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「タワマンで相続税対策」に規制、その影響は

2016年3月22日

タワーマンションを活用した節税対策について監視が強化され、否定的な見方も出ています。タワマン節税とはそもそもどんなものか、規制の動きを踏まえ、検討してみました。

タワーマンションでなくとも、不動産であれば誰でも節税の恩恵はある

まず、相続税評価額の基本的なところからおさらいしましょう。
相続税法では「財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と規定されています。つまり「時価評価」が原則ということです。時価とは「市場で自由に取引される価格」です。ただし、財産の種類によって時価の考え方が異なるところに厄介な問題があります。

預貯金などの現金は、すぐに口座から引き出して使えるため、「額面がそのまま時価」になります。有価証券は市況によって変化しますが、上場株式であれば証券取引所で毎日株価が決まりますから、「相続した日の時価」はすぐにわかります。

しかし、不動産の場合は、売却しない限り正確な"時価"は分かりません。そこで、時価を客観的に判断することが難しい財産については、課税当局が「財産評価基本通達」に基づいて"時価"を決めることになっています。細かい規定はありますが、簡単に言うと、不動産の場合は土地が「路線価」、建物は「固定資産税評価額」に基づいて決まります。

売却せずに持ち続ける場合は、実際に市場で取引されている「実勢価格」と、財産評価上の"時価"が、必ずしも一致しないことに注意してください。しかし、相続直後に売却した場合は、取引した実勢価格が時価と見なされ、その時価に対して課税されるのです。1ページ目で紹介した否認事例は、本来の相続税法の原則にしたがって判断されたといえるかもしれません。

図2は、現金と不動産との相続税評価額の違いを示したものです。

不動産は、土地と建物それぞれ別々に評価され、財産評価上の"時価"よりも低い評価額になります。土地と建物を合わせると"時価"の70%台になることも珍しくありません。そのため、現金を不動産に変えるだけで評価額が20~30%下がることになります。賃貸にすると、さらに評価額が下がり、現金の50~60%の水準になることもあります。

では、なぜ不動産の評価額は時価より低く設定されているのでしょうか。それは、売却する(現金化する)のに手間や時間、各種手数料がかかるため、現金より価値が目減りするからです。不動産という資産の性質を反映しているということでしょう。

この点では、すぐに現金化して利用する目的がないのであれば、相続に関して不動産ほど有利な資産は他にないと言えるかもしれません。不動産一般にこうした性質があり、その不動産の一種であるタワーマンションには、プラスアルファの節税効果があるというわけです。

そのプラスアルファの効果は、階数の違いによるものだけではありません。容積率の高い土地に、縦に高い建物を建て、数100戸から1,000戸に及ぶ多数の住戸を収容できるため、1戸当たりの「土地持ち分」が小さくなります。1戸当たりの土地持ち分が10m2以下になることも珍しくありません。都心の地価の高いところでも、土地持ち分が小さければ評価額は低くなります。

したがって、階数の違いによる評価額圧縮効果に規制がかかったとしても、全体としての節税効果への影響はそれほど大きくないのではないでしょうか。


マンション節税の本命は「小規模宅地の評価減」

実は、マンションを活用した節税の本命は、別のところにあります。「小規模宅地の評価減」の特例です。

内容は図3の通りです。

被相続人(亡くなった親など)が自宅として住んでいた場所を相続した場合は、面積330m2までの土地の評価額が80%減額されます。つまり、タワーマンションでも一戸建てでも、土地について路線価の5分の1に軽減されるわけです。

また、賃貸マンションなどの不動産貸付事業に使っている土地は、200m2まで50%減です。自宅の場合は1ヶ所ですが、不動産貸付事業の場合は、土地面積の合計が200m2以下なら、何カ所でも利用できます。

マンションの場合は、敷地全体を総戸数の頭割りで分割した土地持ち分となります。そのため、総戸数が多いほど土地持ち分は少なくなります。こうした高層マンションを複数持ち、賃貸にすれば、200m2までの評価額を50%に圧縮できることになります。その意味で、タワーマンションの特性が生かせるといえるでしょう。

「小規模宅地の評価減」は税法上で認められた特例ですから、いくら利用しても租税回避行為として問題になることはありません。それでいて、非常に税額の軽減効果が高い仕組みといえます。

また、節税とは異なる観点ですが、昨今問題になっている相続争いの問題についても、マンションは有効です。相続人数分の複数のマンションを持つことによって、遺産分割しやすくなり、紛争を防げるメリットもあります。

このように、仮に「タワマン節税」に大幅な規制がかかったとしても、不動産という資産の特性、大型集合住宅の土地持ち分の小ささという節税効果は残ると言えるでしょう。

編集協力:AllAbout

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