ノムコム60→ > 老後の暮らしとお金のコラム > 家族に迷惑をかけない相続 > 遺留分ってなに?前妻の子供には財産は残さなくて大丈夫?

老後の暮らしとお金のコラム家族に迷惑をかけない相続

2017/09/14
遺留分ってなに?前妻の子供には財産は残さなくて大丈夫?

法定相続人が誰に当たるのかを知ることは、遺産分割の上で重要なことです。
特に前妻(前夫)との間の子は忘れがちですが、その対策をしっかり立てておかないと遺留分を侵害することになり、争族の元になりかねません。
その問題をどうすれば回避できるのか、例に基づいて考えてみましょう。

あなたの法定相続人は誰なのか?

近年は離婚・死別を含めて再婚される方も増えてきて、家族関係が複雑化しています。
また、未婚の方や子がいないご夫婦など誰が法定相続人となるのかが一見しただけではわからないというケースもあります。
そこで、まずは誰が法定相続人となるのかを様々なケースを挙げて見ていきましょう。

case1.子のいない夫婦の場合
親が存命の場合とそうでない場合が想定できますが存命の場合には親が3分の1、配偶者が3分の2となります。

親がすでに亡くなっていて兄弟姉妹がいる場合は兄弟姉妹で4分の1(平等に分割)、配偶者が4分の3となります。
また、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子である甥や姪が代襲相続します。

case2.再婚して前妻(前夫)との間に子がいる場合
前妻(前夫)との間にだけ子がいる場合は、子が2分の1、配偶者が2分の1となります。

また、再婚して前妻(前夫)との間にも後妻(後夫)との間にも子がいる場合
子たちで2分の1(平等に分割)、配偶者は2分の1となります。

case3.再婚して前妻(前夫)との間に子がおり、後妻(後夫)との間にも子(実子)と血縁関係のない子(連れ子)がいる場合
連れ子は養子縁組をしなければ法定相続人にはなれませんので、前妻(前夫)との子と後妻(後夫)との子で合わせて2分の1(平等に分割)、配偶者が2分の1となります。

相続人である以上は遺産分割でゼロにすることは難しい

前段で誰が相続人となるのかを説明しましたが、法定相続人で遺留分がないのは兄弟姉妹だけです。
それ以外、親・配偶者・子(ただし認知していない子と養子縁組していない配偶者の連れ子は除く)には遺留分があります。

遺留分とは最低限度守られている相続人の権利です。
たとえ前妻(前夫)との子とは何十年も会っていないからといって、遺産分割でゼロにすることはできないのです。
ゼロにしようとして遺言で全財産を配偶者に相続させると書いても、遺留分を侵害してしまうと遺留分減殺請求を起こされる可能性があります。
前妻(前夫)の子と後妻が裁判で争うような事態に発展する恐れもあるのです。

笑顔で相続するためにはどうすればいいか?

法律的なことは前段の通りだとして、では争いを避けるにはどうすればよいのでしょうか?
まずは、誰に何を遺し、何を遺さないのかを元気なうちにしっかりと整理をしてそれを公正証書遺言にすることだと思います。

遺言書を作る理由は、遺言書がない場合だと相続人間の遺産分割協議が必要になり、前妻(前夫)の子と後妻が話し合うという揉めやすい状況ができるため、それを避ける必要があるからです。
また、公正証書遺言をお勧めする理由は、自筆証書遺言だと、紛失や偽造の恐れがあること、手軽に書ける半面、書き方が法律や実務に則していないと無効となってしまうこと、遺言者の死亡後家庭裁判所での検認手続きが必要になることなどが挙げられます。

公正証書遺言を遺しても遺留分には配慮する必要があるので、法律の専門家に相談して遺留分を侵害しないように遺言を作るか、遺留分をできる限り少なくする方法をとればよいでしょう。
現金を一部生命保険に変えるのもいいかもしれません。
生命保険は受取人固有の財産であるため原則遺留分の対象外になり、遺産分割協議の必要もありません。

さらに争いを回避するには「エンディングノート」に想いを遺すなど、相続人同士が無用な争いをしないよう準備することをお勧めします。

執筆者:一橋香織

AFP 相続診断士 家族信託コーディネーター 終活カウンセラー上級。
頼れるマネードクターとしてこれまでに1,500件もの相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演多数。システムダイアリー社の「エンディングノート」監修。
著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」(PHP出版)。
相続診断士事務所「笑顔相続サロン」代表 東京相続診断士会会長。
コラム一覧を見る


不動産活用&相続コンシェルジュ
無料相談はこちらから

本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。