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老後の暮らしとお金のコラム家族に迷惑をかけない相続

2017/11/30
遺書と遺言は一字違いで大違い?

日本では公正証書遺言をはじめとする遺言を遺すことに抵抗のある方が多いように思います。
なぜ、遺言を遺す気持ちになれないのでしょうか?
そこには意外と知られていない「勘違い」があります。
「遺書」と「遺言」の違いを理解し、遺言を遺すことを考えてみませんか?

日本人遺言を書かない理由

欧米では遺言を書くことがスタンダードですが、日本では遺言を書く人が極端に少ないように感じます。
それはどうしてでしょうか?

私が相続のセミナーを開催して毎回感じることですが...

「まだ死なないから大丈夫」(80代男性)
「子供同士は仲がいいから大丈夫」(70代女性)
「そんなに財産がないから大丈夫」(80代男性)

というような考え方が遺言を書くことにストップをかけている気がします。

日本人の死生観というと大げさかもしれませんが、「察しと思いやり」が根底にあり、親が遺言など残さなくても子供は親の気持ちを察して思いやりを持って仲良く揉めないようにやってくれるだろう、という願望を抱く傾向にあります。
また、死を連想させる遺言は縁起の悪いものという思い込みやお金の話をすることは品のないことなど、物事をあいまいにしておきたい日本人ならではの考え方が遺言の普及を妨げているのだと思います。

それでも、平成28年度の日本公証人連合会の調べでは徐々に遺言を遺す人は増えてきています。

平成19年~平成28年の遺言公正証書作成件数
暦年 遺言公正証書作成件数
平成19年 74.160件
平成20年 76.436件
平成21年 77.878件
平成22年 81.984件
平成23年 78.754件
平成24年 88.156件
平成25年 96.020件
平成26年 104.490件
平成27年 110.778件
平成28年 105.350件

※各年1月~12月までの全国で作成された遺言公正証書が作成された件数

遺言が必要な人とは?

では、どういう人に遺言が必要なのでしょうか?
私は相続人が複数いれば遺言は必要だと思いますし、逆に相続人が一人もいない人も遺言が必要だと考えています。
つまり、ほとんどの人に遺言は必要だと思っています。

その中でも特に遺言が必要な人は以下のような方です。

・子供がいない夫婦
・再婚をしていて前妻(前夫)との間に子供がいる
・再婚相手に連れ子がいる
・同性婚
・内縁関係で籍をいれていない
・お一人様
・財産が不動産だけ
・財産を多く(少なく)残したい相続人がいる
・不動産が共有など複雑な財産がある
・相続人の中に行方不明者がいる
・相続人が海外に居住している
・会社を継がせたい相続人がいる
・相続人以外の人(嫁など)に財産を分けたい

その他にもいろいろとチェック項目はありますが、この中の一つでもチェックが付いた方は遺言が必須です。

遺言遺書の違いとは?

皆さんは「遺書」と「遺言」の違いをご存知でしょうか?
先ほど死を連想させる遺言は縁起が悪いと考えている人が多いという説明をしましたが、
実際に勘違いされている方は少なくありません。

遺書:
自殺あるいは死を覚悟した人が残す文章のことで、まさに死ぬ人が書くものです。
遺書には法的な効力はなく、書き方も自由です。

遺言:
民法961条に基づき「遺言」は満15歳以上の人が書くことができます。
法律上の効力を生じさせるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされています。
また、長男に自宅を相続させたいなどの希望がある場合など、後の財産の処置について書き遺す文書のことをいいます。

「遺書」と「遺言」は一字しか違いませんが内容が大きく違うことが理解いただけたでしょうか?
要は、先ほどのチェック項目に該当した方や自分の財産を誰に相続させたいかなど明確な意思を持っている場合は、遺言を遺した方がいいということになります。

では、遺言があれば家族は揉めないのか?
これについては次回コラム最終回でお話したいと思います。

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
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