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特集コラム

#マンションの間取り考

2019.10.29

マンションのリビング・ダイニングの「形」とメリット・デメリット

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マンションの間取りでリビングの「形」に着目すると、バルコニーに面して間口いっぱいにリビング・ダイニングが広がる「横長リビング」と、バルコニーに長方形リビングの短辺が面し、その奥にダイニングとキッチンが奥にのびるように縦につながって設けられる「縦長リビング」の2パターンが多いことに気がつきます。

代表的な間取り図を見ながらそれぞれのパターンのメリット・デメリット、選ぶときのポイントを確認しておきましょう。また、同じ面積のリビング・ダイニングで形が「正方形」と「長方形」の場合、どちらが使いやすいかも検証してみましょう。

明るく開放感がある「横長リビング」

横長リビングからワイドサッシがついたバルコニー側をみる

「横長リビング」は、マンションのバルコニーに面して間口いっぱいにリビングとダイニングが隣り合って配置されていること、バルコニー面に巾(はば)が広いワイドサッシが設けられていることが特徴です。

間口いっぱいの大きな窓から陽ざしが入り、窓から外への視界も広がるため、明るく開放感があるリビング・ダイニングになります。リビングの奥に小さな個室(【図1】洋室3)が設けられるケースが多く、境にある戸(引き戸の場合が多い)を開け閉めすることで、リビングと一体に使ったり、時には個室として使うこともできます。

【図1】横長リビングの間取りと家具配置例

横長リビングを選ぶときのメリット・デメリット

明るく開放感がある横長リビングは、リビング・ダイニングの居住性を重視するファミリーに好まれる間取りです。小さな子どもや高齢者など、リビング・ダイニングで過ごす時間が長い家族がいるファミリーに向いています。また、リビング空間とダイニング空間が横に振り分けられているため、使い分けがしやすい点も特徴の一つです。

リビングの奥にある個室(【図1】洋室3)の用途ですが、普段はリビングと一体に使う想定で書斎や趣味のスペースに、来客時には客間として使うなどがおすすめです。

この個室には窓がないことが多く、戸を開け放つことで隣接するリビング・ダイニングを介して明るさと通風を得るという考えの間取りになっています。また、エアコンが取り付けられない構造になっていることがあるため、戸を閉め切って個室使いをする予定のある人は注意が必要です。

リビング横の個室の使い勝手がよい「縦長リビング」

奥まった位置にあるキッチンからバルコニーを見る

「縦長リビング」の間取りは、バルコニーに面してリビングが設けられ、その奥にダイニング、さらに奥にキッチンと、リビング・ダイニング・キッチンが縦に並んで配置されるパターンが多くみられます。

リビング横の個室(【図2】洋室2)は、バルコニーに面して掃き出し窓があり、通風・採光に恵まれて快適な空間となることが大きな特徴です。この位置にある個室はリビングインの子ども部屋としても人気があります。

【図2】縦長リビングの間取りと家具配置例

縦長リビングを選ぶときのメリット・デメリット

縦長リビングの間取りの特長はリビングに隣り合う個室(【図2】洋室2)の使い勝手の良さにあります。この位置にある個室はバルコニーに面して大きな窓があり、採光と通風が得られるため、快適な空間となります。

この個室はリビングから目が届きやすく、子ども部屋や高齢の家族の部屋としても適しています。また、縦長リビングは横長リビングに比べて壁面が多いので、家具の配置がしやすいというメリットがあります。

一方、ダイニングとキッチンはバルコニー側の窓から離れて奥に配されるため、太陽光が届きにくく、側面に窓がなければ室内はやや暗めになるでしょう。キッチンとリビングに距離があるため、キッチンにいる人とリビングにいる人とのコミュニケーションがやや取りにくいかもしれません。

長方形と正方形、どちらの形のリビングがよい?

次に、同じ面積のリビング・ダイニングの形が「正方形」と「長方形」だったら、どちらの形が使いやすいでしょうか。約10畳程度の広さのリビング・ダイニングで検証してみましょう。

【図3】リビング・ダイニングが正方形をしている間取りと家具配置例

【図3】はキッチンがバルコニーに面しているマンションの間取りです。リビング・ダイニングは縦約4m×横約4mの正方形に近い形をしており、広さは約10畳あります。そこに【図3】に示したように4人掛けのダイニングセットを入れると壁際にソファーを置くことができますが、ソファーの前面は通路になるため、ソファーの前にリビングテーブルを置くことは難しそうです。リビング空間とダイニング空間を明確に分けることも難しそうです。

一方、前述した【図2】のリビング・ダイニングは、広さは同じく約10畳で縦約4.7m×横約3.6mの長方形をしています。リビングセットとダイニングセットが両方レイアウトでき、空間はつながってはいますがそれぞれの用途別に使い分けしやすくなっています。このことからも、同じ面積の場合、リビング・ダイニングの形は正方形よりも長方形の方が、家具の納まりや使い勝手が良いことがわかります。

家具がレイアウトしにくい時はリビング・ダイニング兼用家具を

【図3】のようにリビング・ダイニングが正方形で、リビングセットとダイニングセットの両方を置くことが難しい場合は、リビング・ダイニング兼用家具を選択するという方法があります。リビング・ダイニング兼用家具とは、例えば椅子はソファー形式で、セットのテーブルは天板が広く、足が長めでソファーに座ったまま食事をとりやすい形をしており、「くつろぐ」「食べる」の両方を満たすように作られた家具です。最近ではニーズが高まり、家具コーナーに行くと、この形式の家具がたくさん展示されています。

リビング・ダイニング兼用家具の例

マンションの間取りでリビング・ダイニングの「形」に注目すると、長方形、正方形、時には三角形などさまざまな形を目にします。もちろん間取り選びはリビング・ダイニングの「形」だけで判断するものではありません。

ですが、もし同じような条件の間取りがあり、横長リビングか縦長リビングかで迷ったときには「リビングの居住性を重視する(=横長リビング)」のか、「リビングに隣り合う個室の居住性を重視する(=縦長リビング)」のか、どちらをより重視するかで選ぶとよいと思います。

正方形や三角形のリビング・ダイニングは、まずは家具レイアウトをしてみて使いたい家具が置けそうかどうかを見極めてください。もし難しそうであれば、最近よく見かけるようになったリビング・ダイニング兼用家具の利用なども視野に入れて検討してみるといいでしょう。

井上恵子(いのうえ・けいこ)

井上恵子(いのうえ・けいこ)

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/

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