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2017/02/03
名義預金・連年贈与って何?知らないと恐ろしい生前贈与の知識

生前贈与の知識を誤ると、贈与したつもりでも贈与になっていないばかりか、子供や孫に多大な相続税や贈与税がかかる恐れがあります。正しい知識をしっかりとおさえ、賢く贈与をするにはどうしたらいいかを事例を交えながらご紹介します。

贈与とは何か?

ここでは、まず贈与とは何なのかを考えてみたいと思います。

民法では「当事者の一方が自己の財産を、無償で相手方に与える意思表示をして、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる契約である」と定められています。要するに「あげますよ」「はい、頂戴します」という互いの意思確認がしっかりできていて、初めて贈与が成り立つのです。

なぜ贈与するのかを考える

相続の生前対策の中でも、特に相続税を圧縮したいと考えている方は、税理士・金融機関・相続コンサルなどから「生前贈与」を提案されることが多いかと思います。

もちろん、相続税を圧縮するために生前贈与をすることは間違ってはいません。ただ、そこにばかり気を取られていると、孫の一人にだけ贈与をし、のちのち、特別受益を問われたり、偏った生前贈与が原因となり家族間で争いが起きてしまったりする恐れがあります。また、間違った生前贈与をしたばかりに、のちのち、税務署から否認される例もあります。

生前贈与は、節税できるからというだけではなく、自分たちが一生懸命築きあげた資産を子孫に正しく継承し、経済的にも精神的にも豊かに暮らしていける道筋をしっかりと示してあげるための一手段として、活用したいものですね。

その贈与大丈夫?「名義預金・名義株式」「連年贈与」に気を付けて

よく生前贈与の相談を受けますが、その中で特に多いのが贈与したつもりになっている「名義預金」です。

ある相続の相談会で「毎年3人の孫に、それぞれの誕生日になると100万円ずつそれぞれの口座にお金を振り込んでいますが、大丈夫でしょうか?」と質問がありました。

私と一緒にチームを組んでいる税理士が「通帳と印鑑はどなたが保管していますか?お孫さんは贈与してもらっていることはご存知ですか?」と尋ねました。すると、その方は「通帳と印鑑は孫が贅沢して使ってしまうと困るので私が保管しています。贈与のことももちろん知りません。私が亡くなったら渡してほしいと思っています」とおっしゃいました。

これは、間違いなく「名義預金」に該当します。相続が発生した際に、税務署からは贈与には当たらず、相続財産に引き戻すと言われる可能性が極めて高いのです。

それでは、どうすればよいのか、以下にまとめました。

(1)まずはお互いの意思確認のために「贈与契約書」を用意する。

※贈与契約書の見本
(2)通帳と印鑑は贈与される人が保管する(未成年の場合は親権者・後見人など)。
(3)贈与されたお金はいつでも好きに使えるようにする。
(4)毎年違う時期に、違う金額で贈与を行う等、単発の贈与であることを強調する。
(5)毎回振り込みした証拠を残す。

贈与する際に、「名義預金」以外にもう1点注意しなければいけないのが、「連年贈与」です。これは、同じ金額の贈与を毎年繰り返すと、その合計金額を贈与したものと税務署から判断され、まとめて贈与税が課税されるというものです。

例えば、贈与税が非課税(年間110万円以内)となるように、毎年100万円の贈与を10年間繰り返したとします。すると、その合計金額1,000万円に税金が発生してしまうことになるのです。贈与税の控除額以内だから、といって毎年決まった金額を10年や20年にわたって贈与するときは、特に注意して身近な税理士に相談するようにしてください。

最近は、「名義預金」だけではなく「名義株式」なるものも見かけるようになりました。子ども名義の証券口座に親のお金を入金し、親が運用しているケースです。こちらも相続発生時に贈与にあたるとみなされる場合があります。安易な口座貸しには気を付けてください。

生前贈与は簡単にできてしまいます。簡単だからこそ、間違いやすいとも言えます。正しい贈与のやり方を専門家からアドバイスを受けるようにして、家族間で揉めたり、多大な税金がかかったりすることのないように注意しましょう。

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
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