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老後の暮らしとお金のコラム家族に迷惑をかけない相続

2017/10/30
終活するうえで知っておきたいお墓の知識

最近、お墓を継ぐ子がおらず墓じまいをした、もしくは散骨をした、というニュースをご覧になったことはありませんか?
今はいろんな選択肢があります。
そんな知っておいて損はないお墓にまつわる最新事情についてご紹介します。

お墓を継ぐ人がいない?墓じまいが増えている今

私のところへ相談に来られる方で、最近増えてきているのが「子が一人っ子でしかも女の子。お墓を継がせるのはかわいそうなので自分の代で墓じまいをしたいが具体的にどうすればいいか?」「お墓が遠方で墓参りもままならない。お墓を近くに移したいがどうしたらいいか?」というものがあります。

確かに昨今、少子化の影響で一人っ子もしくは、そもそも子がいない夫婦も増えてきています。
もし、お墓を継承する子がなく、墓じまいを選択せざるを得ない場合やお墓を移転する場合はどうしたらいいのかをご説明します。

まず、お墓は祭祀や管理費の支払いなどを行い、しっかり守ってくれる人がいなければ、一定期間が経過すると無縁墓に合祀されます。
そうならないためには、以下の手順で墓じまいをするか、もしくお墓を移転するようにしましょう。

1.一人で勝手に決めずに親族に相談する
一人っ子もしくは子がいないという場合も親族には相談した方が後々揉めなくて済みます。
もしかすると代わりに祭祀をしてくれる方が見つかるかもしれません。

2.お寺や霊園にはお断りを入れる
お寺の墓地や檀家の場合は、そのお寺の住職さんにお断りを入れるようにしましょう。
霊園の場合も所定の書類が用意されていることがありますので、必ず確認するようにしましょう。

3.遺骨の行き先を決める
散骨、手元供養、樹木葬、納骨堂、現在の居住地近くの公営墓地への改葬合祀など、行き先が決まっていないと市区町村から「改葬許可申請」が出ません。そうすると墓じまいもお墓を移転することもできないので注意しましょう。

4.お墓を撤去するための業者を決める
墓石を撤去して更地にするための石材店を探しておく必要があります。

墓じまいやお墓の移転の流れはおよそこのようになっています。
お墓から魂を抜く「閉眼供養」をすることもありますが、そのあたりはお寺に確認をするといいでしょう。

お墓に入りたくない!散骨?樹木葬?増える選択肢

墓じまいすることで遺骨の行き先が散骨や樹木葬になる場合がありますが、そもそもお墓に入りたくないからとあえて散骨などを選択する方も増えています。
実は私もその一人で子のいない私たち夫婦は樹木葬を選択しています。

お墓に入りたくない場合の選択肢には、主に以下のようなものが挙げられます。

・散骨 
・樹木葬
・納骨堂 
・手元供養 

散骨については、1991年に「葬送のための祭祀で節度を持って行なわれる限り違法ではない」と法務省が発表しました。
これ以降「他人の所有する土地に撒かない」「散骨場所周辺の住民感情に配慮する」などといったことを遵守することで可能となりました。

海洋散骨が主流になりますが、最近は宇宙葬といって遺骨をカプセルなどに納めてロケットに載せ、宇宙空間(多くは地球を周回する軌道上)に打ち上げるという方法もあります。
いずれにしても、信頼できる業者さんに依頼するようにしましょう。

また、樹木葬も人気があります。
樹木葬は霊園の敷地や山に木や草花を植え、その下に骨を埋葬する方法ですが、霊園以外に埋葬するのはトラブルを招いたり、法律違反になることもありますので、必ず樹木葬を扱う霊園で行うようにしましょう。
人気の理由には散骨とは違い、樹木を墓標代わりにできるため遺族も安心できるということです。
また、土に還るという点も自然志向の方の支持を集めているようです。

そのほか、遺骨の一部を数珠やネックレスにして身に付けるという手元供養もあります。

きちんと遺志を伝えないと相続人の迷惑に?

選択肢が増えることは悪いことではないと思いますが、家族に相談せず自分一人で決めてしまったために子や配偶者・親族を傷つけてしまうこともあります。

遺族にしてみれば、どうしてお墓参りもできない散骨を選択したのか?そんなに家族を嫌っていたのだろうか?と悩み苦しむこともあるでしょう。
また、「エンディングノート」などに【散骨希望】と書いてあり、子が親の希望を叶えて散骨にしたものの、親族(親の兄弟など)からは責められ苦しんだ例もあります。

墓じまいや、散骨や樹木葬などお墓に入らない選択をする場合は、事前に家族には相談をするようにして、どうしてその選択をするのか(あるいはしたいのか)を伝えて理解を得るようにしましょう。
そのうえで、親族にも自分の考えであることを事前に伝え、遺された家族が責められないように配慮をすることが大切です。

今は選択肢が増えたことで、自分の遺志次第でいろんな形の埋葬や葬儀を選ぶことができますが、だからこそ家族とコミュニケーションをしっかりとることが大切な時代でもあると言えます。

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
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