ノムコム60→ > 老後の暮らしとお金のコラム > 人生を豊かにする老後のマネー > 老後の資金調達に!借り上げ制度やリバースモーゲージ
団塊の世代を中心に、快適な自宅で趣味や食事を満喫し、子供や友人たちとの交流や旅行を楽しむなど、充実した老後を送るために時間やお金を使うアクティブシニアが増加しています。
「平成24年簡易生命表」(厚生労働省)によると、90歳まで生存する日本人の割合は男性22.2%、女性46.5%となり、前年より男女共に約1%延びました。95歳までの割合も男性7.5%、女性22.7%となり、前年よりも男性0.3%、女性0.6%延びています。元気で活動的な老後期間が延びると、老後資金が不足するかも知れません。そのような場合には、自宅を活用して資金調達を考えるのも一手です。
自宅を活用してお金を生む方法には「売る」「貸す」「借りる」の3つがあります。ここでは、「貸す」手法として「マイホーム借上げ制度」を、「借りる」手法として「リバースモーゲージ」をご紹介します。
国土交通省の「高齢者等の住み替え支援制度」を活用した、自宅を最長で終身にわたって借上げをしてもらい、安定した賃料収入が保証される制度になります。一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(以下「JTI」)が実施・運営を担っています。
入居者の募集や契約、家のメンテナンスなどすべてJTIが行いますので、賃貸に関する手間はかかりません。ただし、借上げの際には、建物調査を実施して耐震補強を含む一定レベルのリフォームが必要になることがあります。制度の概要は次の通りです。
・申込者の年齢は50歳以上
・一度入居者が決定すると、その後空き家になっても最低賃貸料の保証がある
・借り上げ期間は終身
・3年間の定期借家契約。契約を更新せずに自宅に戻ることも可能
・家賃は周辺家賃の80% ~90%程度
・諸経費は家賃の15%程度
「リバースモーゲージ」(逆抵当融資)は、保有している自宅を担保に自治体や金融機関等から借り入れをし、それを一括・借入枠内自由引き出し・年金などの形で受け取る住宅担保型のローンになります。契約者が死亡した時に原則自宅を売却して借入金を返済する、という仕組みです。
自宅に住み続けながら現金を得る手段として最近注目されていますが、担保不動産価格の下落や金利の上昇、契約者の長生き等により担保割れが発生するリスクがあります。また借入期間が長くなると利息が多額になることにも注意が必要です。
都道府県が提供するものを「不動産担保型生活資金」といい、市区町村の社会福祉協議会が窓口です。市町村民税が非課税または均等割課税世帯程度の65歳以上で、かつ配偶者あるいは親以外に同居人がいない低所得者を対象とします。連帯保証人が必要です。
メガバンクや地方銀行、信託銀行などが提供する「リバースモーゲージ」は、融資条件や金利設定など各行で異なりますが、主な制限や基準は以下です。
・申込時の年齢が55~85歳程度
・使い道は、生活資金や老人ホーム等の入居金一時金、リフォーム資金等。事業性資金や投機性資金は除く。
・土地の評価額は定期的(1~3年)に見直す
・金利は変動金利
・利息を毎月支払う「利息払い型」と利息を元金に加えて契約終了時に一括返済する「利息元加型」がある
・第一順位の抵当権を設定する
・遺言信託や信託会社、保証会社等を利用するので、保証人は不要
・本人や配偶者の死亡等で契約が終了すると、借入金は担保不動産を売却あるいは手持ち資金で精算する
・相続人全員の同意が必要
※リバースモーゲージを提供している銀行と名称の例 みずほ銀行「みずほプライムエイジ」、三井住友信託銀行「リバースモーゲージ」、東京スター銀行「充実人生」など
また、自宅を貸して家賃を借入金返済に充当するという新しいタイプ「家賃返済型リバースモーゲージ」もあります。常陽銀行「住活スタイル」は、前出のJTIと提携した商品で、担保割れの不安を回避できます。
65歳以上の高齢者がいる世帯の持ち家率は83.4%(総務省「平成25年住宅・土地統計調査」)。これからは自宅を活用して老後資金の調達を考えるシニアも増えてくることでしょう。その際には、「家」を残す必要性や相続について考慮する必要があります。
特に老人ホームなどに入居して「空き家」になる場合は「小規模宅地等の特例」がポイントになりますので、税理士やフィナンシャルプランナーなど専門家に相談することも考えてみてはいかがでしょうか。
専業主婦の身から外貨預金に興味を持ったことを機会にファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、2000年にCFP (FPの上級資格)の試験に合格。2002年に独立開業し、個人向けにリタイアメントプラン、年金、貯蓄、賃貸経営などの相談業務を行う。また各種セミナーの講師も担当。1級ファイナンシャルプランニング技能士、福祉住環境コーディネーター2級、年金アドバイザーなどの資格を持つ。
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