マンションデータPlus

ネットで住み替えノムコム nomu.com

特集コラム

#マンション管理・コミュニティ

2019.04.25

機能する組合はこう違う!「マンション・コミュニティ」最前線

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア

前回のコラム(まずはここから!マンション管理の基礎知識)では、個人がマンションでの「居住」を豊かにし「売却・賃貸・相続」を有利にする方法として「管理」を重視する時代であることを話しました。

また、適切に「管理」されたマンションは、区分所有者同士がチームワークをもってマンションの将来を語り合い、一つずつ実行に移すことで、マンションの資産価値を高め、同じ立地や築年数の近隣マンションに比べて差別化できる時代になってきたことも話しました。

ですが「区分所有者同士が」「チームワークをもって」「マンションの将来を語らい実行に移す」ために具体的にどのようにすれば良いか、ピンと来ない方はとても多いのではないでしょうか。

理事を「義務」「ボランティア」でやるのはもう古い

法律上、マンションを購入すると自動的にそのマンションの「管理組合の一員」となり、管理組合の執行部である理事が順番に回ってきます。ところが、ほとんどの購入者にとって理事業務は「義務で、かつ奉仕活動」といった印象を持っている方が多いようです。休日が会合で潰れてしまう、仕事を押し付けられるかもしれない・・・と、ネガティブに捉える方がほとんどではないでしょうか。

しかし、私が手伝いをしているマンションを見ていても、この考え方は少しずつ変わりつつあります。理事業務を「義務」から「権利」へ、「ボランティアで仕方なく」から「自分、家族、仲間やマンションのために楽しく」とポジティブに捉え、積極的な運営を行う管理組合が増えているのです。

マンション管理2.0は『お任せ管理』から『みんなで運営』へ

これまで、マンションの管理・運営は「面倒なもの」と考えられがちだったため、「管理会社や一部の熱心な区分所有者がやってくれるもの」という考え方も定着していました。いわゆる「お任せ管理」です。しかし、最近は住民が主体となって管理を行う「みんなで運営」のスタイルが増え始めています。私は、このような新しいスタイルを「マンション管理2.0」と呼んでいます。

では、なぜ「みんなで運営」スタイルのマンションが増えてきたのでしょうか。

一つは、前回のコラムでも紹介したマンションにおける永住志向です。長く住むなら少しでも住み心地良い環境を守りたい、という気持ちになる方が増えることになります。

二つ目は、日本人のライフスタイルと「コミュニティ」に対する意識の変化です。一昔前のマンション管理組合は、いわゆるムラ社会の典型で良くも悪くも「所属する組織・決められたルールの中に組み込まれる」受動的なコミュニティでしたが、いまは「個人の自由や自発的な意思が尊重され、一定のルールのもとで自分たちにあった運用ができる」「絆を大切に積極的に関わることができる」という能動的なコミュニティを作ることができるようになりました。そして、インターネットのおかげでこれらの考え方が普及・拡散されることで「みんなで運営」が徐々に広まっているのです。

今どきの理事会は『住み心地と資産価値を上げるサロン』

では、「みんなで運営」するマンションには、どのような特徴があるでしょうか。
私がコンサルタントとして参画しているライオンズマンションセントワーフ横濱管理組合(神奈川県横浜市・2004年築・499戸)は、「みんなで運営」を上手に実践しています。

ライオンズマンションセントワーフ横浜

このマンションでは、次のような特徴があります。
(1)理事やコンサルタント・管理会社の中に、理事メンバー同士が交流しやすいような雰囲気作りを積極的に行う人がいる。
(2)理事の任期を「1年で全員が入れ替え」から「2年で毎年半数ずつ入れ替え」へと変更し、2年目の理事が新しい理事向けのオリエンテーションや懇親会の場を設けるなど、管理組合の運営に継続性をもたせている。
(3)管理組合にビジョンや目標など、全員の意識を共有できる拠りどころを作った。

1年目の理事に対して、2年目の理事やコンサルタント・管理会社がオリエンテーションを行い、早い段階で理事の引き継ぎを兼ねた懇親会を開き、心のバリアを取り除きます。

更にマンションが目指すべきスローガンを理事同士で考え、そのゴールがブレずに運営するよう取り組んできました。いまでは会合の場で、理事同士がマンションの住み心地や資産価値を高めるための活発な意見が自発的に交わされるようになり、具体的な施策が次々と進んでいます。

ライオンズマンションセントワーフ横濱管理組合での懇親会の様子

また、私が管理会社として支援しているフェリズ横浜矢向管理組合(神奈川県横浜市・2006年築・75戸)も「みんなで運営」を上手に実践しています。こちらでは、理事会・管理会社(担当者・管理員)がLINEグループを作り、コミュニケーションや意見交換に活用しています。

フェリズ横浜矢向管理組合のLINEグループ内でのやりとりの様子

LINEでの会話では「堅苦しい挨拶文や敬語はなし」のルールを作り、写真やスタンプを積極的に使い気軽にコミュニケーションを取れるような雰囲気を作っています。LINEのやり取りの延長に理事会の会合が開催されるため、会合はスムーズかつ話しやすい雰囲気で、活発な意見交換がなされています。

リアルの場(会合)とバーチャルの場(LINEなどSNS)を上手に使いわけて運営するプロセスを通じて、理事同士の気楽な交流が広がり、お互いのモチベーションが高まる、といった好循環を生み出しています。まさに管理組合の運営が、旧来の「受動的で重苦しいなボランティア組織」から「楽しく能動的なサロン」へと、変わってきている様子を見ることができます。

フェリズ横浜矢向ブライトコート

特色を出すことが資産価値につながる時代

マンションのコミュニティは、一昔前の「義務・受動的・表面的な人間関係」から「権利・能動的・より本質的な人間関係」へと徐々に変わりつつあります。そこには「人」の想いが必要です。区分所有者が理事を引き受けるときに、「住まいを気持ちよく使いたい」「資産価値を守りたい」という気持ちです。

さらに「マンション内で仲間に巡り会えるチャンス」くらいの気持ちで気楽に参加し、楽しく取り組む人が増えることで、「理事会」が「チーム」になり、管理会社やコンサルタントの助力を得て、マンションのあらゆる課題が能動的に解決されるようになります。

そして大切なことは、マンションによって運営の考え方や方法はさまざまで良い、ということです。

マンションの特色は、そこに住む人たちの集まり、つまり管理組合(理事会)によって作られます。区分所有者一人ひとりが楽しく運営に携わり、理事会としてのチーム力を高めることで、立地や築年数以外の「ソフト面」(長い目で見て心地よい場所であるかどうか)で生活の質が向上し、一層の資産価値向上に繋がります。

深山州(みやま・しゅう)

深山州(みやま・しゅう)

大手不動産流通業、大手マンション管理業などを経て、マンション管理コンサルタント(株式会社メルすみごこち事務所)、マンション管理会社(株式会社クローバーコミュニティ)それぞれの代表として、またマンション住民が理事長になったときの学び合いの場として「マンション管理組合の学校」を立ち上げ、今日に至る。

・株式会社メルすみごこち事務所
http://e-sumigokochi.com/

・株式会社クローバーコミュニティ
http://968com.jp/

・マンション管理組合の学校
https://schoolformkk.com/

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア

PAGE TOP