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老後の暮らしとお金のコラム知らないと損をする相続・贈与対策

2014/10/07
老後の現金って本当に必要?現金を減らして節税

相続税を払うための現金にも課税される

多くの方は、自分たちが節約してでも、子供や孫に「現金」を残すために長年にわたってコツコツと貯金をし、何千万円もの財産を残してこられました。なかには1億円以上の貯金をお持ちの方もいて、その多くの方が「相続税がかかっても現金があるから払えるので安心だ」とおっしゃられます。

しかし、相続になると貯めてきた現金に課税されてしまいます。預貯金は、金融機関に預けてある残高がそのまま財産評価となります。ご本人が亡くなってからでは1円も減らすことはできず、節税対策が何も施せないまま現金が相続税として徴収されることになります。
そのような事態を避けるには生前に財産評価を下げることが有効です。例えば、現金で投資用のマンションを購入するのも一つの方法です。

老後はまとまったお金が必要になる?

相続のことばかりでなく、「老後は子供たちの世話にはならずに、老人ホームに入るための入所金にする」という理由で貯金されている方も多くいらっしゃいます。老人ホームのなかには何千万円もの利用権が必要なところもあります。
しかし、最近は老後の住まいの選択肢も増えてきました。たとえば、高齢者向けの賃貸住宅であれば、入居する際に数百万円の保証金を払えばよく、毎月の費用も家賃と食費、管理費など合わせて20万円以内が相場です。まとまったお金を残しておく必要はありません。

認知症になってから後見人をつけると節税対策ができない

親が認知症になると、後見人を立てなければいけないと思い、後先を考えずに手続きをされる方がいらっしゃいます。ですが、後見人は「財産の管理」が主な業務です。後見人は、相続税を減らす目的の節税対策は、本人のためにならないと判断しますので、一切実行することができなくなります。
生前に相続対策をするには、必ず本人の決断が必要です。本人による意思決定があってこそ、預金の引き出しや解約、不動産の売却、購入、活用、融資を進めることができます。認知症の症状は幅広く、疑わしい場合でも、本人の意思や状態を見極めながら、必要な対策をされることをお勧めします。家族内で争いが起らなければ、慌てて後見人を立てる必要はありません。

【実例】高齢者向け賃貸住宅で快適に暮らすTさんの場合

被相続人:Tさん(80歳) 相続人:息子さん

Tさんは、70代で体調を崩された奥さんをずっと介護してきました。奥さんは車イスでの生活を余儀なくされたため、介護施設に入所。施設の費用は保険が適用され、現金の持ち出しは少なくてすみました。その後、2年ほどして奥さんは亡くなられました。

そうして、自宅ではTさんと息子さんの二人暮らしになりました。息子さんは30代の働き盛りで仕事が忙しく、まだ独身です。そんな息子さんの負担になりなくないと思ったTさんは、高齢者向けの賃貸住宅を探して転居しました。食事や身の回りのサポートをしてもらいながら、ボランティア活動などにも積極的に参加し、充実した生活を送っています。賃料や食費などの費用は月額20万円以内に収まる範囲で、年金で十分賄えます。

ただ、万が一自分が亡くなったときのことを考えると、自宅や貯金にかかってくる相続税が息子さんの負担になるのではないかと心配になり、私たちのところに相談に来られました。できるだけ息子さんが維持しやすい形にして財産を残したいというご要望でしたので、投資用のマンションの購入をおすすめしました。

[対策前]
●財産評価 8,400万円
内訳
預貯金:4,000万円
その他(自宅、株、生命保険):4,400万円
[合計]:8,400万円

●相続税 760万円(改正法)
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
 財産評価 8,400万円 - 基礎控除 3,600万円(3,000万円+600万円×法定相続人数 1人)
 =4,800万円
2.奥さんが亡くなられ、全財産を息子さんが相続。4,800万円に税率20%を掛け、定められた控除額
 200万円を引きます。
 4,800万円×20% - 200万円=760万円

◇対策
預貯金の4,000万円で区分マンションを購入。財産評価額は1,200万円にまで下がった。

[対策後]
●財産評価 5,600万円
内訳
区分マンション:1,200万円
その他(自宅、株、生命保険): 4,400万円
[合計]5,600万円

●相続税 250万円(改正法)
(計算式)
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
 財産評価 5,600万円 - 基礎控除 3,600万円(3,000万円+600万円×法定相続人数 1人)
 =2,000万円
2.2,000万円に税率15%を掛け、定められた控除額50万円を引きます。
 2,000万円×15% - 50万円=250万円

【節税額】対策前の相続税 760万円 - 対策後の相続税 250万円 = 節税額 510万円
※さらに小規模宅地等特例を適用すれば更に節税することも可能です。

これまでのTさんご自身の経験から老後生活を送るうえでまとまったお金は必要がないとわかっておられました。ゆえに現金を有効な節税対策に使うことができ、財産評価を下げて、相続税を減らすことに成功したのです。

執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
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