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特集コラム

#住まいのリセット術

2019.08.20

「狭さを克服」できる、リフォームとインテリアのポイントは?

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「限りあるスペースの中でも、できる限り広々と感じられる空間作りをしたい」リフォームのときに誰もが考えることではないでしょうか。今回、リフォームはもちろん、インテリアにおいても狭さを克服するためのアイデアを『40代からの住まいリセット術』の著者、水越美枝子さんに伺います。

視線の先を抜けるようにすると広く感じる

――視覚的に狭さを感じさせないようにする方法はありますか?

人の目線は、部屋に入ったときに視線を受ける壁やつき当たるものがなく、遠くまで空間が抜けていると広く見えます。具体的なリフォームの手法をいくつか紹介しましょう。

●視線の先を見渡せる間取りに変更する
まず、「視線の先」を意識してみましょう。入口から入ったときに、部屋の奥の方まで遮る物がない状態で見通せると、ずっと広く感じられます。

リビング・ダイニングの入口から奥の和室を見せることで、奥行きが出て広く感じられる(写真右奥)

和室の入口が引き戸になっており、扉を引き込んだ状態にしておくと、リビング・ダイニングから和室の奥まで視界が抜けるため、開放感があり、広く見えます。

●垂れ壁を取り除く
部屋を仕切ったり、広く使いたい時には、引き戸などの建具で間仕切りしますが、建具の上に垂れ壁があると、私たちの目には一つの空間に見えないものです。

垂れ壁の例―右の引き戸の上が垂れ壁になっているため、引き戸を開けても部屋は広く感じられない

前述の通り、人間は屋内に入ったときには目線が上に行くものなので、部屋の仕切りや扉の位置を下げずに天井高を通すことで、部屋の区切りを意識せずに広く感じられます。

壁面収納やドアについても、工夫次第で印象が変わります。マンションの壁面収納に垂れ壁があると、収納の上の部分が使えませんし、見た目も狭く感じる一因となります。リフォームの際に垂れ壁を取り除き、収納の扉を天井までの高さがあるものに変えることで、壁と一体化し、広く見せることができます。

今は既製品でも「ハイドア」と言われる背の高いドアもあるので、ドアや壁面収納の扉を天井いっぱいまで設置することも考えてみてください。

ハイドアの例

●視線を遮らない、背の低い収納を活用する
収納に関して、もう一つのアイデアは、背の低い収納を活用することです。たとえば、ダイニングの収納をカウンター収納にする方法などがおすすめです。ダイニングの椅子やリビングのソファに座った時に、収納が目線を遮らない高さにしたり、上下に分けると、視界が抜け、そこに収納があっても狭くは感じないはずです。

カウンター収納の例

●廻り縁や巾木の色を揃える
視線を遮らない、という考え方では、廻り縁(まわりぶち)や巾木(はばき)の色にも注意が必要です。壁の色と異なる色でメリハリをつけるデザインをよく見かけますが、狭い部屋の区切りがハッキリと線を引いたように見え、より狭く感じてしまいます。

廻り縁や巾木の例―天井と壁との境にある茶色の廻り縁や巾木が部屋を余計に狭く感じさせる

部屋を広く見せるという観点では、狭い部屋の場合は周り縁や幅木は壁や天井と同じ色にするか、「つけない」という選択をするのも良いでしょう。天井と壁もクロスなどを同じ色で揃えれば、さらに広さを感じさせることができます。

巾木、壁や天井のクロスを同じ色で揃えた例

●和室の場合には、窓の位置を下げる
和室の場合、座っているときには視線が下に行くので、あえて垂れ壁をつけて窓を下げると、落ち着いた空間に感じられます。

和室の壁の下部分に窓を設けた例

天井は高い方が広く見えるとは限らない

――居室の天井高をアピールするマンションもよく見られますが、天井が高いとやはり広く見せることができるのでしょうか?

天井を2400mm以上は欲しいと、高さにこだわる方も多いのですが、2400mmを確保することにこだわらなくてもいい、と私は思います。「天井を高くすると広く見える」と、よく言われますが、日本の狭い家では、あまり天井を高くすると部屋全体のプロポーションが悪くなってしまうのも事実です。エアコンの温度調節も難しいですし、デメリットもあると思います。

人間の視野では、自分が立っている場所の真上の天井の高さは、頭がぶつかりそうなほど低くなければ、実はあまり気にならないものです。逆に、自分の立っている場所の天井の高さが低かったとしても、そこから奥にかけて3000mmの高さに変化する斜め天井であれば、それはかなり広く感じるはずです。

斜め天井の例

狭いところがあるからこそ、対比で広さを感じることができます。空間にメリハリをつけることも大切です。

目線を意識すること。そして色を多く使いすぎないこと。

――狭さを緩和することができる家具や、インテリアグッズの選び方・使い方があれば、教えてください。

繰り返しになりますが、意識すべきポイントは「目線の通り」です。部屋の作りと同じく、インテリアに関しても視線を遮らないように考えることで、狭さを緩和できます。

●ソファは背もたれの低いものを
リビングに置くソファの背もたれなどは、前述のカウンター収納と同じ理屈で、視線を遮らないようにあまり高くないものを選ぶと良いでしょう。

背もたれの低いソファを使用した例

他にも、ダイニングテーブルやチェストなど、それぞれの高さを低めに揃えることで、上部が抜けて、広く見せることができます。

●カーテンよりもシェードの方が広さは出せる
窓に取り付けるカーテンは、ドレープカーテンにすると、カーテンの幅で壁から20cmくらい手前の位置に来ることになります。一方、シェードは5cmほどの厚みで済むので、カーテンより部屋を広くできます。さらにサッシの枠の中に入れることができれば、壁より出ることはありません。

保温効果やインテリア性を重視するときには、カーテンの方が選択肢が多くて良いのですが、広く見えることを優先させるのであればシェードはおすすめのアイテムです。

広さを感じさせるには窓周りへの配慮も必要

●「黒い」部屋より、「白い」部屋に
色に関しては、壁や天井の色は明度が高い、つまり明るい色の方が広く見えます。ファッションでも白い服を「膨張色」と呼ぶように、白っぽい方が圧迫感がないうえに反射率も高いので、部屋全体が広く、明るく見えます。


空間を効率よく使った収納を確保し、視覚的な効果を活かして抜け感を出すこと。この2つのポイントをメリハリをつけて考えることが、狭い部屋をより広く感じさせる鍵となるようです。

一級建築士の水越美枝子さんに話を伺ってきました。女性目線ならではの家事動線や収納・インテリアの配置のヒント、これからマンションリフォームを考える方に、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

水越美枝子(みずこし・みえこ)

水越美枝子(みずこし・みえこ)

一級建築士。日本女子大学住居学科卒業後、清水建設(株)に入社。商業施設、マンション等の設計に携わる。1991年から6年間バンコクに滞在。1998年、一級建築士事務所アトリエサラを共同主宰。新築・リフォームの住宅設計からインテリアコーディネート、収納計画まで、トータルでの住まいづくりを提案している。著書に「40代からの住まいリセット術――人生が変わる家、3つの法則」「いつまでも美しく暮らす住まいのルール――動線・インテリア・収納」「人生が変わるリフォームの教科書」など。2022年11月に新刊「一生、片付く家になる!散らからない住まいのつくり方」を発刊。

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