この連載では、マンション購入を検討している読者のみなさまが、ご自身のライフスタイルにあう間取りを選ぶためのコツやポイントを解説します。今回は、間取りの基本について確認してみましょう。
間取りの図面をみると、たくさんのアルファベットが出てきます。間取りを表すときによく使われる「3LDK」などの「数字+アルファベット」の文字ですが、どんな意味かご存知ですか。
これは居室の数とそれ以外の場所を示す略語を組み合わせたものです。冒頭の「3」という数字が居室の部屋数を表し、次に続くアルファベットが居室以外の場所についての略語になっています。例えば「L」は「リビング(居間)」、「D」は「ダイニング(食事室)」、「K」は「キッチン(台所)」を表します。
この3室の組み合わせにより、3室が一体化した空間を「LDK」、居間を独立、食事と台所を一体化した「L・DK」、台所を独立、居間と食事室を一体化した「LD・K」、それぞれを独立させた「L・D・K」などがあります。つまり「3 LDK」は3つの居室と、一体化したリビング・ダイニング・キッチンを有する間取りであることがわかります。
この「DK」または「LDK」という略語の始まりは、戦後の住宅難の時代に建設された集合住宅(公団アパート)で「ダイニングキッチン」(=DK型)が取り入れられたことが始まりでした。
「DK型」は、限られた面積の中で「食寝分離」を実現させるために最も有効であると考えられ、同時に床に座って食事をするスタイルから椅子に座るスタイルへの転換を推し進めました。
その後、家族の公の場であるリビング(居間)と個人の生活の場(個室)を分けて家族それぞれのプライバシーを尊重したいという要求から「LDK型」の間取りが広く取り入れられるようになり、現在に至っています。
間取り図に「DK」または「LDK」と表記するために最低必要な広さの目安については、これまで不動産会社によって広さが異なるなどの問題が生じていました。そのため、不動産公正取引協議会連合会が2011年11月に次のような最低限の基準を定めています。例えば「2DK」なら2つの居室と6畳以上のDK、「2LDK」なら居室2室に10畳以上のLDKという間取りとなります。なお、一畳あたりの広さは1.62m2以上となります。
「2LDK+S」という表記を見かけるますが、このSの正体は、「サービスルーム」のことを指します。3LDKと表記せず、2LDK+Sと表記する理由は居室の定義が法律で決まっているからです。建築基準法で居室は以下のように定義されています。
・採光に必要な開口部(窓)が、床面積の1/7以上
・換気に必要な開口部が床面積の1/20以上
つまり、サービスルームと表記されている部屋に窓はあるが、採光や換気の観点で法律の基準を満たしていない部屋ということになります。法律上、1部屋として数えられないものの、実際に見学をして違和感がなければ住み心地は3LDKと同等と言っても差し支えない場合もあります。3LDKをお探しの方は、2LDK+Sで探してみてもいいのではないでしょうか。
中には納戸に等しいくらいの窓なしの物置スペースもSと表記する場合もあるので、間取り図で部屋の大きさや窓の有無は確認しましょう。
「LDK」の他にも、アルファベットで記載されている室名はたくさんあります。
実際にこれらの略語が使われている間取り図と、略語が示す場所の参考写真を見ながら説明していきましょう。
「LDK」の他に「N」「DEN」などもよく使用されます。「N」は納戸、「DEN」は書斎や仕事部屋などに使う「多目的の小部屋」を示します。
室名ではありませんが、「MB」「WIC」「PS」「SK」なども見かける機会が多いでしょう。「MB」はメーターボックスの略で、中には電気や水道、ガスのメーターなどが格納されています。他人が検針するため、共用廊下の玄関近くに設けられます。MBの面積は専有面積には含められません。
「WIC」はウォークインクローゼットを示します。ハンガーにかけた洋服を収納する一般的なクローゼットは奥行が55センチ~60センチですが、ウォークインクローゼットは扉の中に一歩入ってモノをしまうため、奥行はより広くなります。
「PS」はパイプスペースの略で、中には給水管や排水管が通っており、キッチンの流しやユニットバス、トイレの近くに設けられます。将来、これらの水回りを移動するような大がかりな間取り変更リフォームの予定がある人は、このPSの位置が重要になってきます。
「SK」はスロップシンクの略で、蛇口と深いシンクがセットになっています。マンションではバルコニーに設けられることが多く、ガーデニングの水やりや掃除の際にぞうきんを洗ったりと、あると便利な設備のひとつです。
住まいを購入する時に必ずチェックする「間取り図」ですが、その中に表記された数字や記号には、ひとつひとつに意味があることをご理解いただけたと思います。これらを知っておくことで、間取り図を正しく読み取ることができ、購入の際の比較検討にも役に立つでしょう。
これからの連載の中で本日ご紹介した略語が出てくる場面が多々あるかと思います。住まいさがしにおいて間取り図を見る時にもぜひ参考にしてください。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所主宰/一級建築士/インテリアプランナー
総合建設会社の設計部で約14年間、主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。2004年の独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
著書に「住宅リフォーム計画」(学芸出版社/共著)「大震災・大災害に強い家づくり、家選び」(朝日新聞出版)などがある。夫と子ども2人との4人暮らし。
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 http://atelier-sumai.jp/
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