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2015年度税制改正、中古住宅関連のポイント
2015年2月24日
2015年度税制改正大綱が1月中旬に閣議決定されました。この大綱の内容を基に、不動産や住宅に関わるポイントについて紹介しましょう。
(正式決定は通常国会通過後となります)
2015年度の税制改正は、相続税や消費税が大きなテーマになった2013年度や2014年度ほどの大きなトピックといえる内容はありません。景気判断により消費税率10%への再増税が1年半延期されたことに伴って、経済の活性化につながる項目が盛り込まれたというのが、全般的な印象です。たとえば、高齢者から若い世代への資金移転を促す大型の資金贈与に関わる非課税制度の創設・拡充や、景気浮揚につながる法人税減税などが挙げられるでしょう。
その他にも、派手な内容ではありませんが、住宅関連での追い風もあります。ここ1~2年の流れを踏襲し、中古住宅流通・リフォームの活性化を意識した内容が今回も盛り込まれていることです。この点は後で詳しく解説しましょう。
住宅取得等資金贈与の非課税枠が大幅に拡大
まず今回の話題の一つは「住宅取得等資金贈与の特例」の大幅な拡充と適用期間延長です。この特例は、祖父母や両親などの直系尊属から住宅購入や建築・リフォームの資金として贈与を受けた場合に、一定の金額まで贈与税が非課税になる制度のことです。2014年末までの時限措置でしたが、今回の税制改正によって非課税枠の上限が1,000万円から3,000万円に引き上げられた上に、4年半延長されます(図1参照)。
ただし、非課税枠を設定する時期と金額の区分が、非常に複雑になっています。いつ買うのが得なのか、迷ってしまいそうですね。消費税増税の前後で駆け込み需要や買い控え、反動減などの極端な動きが起きないように、非課税枠を配分するのに苦労した様子が伺えます。全体としては「なるべく早めに購入するのが無難」という感じです。
3,000万円の非課税枠は過去最大です。これが一つの目玉といえるかもしれません。ただし、この上限枠が適用されるのは、2017年4月1日から引き上げられる消費税率10%が適用される場合で、かつ、省エネや耐震性などの一定の基準をクリアした「質の高い住宅」を取得する場合に限られます。主にハイグレードな新築住宅が対象になるといえるでしょう。
個人が売主の中古物件は建物が消費税の課税対象となりませんし、税制上の「質の高い住宅」に適合するケースはあまり多くないでしょう。したがって、個人が売主の一般的な中古マンションの場合には、図1の一番右の欄に出ている金額が適用されるケースが多いと思います。今年中に贈与する場合は最大1,000万円です。3,000万円に比べて少ないように見えますが、一般にはこの非課税枠でも充分に有効ではないでしょうか。
不動産流通経営協会(FRK)の「不動産流通業に関する消費者動向調査第19回(2014年)」によれば、住宅購入にあたって受けた「親からの贈与」の平均額は新築住宅で863万円、中古住宅で745.7万円です。初めて住宅を買う若い世代の場合は、平均値より低い金額に収まるケースが少なくありません。29歳以下では贈与額500万円以下が7割弱、30~35歳は同5割弱です。「非課税枠3,000万円」というのは、一部の富裕層が相続税対策のために行う生前贈与などに向けた政策といえるでしょう。
「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」が創設。教育資金に続く?
高齢者から若い世代への資産移転を促す政策の一環として今年度の税制改正で創設されたのが「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」です。この制度は、両親や実の祖父母から20歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚・出産・子育てなどに充てる資金を予め一括して贈与する場合に、1,000万円(結婚資金は最大300万円)まで贈与税が非課税になるというものです。今回の創設によって、教育/結婚・子育て/住宅という人生の3大イベントのすべてに贈与税の特例がセットされたことになります。
金融機関に専用口座を開き、必要資金を引き出す仕組みは、昨年創設された「教育資金一括贈与の特例」と同じです。教育資金の特例も、期限が2019年3月末まで延長され、対象となる資金の使い道が一部緩和されました。
教育資金にしても結婚・子育て資金にしても、扶養義務のある親が必要な分をその都度子どもに支払う場合には、もともと贈与税はかかりません。祖父母から孫へ、まとまった資金を一度に贈与できるようにしたのがポイントです。
注意したいのは、住宅資金と教育資金については、一度贈与すると相続財産に戻されることはありませんが、結婚・子育て資金については、贈与者が亡くなった場合、それまでに使いきっていない資金は相続財産に加算されてしまうことです。生前贈与としての効果は薄いといえるでしょう。
大きな金額の贈与をする際には、将来、子や孫への遺産分割で争いが生じないように配慮することも大切です。税制上のメリットばかりに気を取られないようにしましょう。
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