いざという時に売れる、貸せる中古マンション

2011年9月20日

将来、住みかえたいと思ったときに、いつでも売ったり貸したりできる中古マンションを選ぶとしたら、どんなポイントに目をつければよいのでしょうか。立地、築年、プランの面から解説します。

中古マンションを探している方に希望を伺うと、「売りたいと思ったときにスムーズに売れるマンション」とか「必要なときにすぐに借り手が付くマンション」といった条件を挙げるケースが増えています。特にシングル女性の場合は、いずれ住みかえや買いかえをする可能性を視野にいれて探している方が少なくありません。

最初は永住を考えていても、何らかの事情で売らざるをえなくなるおそれはあります。万が一のときに売りやすい、貸しやすい中古マンションを買っておけば、さまざまな事態に対応できます。そこで、売りやすい、貸しやすいという視点から物件選びのポイントを解説しましょう。

「売りやすさ」と「貸しやすさ」の条件は基本的には一致しています。単身者向けの特徴のある物件では「貸しやすいのに売りにくい」という例も稀に存在しますが、一般的なファミリータイプのマンションではほとんどないでしょう。買うにしても借りるにしても、「誰もが住みたい」と思うマンションが、売りやすく、貸しやすいのです。

もっとも大切なポイントは立地条件です。なかでも「交通の利便性」が重視されます。誰もが筆頭に挙げる当たり前の条件のようですが、実は「自分の好み」だけで考えると意外にバラツキがあります。以前「広くて静かなら、駅から徒歩15分くらいかかっても構わない」という買主もいました。しかし、「売りやすさ」や「貸しやすさ」を考慮するなら、「他の人がどう考えるか」という視点も合わせて持っている必要があります。

言い換えると、購入(賃借)希望者のボリュームゾーンが多いところはどこかを考えるのです。最寄り駅からの所要時間では、なるべく近いところが好まれるのは間違いないでしょう。エリアによって特性が違うので「○分以内がいい」という数値は、一概には言えません。物件探しで不動産仲介会社を訪ねたときに、自分の希望条件を伝えると同時に、「このエリアでは徒歩何分以内を希望する人が多いですか？ どんな物件に人気がありますか？」と聞いてみましょう。その地域のニーズをつかむことができます。

参考のために、関連データを紹介しておきましょう。 図１は、最寄り駅からの徒歩時間によって中古マンションの資産価値がどう変わるかを調査したデータです(東京カンテイ調べ)。それぞれの徒歩圏内で、現在の中古マンション価格が新築分譲時の価格に対して、どのくらいの割合になっているかを示しています。数値が1を超えていれば値上がり、1を下回ると値下がりです。これを見ると、東京都で最寄り駅から徒歩5分以内くらいであれば、新築時を上回る水準で、遠くなるほど数値が少しずつ下がっていくことがわかります。

立地条件のなかには住環境も含まれます。なるべく最寄り駅から近いほうがいいと述べましたが、緑が豊富で区画が大きい閑静な住宅地の場合は、必ずしもそうとはいえません。むしろ少し駅から離れたほうが、静かで落ち着いた住環境になります。たとえば東京なら、渋谷区松濤、大田区田園調布、世田谷区深沢・成城学園など。こうしたエリアの低層マンションは最寄り駅から徒歩10分以上でも、十分に需要はあります。

また、再開発エリアも、現在の利便性だけでは判断できません。購入した時は少し不便でも、近い将来に新線や新駅が設置されるとか、駅周辺の再開発で商業施設が充実するとか、住環境が大きく変わるところは将来的に人気が高まる可能性があるからです。

たとえば、大規模再開発が進みJR横須賀線の新駅もできた「武蔵小杉」駅周辺、駅前再開発で大きく変貌しているJR山手線「大崎」駅周辺などが、最近では注目されています。これ以外にも、再開発が進むエリアは少なくありません。大規模な再開発の場合は都道府県が許認可を出しますので、希望の地域が決まっていたら、都市計画課など所轄の行政窓口に主な「市街地再開プロジェクト」について問い合わせて見るといいでしょう。