マンションを買うときに「資産価値が落ちないマンションを選びたい」「プレミアムの付くマンションを買っておきたい」という志向が高まっています。プレミアム・マンションの条件は何か、どうやって探せばよいかを考えてみましょう。
マンション購入を検討する場合、「資産価値の落ちにくいマンションを選びたい」という志向が高まってきます。
資産価値の落ちないマンションの代表といえば、いわゆる「ヴィンテージ・マンション」でしょう。マンションにおいては「築年数が経過しても資産価値が落ちず、魅力を保ち続けているマンション」ということができます。
不動産価格データを収集・配信する『東京カンテイ』では、『ヴィンテージ・マンション』を「調査時点で築10年以上、住居系地域にあり、平均専有面積が100m2前後(少なくとも90m2以上)、同一マンションの中古流通物件の90%以上が坪300万円以上」(首都圏の場合)と定義し、所在地の分布などを調査しています。
2016年は、首都圏のヴィンテージ・マンション237物件のうち、東京都心の中心3区(千代田区・港区・渋谷区)が3分の2(66.6%)を占めるという結果です。平均坪単価の上位30物件に限ると、同じ中心3区のシェアが90%に達します。都心の限られたエリアに集中しているのです。
また表1は、各行政区内の流通物件のうち、『ヴィンテージ・マンション』のシェアの高い上位10区のランキングです。上位3区以外では1%に満たない水準ですが、単に都心部にあればいいというわけではないようです。
※シェア:行政区全物件に対するヴィンテージ・マンションの割合
順位 | 行政区 | シェア |
---|---|---|
1 | 港区 | 4.61% |
2 | 千代田区 | 4.22% |
3 | 渋谷区 | 3.05% |
4 | 目黒区 | 0.92% |
5 | 品川区 | 0.78% |
6 | 新宿区 | 0.70% |
7 | 世田谷区 | 0.69% |
8 | 文京区 | 0.69% |
9 | 大田区 | 0.22% |
10 | 豊島区 | 0.16% |
では、どんな条件を満たせばいいのかを、次に考えてみましょう。
ここでは築10年に満たないものを含めて、資産価値の落ちにくいものを「プレミアム・マンション」と位置付けて、検討していきます。
マンションの場合「プレミアム」は「平均相場よりプラスアルファの価値がある物件」といえます。プレミアム・マンションの条件としても、「立地」がもっとも重要で、その中にも3つの要素があります。これを仮にX、Y、Zとしましょう。
まずX軸は、立地のうちの「利便性」です。交通利便性が高いことに加えて、知名度の高い「ブランドエリア」であることも欠かせません。これらは平面の地図上で確認できます。
Y軸は、立体的な「地形」の面です。都心のプレミアム・マンションは高台にあることが多いといえます。たとえば、同じ「南麻布」という地名でも、「○丁目○番地から△番地まで」の丘の上という限られた区画に人気があります。
最後のZ軸は、その地の持つ「歴史」です。都心のなかで"プレミアム"といわれるところは、由緒ある場所がほとんどです。近世の古地図にも載っていて、それがステータスにもつながります。
こうした歴史ある土地は高台にあることが多く、YとZは一致することが珍しくありません。地盤がしっかりして、水害にも強いことが長い歴史のなかで裏付けられているところでもあります。また、Xのうち「ブランド性」はY・Zとも強い関連があります。
さらに、こうしたエリアはセキュリティが高いのも特徴の一つです。
周辺には、国際色豊かな飲食店や商店など、感性の高い人が集まる24時間眠らない街ができています。その結果、重層的なカルチャーが形成されてくるわけです。
X、Y、Zすべての軸で上位にあるのがプレミアム・マンションの立地といえます。
しかし、このようなマンションは、「億ション」であることがほとんどです。1億円未満の「プレミアム・マンション」を見つけるには、どんなところに注目すればよいのでしょうか。
資産価値が下がりにくいという点でいえば、都心周辺部でも、駅前の複合再開発で誕生したマンションなどはプレミアム候補に挙がります。それぞれの地域におけるランドマークとしての価値があるからです。
注意したいのは必ずしも「再開発=プレミアム」とはならないことです。再開発の中身や、そのマンションの位置づけなど、しっかり確認する必要があります。
立地以外の点では、マンション全体の企画やプランニングによっても「プレミアム感があるかどうか」が分かれます。「都心部」のなかでも地域ごとに、ユーザーがマンションに求める要素は違うからです。
大使館の多い「麻布」や「広尾」では、外国人が住むことを前提にした間取りプランが求められます。
こうしたエリアでは、日本人向けマンションとは一線を画した、欧米スタンダードなプランの価値が高くなります。専有面積の最低基準は「165m2(50坪)以上」、間取りは「○LDK」ではなく、ベッドルームとバスルームの数(「2ベッドルーム・2バス」など)で表します。3ベッドルームなら200m2(60坪)以上、リビング最低30帖、マスターベッドルーム(主寝室)は15帖以上で専用バス(シャワーブース)があること、などです。
同じ港区・渋谷区の人気エリア、「赤坂」や「青山」では、もう少し日本人寄りのニーズが高く、専有面積100m2の3LDKでもプレミアム感は出せるでしょう。
地域ごとのユーザー・ニーズに合った、プランやグレードを備えているかどうかが重要です。
企画力・プランニング力は、マンションを造るデベロッパーやゼネコンの力量が問われます。デザインやインテリアにこだわりの高い富裕層の期待にこたえるだけの企画力や設計力が備わっていなければなりません。長年にわたる実績を持っている作り手であることが、条件といえるでしょう。
同じマンションの中でも、棟によって「プレミアム」があることもあります。
また、1つのマンションの中でも、そのマンションの「プレミアム住戸」が存在することがあります。その多くは、眺望の違いによるものです。超高層タワーの場合、階数が上がるほど眺望が開けます。最上階のペントハウスはステータス性が高く、他の階と設備仕様のグレードを変えて、「プレミアム仕様」にするケースも見られます。
とはいえ、眺望の良し悪しは、階数の高さだけで決まるわけではありません。「空と海、公園の緑」の見え方のバランスが最も優れている「オーシャンビュー」や「グリーンビュー」は、プレミアム感を演出する重要な要素といえます。
また、「このフロアのこの方角の住戸」は、「桜が目の前」「東京タワーがくっきり見える」など、マンション内の配置によってプレミアムが付くことがあります。
このようにプレミアム・マンションを形作るのは、「立地」「再開発の将来性」「ブランド力」「住戸のポジションと眺望」といえそうです。「中古住宅は同じものが2つとない」と、いわれます。資産価値としてのプレミアムだけではなく、自分の価値感にあった「プレミアム」も大事に、住まいを探したいものです。
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