中古マンションを購入するとき、物件価格のほかに「諸費用」がかかります。税金や保険料、各種手数料など、いくらくらい必要なのでしょうか。手続き直前に慌てることのないよう、諸費用の内訳や注意点を解説します。
中古マンション購入に伴う諸費用は、図1のように多岐に渡ります。まずは必須となる費用の主な内容について解説します。
図1.中古マンションの主な諸費用種別 | 項目 | 支払い先・時期 |
---|---|---|
税金 | 印紙税 | 売買契約書・住宅ローン契約書に添付 |
登録免許税 | 土地・建物の所有権登記時(引き渡し時に司法書士へ委託) | |
不動産取得税 | 引き渡し後、納税通知書に従って納税 | |
消費税 | 売主が課税事業者の場合、購入価格に含む | |
手数料 | 仲介手数料 | 仲介会社に契約時、引き渡し時に各半金 |
登記代行手数料 | 司法書士への報酬・実費を引き渡し・登記時に | |
住宅ローン関連 | 事務手数料 | 住宅ローン契約時に金融機関へ |
住宅ローン保証料 | 〃 | |
保険料 | 火災保険料 | 保険契約時(通常、住宅ローン契約前)に保険会社へ |
地震保険料 | 〃 | |
清算金 | 固定資産税等 | 引き渡し時、日割りで売主へ |
管理費等 | 〃 |
●税金1/印紙税
売買契約書や住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)を結ぶときにかかる国税です。買主は契約書1通分を負担するのが普通です。税額は図2のように、契約書の記載金額によって変わります。
契約書の記載金額 | 住宅ローンの契約 | 売買契約 |
---|---|---|
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超~1億円円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
上記のうち売買契約については、2018年4月30日~2020年3月31日までの軽減措置
●税金2/登録免許税
不動産の所有権を登記するときにかかる国税です。土地と建物それぞれの固定資産税評価額に税率を掛けて計算します。税率は図3の通りです。
種別 | 本則 | 軽減税率 |
---|---|---|
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3%※1 |
抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
※1.専用部分の登記簿面積50m2以上、築25年以内の自己居住用等、一定の条件に適合する建物の場合。2019年3月末までに売買した土地は1.5%
また、土地と建物ともに所有権移転登記で、一定の条件に合うと軽減措置が受けることができます。
●税金3/不動産取得税
不動産を買ったり、贈与を受けたりしたときにかかる都道府県税です。土地と建物それぞれの固定資産税評価額に税率を掛けて計算します。2018年9月時点は、いずれも3%です。一定の条件にあうと、評価額から控除を受けることができる特例もあります。
●税金4/消費税
建物には消費税がかかります。ただし、個人の売主から購入する中古マンションの場合は、非課税のケースがほとんどです。個人でも稀に課税事業者の場合もあります。
買取再販会社からリノベーション済みマンションを購入する場合などは消費税がかかりますが、売買価格に含まれる内税表示になっているのが普通です。なお、その他の手数料などには個別に消費税がかかります。
●仲介手数料
売買価格の「3%+6万円+消費税」を上限(価格が400万円以上の場合)として、各仲介会社が定めています。売買契約の際に半額、引き渡しの際に残り半額を支払うのが一般的です。
●登記代行手数料
物件の引き渡しを受けるときに、所有権移転登記の手続きを司法書士に依頼しますが、その報酬として支払います。実費を含めて10~15万円程度の場合が多いようです。
●住宅ローン関係費用
住宅ローンを利用する場合は、融資をする金融機関(または保証会社)に対して、事務手数料と保証料を支払います。銀行の場合は、事務手数料は1件当たり3~5万円程度の定額、保証料は融資額100万円当たり2万円前後で一括払い(外枠方式)が一般的ですが、金利に含めた分割払い(内枠方式)を選択できるケースもあります。
ノンバンク(モーゲージバンク)などでは保証料が無料のケースもあります。その代わりに事務手数料がかかり、「融資額の2%(税別)」のような定率方式が多いでしょう。
フラット35の場合も保証料は無料ですが、団体信用生命保険(団信)への加入が任意のため、別途保険料の支払いが発生します。銀行の住宅ローンには団信とのセットが一般的で、保険料は金利に含まれています。
●損害保険料
住宅ローンを利用する場合は、火災保険への加入が必須条件になっていることがほとんどです(任意の場合もあります)。保険料は、地域と建物の構造や規模などによって変わります。
●清算金
売主が既に支払った各種費用を、引き渡し日を境にして、買主負担分を日割で売主に支払います。毎年1月1日時点の所有者に課税される固定資産税・都市計画税、毎月支払う管理費・修繕積立金などが対象になります。
●その他
上記以外に、引っ越し代、照明器具・カーテン・家具・家電の購入費なども、諸費用に含めて考えておくと安心でしょう。
登録免許税と不動産取得税には、税額が軽減される特例があります。その適用条件に関して、注意しておきたいポイントを紹介します。
登録免許税は国税、不動産取得税は地方税で課税主体が異なります。それぞれの特例の適用条件は、図4のように微妙に違います。
図4.登録免許税と不動産取得税の特例の違い登録免許税 | 不動産取得税 | |
---|---|---|
床面積 | 50m2以上 | 50m2以上240m2以下 |
面積の算定基準 | 1住戸の登記簿面積(内法面積) | 1住戸の専有面積に共用部分の床面積を加算(延べ床面積を専有部分の床面積割合で按分) |
築年数※1 | 築25年以内(木造一戸建ては20年以内) | 昭和57(1982)年1月1日以降の建築 |
※1.築年数が古くても、耐震診断によって新耐震基準に適合していることが証明された住宅は可
まず、登録免許税の面積要件の「登記簿面積」は、物件広告やパンフレットに記載されている専有面積とは異なる場合がほとんどです。登記簿面積は壁の表面から内側を計った「内法(ウチノリ)面積」です。内法面積は、広告表示の壁芯面積より数平米小さくなることが多く、広告で51平米と出ていても、軽減を受けることができない場合があります。
また、不動産取得税の面積要件は、専有面積に共用部分の床面積(専有面積割合で按分)を加算します。そのため広告表示で50平米以下でも、不動産取得税の課税床面積としては50平米を超えて、特例を受けることができる場合があります。
築年数についても、登録免許税と不動産取得税で規定が異なります。
非常に多岐に渡る諸費用ですが、総額で「購入価格の5~8%」とか「1割弱は用意しておいたほうが安心」と言われることが多く、大まかな目安としてはこの範囲に収まることが多いものの、収まらないケースもあります。
物件によってかなり違いがあり、特に税金関係は、広告などに出ている実勢価格(購入価格)とは異なる固定資産税評価額をベースに算定されます。土地の固定資産税評価額は地価公示の7割相当といわれますが、これは平均的な数値で、個別物件による差が小さくありません。しかも、昨今のように地価が揺れ動いている時期は、実勢価格と評価額とのかい離も広がる傾向があります。
中古マンションでは、「土地の持ち分」がこの影響を受けます。実勢価格、広さ、所在地がほぼ同じ二つのマンションがあったとして、A物件は総戸数1,000戸を超える50階建てのタワーマンション、B物件は総戸数20戸・3階建ての低層マンションの場合、AとBでは土地の登録免許税は数倍の差になります。
1戸当たりの土地持ち分は、A物件が10平米、B物件は50平米と、5倍もの開きがあるからです。A物件は容積率が高く固定資産税評価額の単価も高いので、そのまま5倍の差とはなりませんが、金額にすると数十万円ほど違うこともあります。
その他、都心部の土地か郊外か、敷地の広さはどうか、マンションの仕様などによっても評価額は変わります。
以上のように、諸費用は物件の条件によってかなり違うため、個別物件の具体的な金額を、不動産仲介会社の担当者に早めに聞いて、確認するようにしましょう。
最近では、リフォームローンと住宅ローンが一体となった融資を行う金融機関も増えてきました。早めにリフォームプランを確定する必要がありますが、一本化すると、ローン関連の諸費用や金利の節約になります。
また、通常は諸費用には含めませんが、修繕積立金についても注意が必要です。大規模修繕の前に建物診断をして見積りを取った結果、積み立てていた修繕費では足りないことが判明し、修繕積立金の値上げをすることは少なくありません。
また、毎月の修繕積立金の値上げ幅を抑えるために、(修繕)一時金を徴収するケースもあります。契約時点では修繕積立金の値上げの話がなかったのに、引き渡しまでの期間に管理組合の理事会の議題にあがることもあります。引き渡し直前まで、状況に変化がないか目を配っておくことをおすすめします。
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