中古マンション最新トレンド

都心部や都区部の南西部で中古マンションが大量供給、選択肢が豊富に

物件の供給動向に目を転じてみると、かつてない異変が起きていることに気づきます。 図4は、都心3区の新規登録物件の動きを表す東日本レインズのデータです。これを見ると、2015年の後半から新規登録件数が急激に増え始め、月を追うごとに勢いを増していることがわかります。

とくに2015年10月の新規登録数は、過去最高の水準に達しました。2014年12月にはここ数年来の最低レベルでした。わずか1年足らず間に、最低から最高まで大きく振れるジェットコースターのような動きは、これまで見たことがありません。在庫件数も過去最高レベルになっていて、中古マンションの売り出し物件が豊富に出回っているということです。

実際の中古マンション購入では、価格交渉が入る場面も増えています。億ションでは300万円、500万円という大きな「指し値（値下げ）」が通るケースも出てきました。

もちろん、どんな物件でも価格交渉ができる状況ではありません。現在の売主は、「高く売れるなら売りたい。売却時期に制限はない」という人と「なるべく高く売りたいが、買いかえ先のスケジュールに合わせたい」という人に分かれています。前者は、値下げするなら売るのをやめるという姿勢のため、なかなか価格交渉には応じません。後者は、物件によっては柔軟に交渉できる可能性が高いでしょう。

ちなみに、高く売ることを重視する人のなかには「マイホームで資産形成」という狙いもあるようです。住むために買うマイホームは、本来は投資とは別ものですが、売却時の譲渡益に対する3,000万円特別控除など、マイホームだけに認められた税制優遇措置もあります。これを活用して、より高い価値の資産へとステップアップしていこうという考え方です。

不動産の購入者は従来「生活の拠点として購入する実需層」と「収益を得るために購入する投資家層」に二分されていましたが、その中間的なスタンスの人も増えているとも言えるかもしれません。

新築マンションの供給減から、中古に目を向ける人が増加

中古マンションの相場は、新築マンションに影響を受けます。現在の新築の動きはどうでしょうか。

図5は、首都圏で過去3年間に分譲された新築マンションの供給戸数を月別に表したものです。2013年から2年連続で、年間供給量が減少しています。中でも12月は一年のうちで売り出し物件が最も多い時期ですが、2015年12月は前年同月の3割ほども減少しました。

新築マンションの供給が減っている背景は、いくつかあります。

数年来の建築費の高騰を受けて、分譲価格も上昇しつづけているために、デベロッパーが売り出しに慎重になっています。一定の契約率を維持するために供給量を絞っている面もあるでしょう。

そもそも、大規模開発に向いたマンション適地も少なくなっています。まとまった開発可能な土地があったとしても、都心部では、より収益性の高いオフィスや商業施設・ホテルなどの複合開発ビルになるケースが多くなっています。

また、新築マンションの変化は、供給量だけでなく物件の中身にも及んでいます。特に都心部に近いエリアでは、50～60m2のコンパクトなタイプが目立ちます。分譲価格を抑えるために専有面積を圧縮し、内装仕様のグレードも落としている印象です。

マンション全体の規模も小さいため、共用施設のスペースを十分に取れず、物件の魅力を出しにくい状況になっているといえます。

そのため、都心のハイグレードマンションに住んでいた人が、住まいのステップアップとして次の買いかえ先を探すときに、「今売り出されている新築マンションでは希望条件に見合わない」という反応を示すケースが増えています。新築では満足のいく物件が見つからず、中古マンションのほうに目が向いているのです。

前述したように、中古マンションは空前の大量供給で選択肢が豊富になっています。ある程度の価格交渉も可能です。さらに、住宅ローンの金利も一段と低下していますから、中古マンションについては非常に選びやすい購入チャンスの時期といえるのではないでしょうか。

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