売出事例を調べる
  • 不動産仲介会社へ確認する

それぞれ、以下にて解説します。

取引事例を調べる

まずは、国や不動産流通機構(REINS、レインズ)が公表している、過去の不動産取引事例を確認しましょう。国土交通省は「不動産情報ライブラリ」により、不動産取引価格(不動産取得者へのアンケート調査結果)や成約価格(レインズの成約登録)の情報を公表しています。

住所や路線・駅名、不動産の種類、取引時期などの条件によって検索できるので、売ろうとしている物件に近いものを探してみましょう。(具体的なマンション名では検索できないため、エリアの相場を参考程度に調べるのに役立ちます。)

不動産産流通機構(REINS)の「REINS Market Information(レインズマーケットインフォメーション)」も中古マンションの取引事例を公表しているので、参照してみてください。(具体的なマンション名では検索できませんが、エリアの相場を参考程度に調べるのに役立ちます。)

なお、いずれも過去の成約価格そのものが蓄積されているため、かなり信憑性の高いデータベースです。しかし、売却の緊急度や物件の劣化状況、当時の売買市場の需給バランスまでは分かりません。当時の相場よりも高いもしくは安い価格で取引されている可能性があることを理解して利用しましょう。

売出事例を調べる

相場を知りたいときは、SUUMOat home などの不動産情報ポータルサイトを見てみる方法もあります。さまざまな物件について売出価格が載っているので、自分と同じマンションの別の部屋や周辺にある条件が似たマンションの売出事例を探してみましょう。

ライバル物件がどのくらいの金額で売り出ししているかが分かり、ずっと売り出して売れ残っている物件は、「相場より価格が高いのでは?」という予測が可能です。ただし、不動産情報ポータルサイトでは、実際の売出価格が変更された場合でも、サイトの情報がリアルタイムに書き換わらないことが少なくありません。

また、この先の価格変更や値下げ交渉を見越して高めの価格に設定されていることも多いため、相場や成約価格よりも高めの金額である点にも注意しましょう。

不動産仲介会社へ確認する

不動産仲介会社の担当者に相談すると、相場について教えてもらえるケースがよくあります。誠実な営業担当であれば、同じマンションや近隣に建つ類似マンションの事例などを引き合いに出して、詳しく伝えてくれるでしょう。

マンションの売却価格を査定するのは、不動産営業マンです。そして、市場の動向に対して常にアンテナを張っている営業マンであれば、正確な相場を把握している可能性が高いでしょう。気になることがあれば、不動産仲会社へ確認してみてください。

5. 中古マンションをなるべく高く売るためのポイント

中古マンションをなるべく高く売るためのポイント

マンションを上手に売るため、以下のような工夫をしてみてください。

  • 相場を念入りにチェックする
  • 売却期間に余裕を持つ
  • 不動産仲介会社を慎重に選ぶ
  • 売り時を見極める
  • 内覧対応にも力を入れる
  • ホームインスペクションで信用を上げる

それぞれについて、以下で解説します。

相場を念入りにチェックする

前述のように、売出前に自身でも相場を確認しておくことが極めて重要です。あまりに相場から外れた価格のままで売り続けても、売れる可能性は低いため時間が無駄になります。また買主から条件交渉されても相場を知らなければ、かなり安い価格で売って損をしてしまうでしょう。

また、成約事例などから分かる相場以外にも成約価格に影響する条件があるため、以下のような市場の動向に敏感であることも大切です。

  • 同じマンション内や近隣で、新たな競合物件が売り出された
  • 競合物件が大幅に値下げをして、相場よりも安い価格で成約した
  • 春の転勤・異動時期の終盤にさしかかり、反響や内覧が減ってきた
  • マンション内やその周辺で、ネガティブな事件が起こった

このように、適正価格で売却するためにも、近隣の取引事例などを参考に相場を知っておくべきです。先にご紹介した方法を併用して、売りたい物件の相場を把握しておきましょう。

以下のページでは、マンションだけでなく一戸建てや土地の売却相場を、簡単な操作で知ることができます。

特に、(価格 / 面積)や(価格 / 間取り)でプロットした物件分布図や、過去4年の相場価格の推移グラフで視覚的な相場把握ができる点が秀逸です。ぜひこちらをご欄いただき、相場の確認にお役立てください。

マンションの売却相場

売却期間に余裕を持つ

マンションは、売り出してから実際に売れるまでに3ヵ月程度かかるのが一般的です。場合によってはそれより長くかかることも少なくないうえに、準備期間を含めるともっと長期になることも珍しくありません。急ぐとどうしても値下げせざるを得なくなるため、売却開始から完了までの期間は時間的に余裕を持って対処することが重要です。

例えば、3月入居を希望する買主の場合は、入居から逆算すると以下のような期間が必要になります。

  • 2週間:リフォーム工事
  • 1ヵ月:売買契約締結から残金決済・マンション引渡しまで
  • 2ヵ月:内覧などの物件探し
  • 2週間:候補地や購入物件、資金計画を決める

つまり、この例では探しはじめてから入居するまでに4ヵ月かかるため、3月入居を確実にするなら11月中旬には購入の行動とはじめなければなりません。

そのため、このような買主へ物件をアピールすべき売主も、同様に11月には売却相談や査定などの行動を開始するスケジューリングが必要です。できるだけ高く売るためにも、ゆとりのあるスケジュールを設定して行動しましょう。

不動産仲介会社を慎重に選ぶ

売却活動を依頼する不動産仲介会社の選定は、特に重要です。しっかりアドバイスしてくれて、信頼できる不動産仲介会社を選べば、どのようなマンションでも早く高く売れやすくなるでしょう。

以下のような視点で、不動産仲介会社を選んでみてください。

  • 多数の類似物件やエリア案件の実績・経験がある
  • 心を開いて話しやすく、説明が上手で分かりやすい
  • レスポンスが早く、コミュニケーションをとりやすい
  • きれいな写真を撮って効果の高い広告を出してくれる
  • 売主から尋ねなくても、マメで簡潔な進捗報告がある
  • 関連する法令、税制、条例などの正確な知識がある
  • 実際に、自分にとって大切な誰かに紹介したいと思える

売り時を見極める

高くて早く売却するなら「売り時」の見極めも重要です。マンションは、春の転勤・異動時期のタイミングを逃すと、その後から次の春までは価格を下げてもなかなか売れなくなってしまうケースも少なくありません。

良い買主が見つかったら、ある程度の値下げ交渉には応じるなど、最適な価格で売り抜ける決断力が求められます。ただし、タイミングよく売ることと売り急ぐのとは違います。

契約すべきかどうか迷ったときには不動産仲介会社に相談し、場合によってはいったん売却を中止して別の時期に仕切り直すという選択肢も検討してみてください。

内覧対応にも力を入れる

内覧対応にも力を入れる

中古マンションを高額で売りたいなら、内覧対応も非常に重要です。物件だけでなく売主へも良い印象を持ってもらえたら、予算よりも多少高くても売主が大切にしてきたマンションだからと、買主が買いたい気になるからです。

すべてを不動産仲介会社任せにせず、できるかぎり自分でも対応しましょう。うるさく付きまとわないように物件の良い点をさり気なくアピールすると、感じよく受け止めてもらえる可能性が上がります。

住んでみて意外と良かった点や、思ったほど良くなかった点、住むならこの点を工夫すべきなど、住んだ人にしか分からないメリット・デメリットを伝えてあげると、生活が具体的にイメージできて喜ばれるでしょう。

また、部屋や水回りの清潔感や荷物の整理整頓、特有の匂いなどへの配慮も重要です。内覧前にきれいに片付けておくことや水回りを掃除、室内の空気の入れかえをしておくなどの対応が必要です。もしも不安があるなら、事前に不動産仲介会社の担当者に内覧対応方法を相談して、必要なら補修やハウスクリーニングなどを入れておくと安心でしょう。

ホームインスペクションで信用をアップさせる

中古マンションの場合「ホームインスペクション」を受けると買主候補の信頼を得やすくなって売れやすくなる可能性があります。ホームインスペクションとは、専門のホームインスペクター(住宅診断士)にマンションの調査をしてもらい、報告書を発行してもらえるサービスです。

建物の設備や劣化状況などを、第三者の立場からプロの目線で見てもらい、詳細で専門的な診断が受けられます。買主候補にしてみると、専門家による第三者目線でマンションのコンディションを確認できるので、価格相応のマンションである証明になり、リスク回避ができて安心して取引に入れるというメリットになります。

また、インスペクションに合格すれば「瑕疵担保保険」を付保することができ、買主にとっても補修費の補償や税制メリットがあるため、インスペクション実施はおすすめです。

多少の費用はかかりますが、買主からの信用性アップや契約不適合責任(引渡し後の予期せぬ不具合発覚)の確実な回避のためにも、ホームインスペクションを入れることが効果的な対策になるでしょう。ちなみに、ホームインスペクションの相場費用や作業実施時間は以下の通りです。

  • 70〜100平方メートルのマンションの費用相場:46万円
  • 非破壊調査や目視調査が基本であり、現場作業は2時間程度

6. まとめ

マンションをスムーズかつ高値で売却するには、事前の相場の把握や流れ・費用・税金に関する知識、不動産仲介会社選びなどが重要になります。まずは、相場を自ら調査したうえで、いくつかの不動産仲介会社に査定依頼を出して、その対応姿勢などから信頼できる不動産仲介会社を選定しましょう。

あくまでも購入を決めるのは買主です。買主の目線や価値観に合わせた売却方針や対策を紡ぎ出せる経験豊富な売却担当者を見つけて、ぜひ思い通りのマンション売却を成功させましょう。

関連記事【不動産を売却する方法と流れ|家や土地を売るときに知っておくべき手続きと注意点

7. よくある質問

よくある質問

ここからは、マンション売却で売主からよく挙がる質問とその回答をご紹介します。

7-1. 売りやすいマンションの条件、特徴とは?

一言で言うなら、万人受けするマンションを選んで買うことがベターです。

  • 駅近立地(線路沿いの騒音がある場合は注意)
  • 住環境(買い物利便、治安、日当たり、生活施設へのアクセスなど)
  • 築年数は浅いほうがベター
  • 凝った間取りではなく、シンプルで使い勝手のいい間取り
  • 大手不動産会社が分譲したブランドマンション
  • 地元の誰もが知っているような有名マンション
  • 同エリアに類似物件がないマンション(例えば、全戸分の平置き駐車場が設置してあるなど)
  • 大規模マンション(マンションの意匠、共用施設の充実)

もちろん住むことが大前提なので、上記すべてを満たす物件を探すのではなく、自分の好みと合致する特徴を持ったマンションを探すことが大切です。

7-2. 買ったときより高く売れるマンションってあるの?

はい、買ったときより高く売れることもあります。下記のような要素を網羅しているケースが多いようです。

  • 売りやすい物件の特徴が多くある
  • 購入したタイミングと売却したタイミングが良かった
  • マンションが建っているエリアを取り巻く環境が良化した

具体例では下記が挙げられます。

  • 駅前、駅周辺開発がはじまると同時期に買った駅直結タワーマンションを、開発後に売る
  • 再開発で地域ごと一新され、土地の価値とともにマンション価値も上昇した後に売る
  • 購入時は駅まで遠い立地だったが、10年後に新しい駅が徒歩5分の位置に開通したことにより駅近立地になった後に売る
  • 値上がり必至の超人気地区やマンションがある(東京なら、湾岸エリアなど)

7-3. 10年くらい住んで売るつもりでマンションを買うというのは、一般的な考え?

昔は、家は一生に一度の買い物と言われていた時期もありましたが、今は将来の住み替えを前提とした購入をする方もいらっしゃいます。「住宅ローン金利が低く、比較的若いうちから家の購入が可能となったこと」「

長寿命化で、一生のうちで家族数の変化が複数回おきることが多くなったこと」などが考えられます。

上記のような変化にも対応できるマンション購入を考えた場合、10年後にも資産価値が下がりにくいマンションを選ぶ方が多く、一般的な考え方になったと言えるでしょう。

7-4.「買い先行」と「売り先行」はどちらがいい?

どちらが良いということではありませんが、マンション売却の多くは売り先行で行われます。買い先行では2つ目のローンを先に組みますが、ローンを並列で2つ組める方は医者や弁護士、有名企業の役職者などに限られるため、買い先行が可能な方のほうが圧倒的に少ないです。

もっとも資金効率が良いのは、売却活動を売り先行で行い、売却とともに購入先を決めて両方の決済を同日に合わせる方法です。

7-5. 「囲い込み」とは何のこと?

自分だけが売主の窓口(おもに専属専任媒介契約・専任媒介契約)という立場を利用して、物件情報をほかの不動産仲介会社へ渡さず、他者の内覧をすべて断るなどの不健全な売却活動を指します。

目的は、自分が買主を探して両手仲介で手数料を儲けようとする自分勝手な行為ですが、売主自身が囲い込みされていることを確実に見つけるのは難しいのが現状です。

防ぐ方法としては、一般媒介契約で複数社に売却を依頼して情報をオープンにする、囲い込みだけは絶対にしないでほしいと伝える、といったものがあります。

7-6. 「債務超過なので任意売却をする」とは、どういう意味?

債務超過:手元に残った売却金と自己資金を足しても住宅ローンが完済できない状態

この場合、一般的な仲介では売れないため、銀行から承諾をもらってする「任意売却」という方法で売却を行います。ただし、自分が希望しても債権者の承諾がなければできないことや、売却金額が相場よりも安くなること、ローン返済を数ヶ月滞納するために個人信用情報に傷が付くなどのデメリットがあります。

柴田 敏雄

柴田 敏雄

宅地建物取引主任士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。

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