ノムコム60→ > 老後の暮らしとお金のコラム > 知らないと損をする相続・贈与対策 > 資産組み替えで収益を上げながら相続税を節税

老後の暮らしとお金のコラム知らないと損をする相続・贈与対策

2015/11/16
資産組み替えで収益を上げながら相続税を節税

空き地では節税できない、土地を残すなら活用して収益事業

空き地は活用しなければ不良資産になりかねません。土地には固定資産税がかかるため、収益を生まなければ財産が減っていくことになります。また、相続のことを考えても、空き地のままでは相続税を節税できる要素がありません。土地は建物を建てて住んだり、貸したりしないと評価が下がらず、節税につながらないのです。

例えば、駐車場でもアスファルト舗装に整備した貸し駐車場なら、相続では貸付用小規模宅地等の特例を適用することができ、200㎡まで50%の評価減額を受けることができます。しかし、更地のまま使用している場合は評価を下げることはできず、固定資産税も下がりません。更地の駐車場は空き地と同じ評価となり、減額できる要素はないのです。

空き家のままでは負担になる

全国で空き家が増えていることが問題となり、平成27年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特措法)が施行(一部は5月に施行)されました。老朽化して倒壊しそうな空き家や衛生上有害となるおそれのある空き家に関しては、行政は調査や指導、解体命令を出せるようになったのです。

もしこの法律に定める「特定空き家」に該当してしまうと、土地の固定資産税が最大6分の1となる優遇措置が受けられなくなるので、固定資産税はそれまでの最大6倍に。ゆえに活用していない空き家は、土地の再活用や処分、組み替えなど検討する必要があります。

持ち続けるより「資産組み替え」を。借入のない賃貸事業が可能に

利用していない土地を持つ場合は、資産組み替えを行って収益化を。預金が多い場合は、賃貸不動産を購入して相続税評価を下げる。このように資産の形を変えて、トータルの財産評価額を下げる「資産組み換え」は、大きな節税効果を生みます。

また、資産組み替えのメリットは、借入せずとも節税効果が出せることにあります。


〈実例〉空き家になった実家を売却し、賃貸不動産に替えたMさん
家族構成:ご本人(Mさん 70代男性)、奥様、娘さん2人

Mさんの実家にはご両親が二人で暮していましたが、ご両親が亡くなられたあとはMさんが実家を相続しました。しかし、Mさんは自分で購入した家に奥さんと二人で暮らしており、また二人いる娘さんもすでに嫁いでいるため、実家に戻るという選択肢はありません。

実家は立地もよく自分の家よりも広いのですが、建物が老朽化しており、大規模なリフォームをするか建て直しをしないと住める状態ではありません。ここ数年、なんとかしなくてはと思いながら、いまだご両親の荷物が大量に残っているために片づけすらできず、ずっと空き家のままとなっていました。

ですが、 2015年から相続税が改正されたことや、仕事をリタイヤして時間に余裕ができたこともあり、思いきって相続対策をしようと私のところに相談にこられました。

調べてみると、Mさんの財産は総額1億8,000万円におよび、相続税の負担も大きいことがわかったので、実家を売却して節税対策用に賃貸不動産を購入することを勧めました。立地条件がよかったため、建て売り用地として不動産会社が買い取ってくれることになり、建物も現況のまま売却することができました。次に、そのお金を元手に区分マンションを購入。早々に賃借人も決まって、毎月安定した家賃収入が得られるようになりました。一年かからずに資産の組み換えにより相続対策を済ませることができたのです。

◇対策したことによる節税額:約511万円◇
<対策前>
対策前 財産評価 1億8,000万円
相続税 1,100万円
 
<対策>
・実家の土地(建物含む)を不動産会社に建て売り用地として6,800万円(財産評価額も同額)で売却。
・6,800万円を元手に、賃貸用の区分マンションを購入。不動産評価は2,040万円に(購入価格の30%と想定)。

対策後 財産評価 1億3,240万円
相続税 約588万円


[対策前の相続財産 1億8,000万円の内訳]
実家(土地+建物):6,800万円
その他(自宅、預貯金、有価証券など):1億1,200万円

[対策前の相続税 1,100万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 1億8,000万円 − 基礎控除 4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数3人)
= 1億3,200万円

2.奥さんの課税遺産総額を法定割合2分の1と想定し、6,600万円に税率30%を掛け、定められた控除額700万円を引きます。
 6,600万円 × 30% - 700万円 = 1,280万円

3.娘さん1人の課税遺産総額を法定割合4分の1と想定し、3,300万円に税率20%を掛け、定められた控除額200万円を引きます。さらに2人分を合算します。
 3,300万円×20% - 200万円 = 460万円
 460万円 × 2 = 920万円

4.奥さんと娘さん2人の相続税を合算し、合計額を出します。
 1,280万円 + 920万円 = 2,200万円

5. 配偶者控除により、奥さんの相続税額(法定割合2分の1)は0円になります。
 2,200万円 × 1/2 = 1,100万円

[対策後の相続財産 1億3,240万円の内訳]
賃貸用マンション:2,040万円
その他(自宅、預貯金、有価証券など):1億1,200万円

[対策後の相続税 約588万円の計算式]
1.課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を計算します。
財産評価 1億3,240万円 − 基礎控除 4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数3人)
= 8,440万円

2.奥さんの課税遺産総額を法定割合2分の1と想定し、4,220万円に税率20%を掛け、定められた控除額200万円を引きます。
 4,220万円 × 20% - 200万円 = 644万円

3.娘さん1人の課税遺産総額を法定割合4分の1と想定し、2,110万円に税率15%を掛け、定められた控除額50万円を引きます。さらに2人分を合算します。
 2,110万円×15% - 50万円 = 266.5万円
 226.5万円 × 2 = 533万円

4.奥さんと娘さん2人の相続税を合算し、合計額を出します。
 644万円 + 533万円 = 1,177万

5. 配偶者控除により、奥さんの相続税額(法定割合2分の1)は0円になります。
 1,177万円 × 1/2 = 588.5万円

【節税額】
1,100万円 - 588.5万円 = 511.5万円

もし、土地や不動産の売却で得たお金を貯金にまわし、日々の生活費として切り崩していった場合、預金が減っていく不安を抱えることになります。ですが、資産組み替えをして賃貸事業を行えば、相続税を節税できるだけでなく、毎月安定した収入を得られるようになり、生活的にも精神的にも余裕が生まれるのです。

執筆者:曽根恵子

公認 不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士。日本初の相続コーディネーターとして1 2000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案し、家族の絆が深まる「夢相続」の実現をサポートしている。NHK「あさイチ」」、TBS「はなまるマーケット」、フジ「とくダネ」などに出演。新聞、雑誌の取材も多数。「相続税を減らす生前の不動産対策」(幻冬舎)など著書多数。
コラム一覧を見る


不動産活用&相続コンシェルジュ
無料相談はこちらから

本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、その内容について、弊社が保証するものではございません。