2016年末時点における全国のマンションストック数(竣工済み戸数、建て替えなどで存在しないものは除く)は6,779,142戸。年々増加を続け、おそらく2018年内には700万戸の大台を超えることになるでしょう。
一戸建て、賃貸マンション、アパートなど住まいはいろいろとありその選択も自由度が高くなっていますが、特に耐震、耐火性能に優れたマンションは1994年以降の首都圏新規分譲戸数が8万戸を超える状況"首都圏8万戸時代"が2006年まで継続したことで、一気に普及が進み、現在では"都市型居住スタイル"として完全に定着しています。
2001年以降、新築マンションは地価の上昇や分譲価格の上昇などがあると売れ行きなどに影響が出るため、その都度新築供給数を減少させてきました。2001年、2002年にはそれぞれ三大都市圏の供給戸数が15万戸を超えていたのに比べ、2008年~2010年の3年間や2014年~2016年の3年間はほぼ半減しており、新規供給自体が絞られていることがわかります。
現在(2017年)もこの傾向の中にあり、都市圏の至る所で新築マンションが分譲されているという状況にはありません。一方、中古マンションは概ね市場規模の拡大が続いており流通事例数も2001年の三大都市圏合計の221,505件から2016年は645,844件に約3倍に拡大しています。ストック戸数はこの間三大都市圏で361万戸から547万戸に1.52倍の拡大に留まっているので、中古マンションの流通が活性化していることが明らかです。
これだけストック数が多くなるとマンションは新築マンションだけでなく中古マンションも含めかなりの数が供給され選びやすくなっており、比較的間取りなど画一化される傾向の強い他の居住スタイルなどと比較して自分のライフスタイルに合わせて選びやすい点がマンションの魅力のひとつとなっており、リフォーム技術の向上と相俟って内装の自由度もかなり高まっているのも人気の要因でしょう。
マンションはかつての「団地」的なイメージから脱却し、個性的な建築物として個性的な物件を多く供給してきました。特に黎明期から共通して存在するマンションの「個性」に立地の良さがあります。
マンションはそもそも都市型住宅として都市中心部に近くかつ駅から近いところに立地するところが魅力となっていました。そのような傾向は現在の既存住宅市場の中でも駅近物件の占める割合が高くなっていることからもわかります。
マンションの魅力は30m2前後のコンパクトマンションから100m2を大型マンションまで常に一定の流通量が保たれている点も魅力と言えるでしょう。これらのシェアの推移を見ると、首都圏では30~50m2と50m2台は全体の16%程度、60m2台と70m2台は23%程度、80~100m2は15%程度、100m2以上は5%程度とほぼ変化がありません。
現在新築マンションは平均専有面積が縮小する傾向があるため、その受け皿として中古マンションの70m2台や80~100m2未満の物件の流通量が増加しているようですが、新築マンションの中でも広めの面積帯の供給が少なくなると、その面積帯の中古マンションの流通が増加するという一定の相関性も確認できます。
特に中古マンションは駅から至近距離にストックが存在する場合がほとんどで、新築が駅前に分譲されていない場合でも中古の売りが出ていることが多く、より良い駅条件、交通条件の中から物件を選ぶことが可能です。
面積帯や駅徒歩条件だけではありません。新築マンションと中古マンションの最大の違いはやはり価格と言えるでしょう。築年数が幅広く存在していることから中古マンションでは様々な価格帯の住宅ストックが存在します。したがってどのような価格に物件を購入したいのかという購入者の満足のいく価格帯の物件を吟味できるという大きなメリットであると言えるでしょう。
築年が古い物件を安く購入してリフォームやリノベーションで新築のような使い勝手の良い住宅設備に変えることも容易になった今日、マンション選びの幅はかつてないほどに拡大しているのです。
1964年東京生まれ。89年マンションの業界団体に入社、以降不動産市場の調査・分析、団体活動に従事、01年株式会社東京カンテイ入社、現在市場調査部上席主任研究員、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。
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