誰もが勘違いしている中小企業のSDGs取り組み方法

企業のWebサイトやプレスリリースを見ると、サステナビリティ経営やSDGs経営といった表現を目にすることが当たり前になってきました。数年前までは、大企業・上場企業だけに見られたこのような状況ですが、中小企業にもSDGsの取り組みが広がってきています。
これまで、SDGsコンサルティングや研修で数々の企業を支援し、各社の取り組みを見聞き・リサーチするなかで、多くの中小企業で共通する点を見つけました。それは、このままSDGsの取り組みを続けても遅かれ早かれ取り組みが停滞・停止してしまうということです。
今回の記事では、中小企業によるSDGs推進が停滞・停止する理由を明らかにした上で、中小企業が目指すべき取り組みの形を解説します。

Ⅰ.中小企業の取り組み実態

2022年3月に中小機構が発表した資料「中小企業の SDGs 推進に関する実態調査」によると、約9割の中小企業がSDGsを認知していることがわかりました。一方で取り組みに向けた課題として以下の項目が上位に位置しています。

  • 何から取り組めばよいのか分からない(21.0%)
  • SDGsや取組方法に関する情報が少ない(16.4%)

社内でSDGs担当者に任命された方が、まず取り掛かることはSDGsの推進方法に関するリサーチです。中小企業のSDGs担当者は十分な予算を持っているケースが少ないため、なるべくお金のかからない取り組みを志向するケースが多く見られます。

そんな担当者の助けになっているのが、自治体や地方銀行が行っているSDGs認証や無料の支援サービスです。このような支援は、取り組み方法がわからない・取り組み方法への情報が十分に得られない担当者に重宝されています。

しかし、これらのSDGs認証を取得した企業によるSDGsの取り組みを調べると、十分な成果を出せている企業事例が少ないように見えます。取り組みはスタートしているものの、このような状況になっているのはなぜなのでしょうか?

その原因は、私の意見では、一部の自治体や地方銀行が提供するSDGs支援サービスが本質的でないからだと考えています。

Ⅱ.自治体や地方銀行によるSDGs支援の落とし穴

中小企業でSDGsへの取り組みが広がったのは、2019年頃です。この動きに合わせて、中小企業の活動を支援する自治体や地方銀行によるSDGs支援サービスが見られるようになってきました。

当時は今ほどSDGsの認知度が高くなく、まずはSDGsに取り組む企業を増やすことが目的に据えられていました。そのため企業がSDGsに取り組むことを公表する「SDGs宣言」を支援する内容が目立ちました。また、この取り組みに合わせて、自社の既存事業とSDGsの17目標を紐付けて自社とSDGsの関連性を整理する「SDGsマッピング」も同時に行われました。

この2つの取り組みによって、SDGsに取り組む中小企業は実際に増加したので、一定の成果が出たと言えます。

しかし、これらの取り組みによって中小企業の中で誤った認識も広まりました。それは「SDGsに賛同し、これまで行ってきた事業がSDGsの目標に関係していることを示す」ことが、企業におけるSDGsの取り組みという認識です。これらの活動で十分だという認識を持ってしまった企業は、これ以上のSDGsへの取り組みをしませんでした。

さらに、企業のSDGsへの取り組みを支援する立場である自治体や地方銀行は、企業の具体的なSDGs推進方法を十分に理解せずに支援サービスを始めたことが影響してか、SDGs宣言とSDGsマッピングの次の支援を展開することにはならず、結果的にSDGsウォッシュ(※)の状態に陥る企業を増やす結果になってしまいました。
※SDGsウォッシュ:実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せること

現在、私のもとに自治体や地方銀行からこのような事態を脱する方法に関する相談がよく寄せられています。

それでここまで読んできて、「これのなにが問題なんだろう?」と疑問に思う方もいると思います。そのため、次では皆さんにも身近なダイエットを例に、企業のSDGs推進における状況をわかりやすく解説していきます。

Ⅲ.理想的なダイエット方法と理想的なSDGsの取り組み方法は似ている

多くの方が経験したことあるダイエット。その理想的な方法は、以下の5つのステップで行われます。

  • ①自分自身(体重)を理解する
  • ②ありたい姿を描き、優先課題を決定する
  • ③目標を設定する
  • ④行動する
  • ⑤体重の変化を計測し、状況によって発信する

ダイエットの開始は、現状把握から始まり、まずは体重計で自分の体重を把握します。次にダイエットの目的として、痩せることでどんな自分になりたいのか理想を描いて、現状とのギャップを考えます。この理想を体重・体脂肪・ウエストのサイズなどの具体的な数値に変換して、目標に設定することでダイエットのスタートラインに立てます。

その後、食事制限や運動・筋トレなど目標達成に必要な行動を取りながら、目標にした数値の変化を計測していきます。加えて、モチベーション維持の一環で、SNSなどに活動や変化を投稿することも、ダイエットの継続に効果的でしょう。

次に、企業のSDGs推進の理想的な方法は、以下の5つのステップで行われます。

  • ①SDGsの必要性を理解する
  • ②自社のありたい姿を描き、優先課題を決定する
  • ③目標を設定する
  • ④全社で推進する
  • ⑤結果を計測し発信する

この流れを見ると、ダイエットに似ていることがわかります。
前述したSDGs宣言やSDGsマッピングで活動が止まる企業は、ダイエットに置き換えると現在の体重を把握して明日からダイエットに取り組むことを宣言したものの、具体的になにをするかは決めずにこれまでと変わらない生活を過ごしている状態にあります。

これでは、SDGsに取り組むことによるポジティブな変化が望めません。
SDGsに取り組むことを宣言しても、取り組む目的・具体的な取り組み方法・目標と期限を決めない限り、具体的な行動にはつながらず、いつの間にかSDGs推進が停滞・停止してしまうのです。

SDGs宣言をしている多くの中小企業がこのような状況に陥っていることから、SDGsが自社をよく見せる企業ブランディングの一環として、一部の人から認知される望ましくない事態につながっています。

Ⅳ.中小企業が目指すべきSDGsの推進方法

本質的なSDGsの取り組みを進めるためには、自社で取り組む優先課題を明確にし、それが達成できたといえる目標値を決定することが欠かせません。こういった自社独自の方針がなければ、全社的な取り組みに発展させられない・取り組んだ成果の計測ができないといった事態を引き起こします。

中小企業のSDGs担当者や経営層と話していると「中小企業は金銭的にも人的にも十分な余裕がないから、しっかりとしたSDGs推進ができない」という嘆きを聞くことがあります。中小企業の規模では、大企業と同等の取り組みを実践することは難しいでしょう。

しかし、身の丈に合ったSDGsの取り組みによって成果を上げることは、工夫次第で十分可能です。

もし、自社の方針を決めることが難しければ、取引のある大手企業のサステナビリティレポートを熟読してみてください。取引先がどのような未来を見据えて、取り組みをしているのか読み取ることができます。そこから、サプライヤーの自社に求められることが想像できれば、方針策定のヒントを得られるはずです。

例えば、取引先がカーボンニュートラルに取り組んでいれば、自社にも脱炭素の協力要請が近い将来に来ることが予想できます。このような変化に対して予め対策・準備を進められれば、これまで以上に取引先として選ばれる企業になれる可能性が高まります。

もし、大手企業のように多くの課題に取り組むことができなければ、ESGのそれぞれに1つずつ取り組みテーマを設けることから始めてみてください。

繰り返しになりますが、中小企業が目指すべきSDGsの推進方法は、優先課題と具体的な目標を決めて自社の方針を描くことです。これがSDGs推進の土台になりますので、欠かせない手順だということを認識しましょう。

Ⅴ.まとめ

ここまで読み進めてもらえれば、中小企業であっても具体的な取り組み課題や取り組み目標を決める重要性を理解してもらえたのではないでしょうか。

自治体や地方銀行によるSDGs推進の支援が十分ではないという説明をしましたが、すべての団体がそういうわけではございません。例えば、自社の取り組み目標を決めることを促すような支援を提供している埼玉県のような事例もあります。

もしあなたの企業がこれからSDGsに取り組む、もしくはSDGsへの取り組みが停滞・停止しているようであれば、改めて目指すべきSDGs推進方法を理解した上でリスタートを切ってみてください。

玉木 巧(たまき こう)

合同会社波濤 代表 兼 株式会社Drop SDGsコンサルタント

1988年12月生まれ 大阪市出身。 SDGsコンサルティングを手掛ける株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。事業部責任者として、これまで大企業から中小企業のサステナビリティ推進を支援。それらの経験をもとに、これまで40万人以上のビジネスパーソンにセミナーも実施。 株式会社Dropのメンバーとして働きながら、企業のサステナビリティ推進をより加速すべく、2022年9月に自身の会社として合同会社波濤を設立し、現在は二足の草鞋を履いて活動中。 他にもYouTuber・Voicyパーソナリティー・Schoo講師など、SDGs を軸に多角的に活動を広げる。

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