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#マンションの魅力#歴史

2023.06.22

大使館とともに歩む「麻布・青山・赤坂」エリアの歴史とドムス元麻布 【前編】街を彩るヴィンテージマンション(2)

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日本人に限らず、外国人も多く居住する港区。なかでも麻布・赤坂・青山エリアは、都内でも有数の高級住宅地で、その理由となる背景や歴史がある。

本稿では、麻布・青山・赤坂エリアを中心に土地の歴史を追いながら、エリアの代表的なマンションについて考察をしていく。

麻布エリアの地形から歴史を読み取る

東京23区の中でも繁華性が高いのが、千代田・中央・港・渋谷・新宿の主要5区だ。高価格帯の住宅が集まる港区においても、さらに「3A」と呼ばれる麻布・青山・赤坂は高級住宅地として周知されている。

ただ一口に「高級住宅地」と言っても、地区によって雰囲気は異なる。例えば「麻布」という地名のつく場所の中でも「西麻布」や「麻布十番」地区は、老舗が立ち並ぶ古くからの商店街があり、外国人の往来が盛んであることから、活気と国際色豊かな雰囲気を持ち合わせている。一方、「元麻布」や「南麻布」エリアは、高級住宅地という言葉から多くの人がイメージするような閑静な住宅街であり、特別な佇まいのある豪奢な邸宅が多い。

高級住宅地とよばれるにはいくつかの条件があり、そのひとつは高台に立地することが挙げられる。前述の「南麻布」や「元麻布」も高台にあり、住宅地の中に大使館が点在する。高台に大使館が配置される理由のひとつとして、地盤が安定していることが推察される。各国の大使や大使館職員、政府関係者などが勤務、定住するための安全な場所を探した結果、高台に住宅が設けられたのだろう。

麻布エリアのヴィンテージマンションの特徴

麻布エリアには山谷ある地形を生かして良質なマンションが集い、とりわけヴィンテージマンションの存在が際立つ。東京カンテイでは築10年以上、坪単価300万円の物件をヴィンテージマンションとして定義している。

ヴィンテージマンションは外構や構造はもちろんのこと、内装や間取りにもこだわりのある物件が揃う。特にこのエリアのヴィンテージマンションは、内装に大理石や御影石、マホガニーを使用したり、インテリアとしてシャンデリアを装備したりするなど、内装にもかなりの投資をしている。

また前述の通り大使館の存在をはじめとして国際色豊かなエリアであるため、古くからマンションの居住者にも外国人は多い。彼らの生活文化を踏襲できるよう、ヴィンテージマンションの住戸内にはメイドルームを備えているものがあり、メイド専用のトイレや風呂、クローゼットなど、メイドが住み込み可能な仕様になっている。

日本人や外国人の政府関係者や経営者などをはじめとする高所得層は、賓客を自宅に招くことも多い。そのためメイドを日常的に伴う生活をしている場合には、住居面積は一つの住戸でおよそ200m2ほどの広さになる。

なかにはゲストが滞在・宿泊するための居室に加え、賓客専用の風呂やトイレなども備わることもあり、ゲストに対してもゆとりのある空間が提供される。バブル時期より前に竣工したマンションには、ゲスト向けにサウナが設置されているものなどもあり、欧米の文化を暮らしに取り入れていることがうかがえる。

来客が多い住まいの特徴として、玄関がひとつではないことも挙げられる。通常のマンションは、専有部への入口は玄関1ヶ所であるのに対し、このエリアの高級ヴィンテージマンションには、入口が複数あるものも散見される。これはPP分離(プライベートとパブリックの動線を分けること)の考えに基づいた設計によるものだ。家族が過ごすプライベートな空間と来賓などを招くパブリックな動線を分けることで、1つの住戸の中で完全に分離して過ごすことができる。

このような間取りは非常に希少性があり見学できることがあったら一度は目にしてみたいところだが、なかなかお目にかかることがない。そもそもこうした高級ヴィンテージマンションは、一度住まうとその魅力・希少性から長く住み続ける人が多いため、売買の市場に出てくることが少なく、取引されにくい。しかし購入を熱望する層は常に一定数おり、何年もの時間をかけて情報が出るのを待つ人たちがいるのだ。

港区ヴィンテージの象徴「ドムス」シリーズ

港区で象徴的なヴィンテージマンションのひとつとして名を知られるのが「ドムス」シリーズである。1979年?1993年の間におよそ20物件ほどが建築され、使用する建材に徹底的にこだわった。当時このシリーズを分譲したのが大建ドムスだ。大手デベロッパーによる汎用的な仕様と異なる設えは、今でもその希少性を高く評価されており、住みたいと熱望する人が絶たない状況である。

なかでも「ドムス元麻布」は1984年5月に元麻布2丁目に竣工した地上6階建の低層住宅で、内装や外観などは従来のドムスシリーズの特徴を継承しつつ、更に1戸あたりの面積を大きくした記念碑的な物件といえる。総戸数は33戸と少ないが、1戸あたりの面積は最小で74.4m2、最大で441.47m2と、かなり大規模な一軒家並みの広さを持つ住戸もある。

「ドムス元麻布」の外観写真。勾配のある地形を生かして建てられている姿が印象的
「ドムス元麻布」のエントランス。赤煉瓦のタイルが目を引く

ドムスシリーズは、このドムス元麻布を建築するタイミングで明らかに高級仕様に大きく舵を切ったと思われる。それはドムス元麻布竣工の2年前、1982年に竣工した「ドムス常盤松」との比較から伺うことができる。

ドムス常盤松の平均専有面積は128.68m2で販売したことに対して、2年後に竣工したドムス元麻布は平均専有面積が157.26m2と大幅に面積が広くなっている。また平均販売価格もドムス常盤松が1億7,472万円だったことに対して、ドムス元麻布は2億4,975万円とおよそ1.4倍になった。バブルの気配に先駆け、供給元である大建ドムスは高級仕様化をすすめる決断をしたのだろう。

「ドムス元麻布」が誕生する前に竣工した「ドムス常盤松」の外観

ドムス元麻布では、1階の104号室に最高価格・最大専有面積の居室を配している。価格は分譲当時で9億6,500万円、専有面積は441.47m2と、現在では考えられない広さを有している。さらにドムス元麻布の中で最も高額なこの住戸には、326.14m2の「専用庭園」を設置していることも、価格を押し上げた理由だろう。

間取りはこれまで触れたように賓客用の部屋が数多く設けられており、まるで別荘のような仕様だ。専有面積と専用庭を合計すると767m2ほどもある広い"土地"を、元麻布という特別な場所に専有できるというわけで、客観的に考えても桁外れな高級物件である。

「ドムス元麻布」で分譲時の価格が最も高い104号室の間取り図。当時すでにユニットバスやウオークインクローゼットを配備している一方、和室も備わる(資料提供:東京カンテイ)

80年代に竣工された物件にはドムスシリーズ以外でも、1階に専用庭園を設け、最大専有面積の居室を有する物件が見られる。これは当時強く根付いていた、マンションよりも戸建てを礼讃する価値観の影響を強く受けたものだろう。

本稿では一例としてドムス元麻布を取り上げたが、このように「3A」と呼ばれる麻布・青山・赤坂エリアには、今もなお、都心の一等地にまるで異世界のように存在しているマンションが複数ある。そして生きているうちに一度は住戸の中を直に目にしてみたい、と思わせる。

数十年の歴史を経てなお支持され続ける独自の設計も、ヴィンテージマンションの魅力の一つである。

井出武(いで・たけし)

井出武(いで・たけし)

1964年東京生まれ。89年マンションの業界団体に入社、以降不動産市場の調査・分析、団体活動に従事、01年株式会社東京カンテイ入社、現在市場調査部上席主任研究員、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。

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