譲渡税は、売却による「もうけ」部分、すなわち「売った値段から買った値段(取得費)を引いた額」に対してかかります。また、仲介手数料や測量費などの「譲渡費用」も差し引きます。この金額が「もうけ」すなわち「譲渡益」となります。
なお、「買った値段がわからない」というケースも実務上は多いですが、その場合は「売却額の5%」を取得費とすることができます(概算取得費)。
所有期間5年以下で売却した場合、税率は39%(所得税30%、住民税9%)という高い税率が課せられます。投機的な土地売買を抑制するための措置でこのようになっています。
なお、「所有期間」とは、「その年の1月1日時点での」所有期間です。したがって、平成18年5月に取得した土地を平成23年10月に売った場合でも、「5年以下での譲渡」となります。
所有期間5年超での譲渡に対しては、税率は20%(所得税15%、住民税5%)になります。
ただし、10年以上住んでいた居住用財産(自宅土地)を売った場合は、税率は14%(所得税10%、住民税4%)に軽減されます。
自宅のような居住用財産の場合、譲渡益から3000万円を差し引いた金額に対して課税が行われます。譲渡益が3000万円以下であれば、税金がかからないことになります。
なお、この特例は所有期間5年以下であっても適用できます。
居住の有無 | 所有期間 短期 | 所有期間 長期 | |
---|---|---|---|
5年以下 | 5年超10年以下 | 10年超 | |
非居住用 | 短期譲渡所得 税率39% (所得税30%、住民税9%) |
長期譲渡所得 税率20% (所得税15%、住民税5%) |
|
居住用 | 短期譲渡所得 ※3,000万円特別控除あり 税率39% (所得税30%、住民税9%) |
長期譲渡所得 ※3,000万円特別控除あり 税率20% (所得税15%、住民税5%) |
長期譲渡所得 ※3,000万円特別控除あり 譲渡所得6000万円までは税率14% (所得税10%、住民税4%) 譲渡所得6000万円超は税率20% (所得税15%、住民税5%) |
買ったときより値上がりしている不動産を売った場合、譲渡税がかかるので、売却代金のすべてを充当して新たな不動産を取得することはできないことになります。
しかしそれでは、新たに取得する物件は「これまでより価格が低いもの」とならざるを得ません。それは不合理なので、一定の要件を満たせば、買換えの場合の譲渡税を抑える特例があります。
特例の中身を簡単に言えば、「売却代金のうち、買換えに充てた割合に応じて譲渡所得を低くする制度」です。
例えば、300円で買ったものを1000円で売り、900円のものに買い換えた場合は、譲渡益700円の「90%」(900÷1000)が課税所得から控除されます。買い換えた資産が1000円以上であれば、譲渡所得の全額が控除されることになります(税額はゼロ)。
「買換え特例」には、「居住用財産の買換え特例」と「事業用財産の買換え特例」の2種類があります。
「居住用財産の買換え特例」は、自宅を売って、別の場所で自宅を買い換えた場合などに適用されます。
この場合、買い換えた資産の価格が売却収入を上回っていれば税額はゼロになります。
「事業用資産の買換え特例」は、店舗を売って引っ越した場合などに適用されます。
「居住用財産の買換え特例」に比べ、やや厳しくなります。
まず、「譲渡益のうち、控除される割合」を計算する際、買換え資産の購入価格を8掛けして計算します。300円で買ったものを1000円で売り、900円のものに買い換えた場合は、控除されるのは譲渡益700円の「72%」(900×0.8÷1000)となります。また、買い換えた資産が1000円以上であっても1000円として計算します。上記「8掛け」もありますので、たとえ1100円のものに買い換えた場合、控除されるのは 1000×0.8÷1000 で80% ということになります。
したがって、税額が「ゼロ」ということはありえません。
買換え特例を使った場合、「取得費」は、「旧財産を引き継ぐ」ことになります。
300円で買ったものを1000円で売り、それを900円で買い換え、その資産を後に800円で売った場合を考えてみます。
普通は「900円で買ったものを800円で売ったのだから税金はかからない」と考えられますが、買換え資産は旧財産の取得費300円を引き継ぎますので、「300円で買ったものを800円で売った」ことになり、譲渡税がかかってしまうのです。
結局のところ、買換え特例は「今回の売却による譲渡税を少なくし、次回の売却時に回す」という意味合いのものと言えます。
譲渡税の「減免」ではなく「繰り延べ」という表記がされるのはこのためです。
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